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多分乙女ゲームの世界だけども私は本編に興味がないしトキメキたくもない(仮)  作者: こいかわぎすけ
03 本編開始 ドキ!間違いだらけのフィールドワーク!
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64■ ぶっちゃけ悪役令嬢からしたら攻略対象って刺客相当だったって件

「…ロイハルト、ラブコメが読みたいわ」


「ラブコメがなんだか知りませんが、僕は自宅に帰って模型が作りたいですね」


 悪役令嬢がボヤいた。

 それに鏡魔法の鬼才でもある子分がゆるゆる答える。

 彼のメカクレは今日も鉄壁だ。

 財務大臣の息子(ロイハルト)を先頭に、カーミラ達は地上に戻ってきた。

 

――辛気臭い穴倉はもう嫌だなあ、と思いながらカーミラは髪を弄っていた。


 根性入った縦ロールにゴミがついてないかと心配になったからだった。

 そして彼女は気づいてしまった。


――うそ…白髪…


 見つけてしまった白髪にカーミラが慄いていると、白髪のやり取りを見逃していたロイハルトが言った。


「やや、教師陣が見えましたよ」


「そうね…」


「え、なんでそんなドンヨリなんですか~?止めてくださいって」


「ちょっとショックな事があったのよ」


「そりゃ大変ですね」


 ロイハルトは、さらっと受け流す。

 彼はそのまま教員に首飾りを手渡す。

 彼らの帰還の速さに教員の顔が引きつるが、ロイハルトはそれを無視しつつ主に言った。

 

「機嫌直してくださいよーカーミラ様ー」


「ちょっと時間かかる…」


「早くしてくださいねー、ローレンスの奴がファットマンに苛められてるんですって相談して来てるんですから」


「え、何それ」


 カーミラは白髪のショックも忘れてロイハルトを見る。


「なんだか目つきの悪い背の高いゲイとファットマンにカチコミされて強請られたらしいです」


「あの豚ァ…」


「カーミラ様、ファットマンは自分で豚って言っちゃう肥満を受け入れた男子ですから悪口として弱いですよー」


 実はファットマン的には、そんなことは無いのだが。

 そんなことは知らない二人は、宿に戻りながら話を続ける。


「て言うか、いつ知ったのよ?」


「え、出発前ですよ?」


 ロイハルトぉ…


「ローレンス本人はカーミラ様に相談したかったらしいんですけど、僕がフィールドワーク行くって言うこと忘れて~」


「あんたのせいじゃない!」


「僕のせいですかー?」


 カーミラはゆるゆる子分に言うだけ言ったので、これ以上は無駄だと頭を切り替える。


「それで、豚はローレンスに何を強請ったのよ?」


「飛行船舶一隻を一か月チャーター。場所はカーラーンですって」


 カーミラは知識を辿る。

 カーラーン?

 あれか、毒沼と汚泥のダンジョンだ。

 

「ダンジョンの芯を抜くつもりね」


「何をどう考えてカーミラ様が考え付いたのか知らないっすけど、揉め事の時は頭いいですねー」


「ねえ、ロイハルト?あんたさ、遠巻きに喧嘩売ってる?!」


「売ってますよー、さあ罵って!強引に!僕の■■を奪って!さあさあ!もっと悪口、罵詈雑言コイイや!出来れば暴力も!」


 ドMはそのままカーミラの前で五体当地して続けた。


「心の底からお願いします!!いっぺんヤラせてみてください!!」


「サイテー!!ここでやるなアホ!言い方考えろー!!」


 頭を何度か踏んで蹴って変態を満足させると、カーミラは荒い息のまま言う。


「昔から、なんで変態なのよ」


「ええー、変態違います。欲求に素直なんです。あと嫌々カーミラ様に言わせるのが悦ってか乙って言うか」


「話し進まないから!」


 カーミラは大声を上げると、ロイハルトに言う。


「ローレンスに連絡取りなさい」


「りょーかい」


「豚の主目的はダンジョンの征伐、途中で兵を要求される可能性あるから船舶の運用は最低人数、かつ動かす船は古いのにしてって」


「あれ、カーミラ様肩入れしないの?」

 

 ロイハルトが質問する。


「豚の事だからローレンスに相場の倍は払って船を押さえてるでしょ?理由なくセストラルは動かせないわよ」


 おおーすげー当たってるーと、ロイハルトは御満悦だ。


「ところでロイハルト」


「なにカーミラ様」


「新型飛行船舶の宿題出来たの?部屋でこもって付くていたけど」


 カーミラが聞くと、ロイハルトは胸を張る。


「出来たよ、模型は作ったし。張りぼてを投げて魔力なしで飛行することを確かめたしね」


 カーミラは彼に新型の飛行船舶のモデルとなる模型製作を頼んでいた。


「凄いよカーミラ様、革新だよあの考え」


 カーミラは苦い気持ちになる。

 ロイハルトのキラキラの目に嘘をついてしまった。

 あの飛行船舶は前世の特撮で知った、実際に現実に製造しても飛ぶ機体だもの。

 飛んで当然だとも言う。


「ねえロイハルト、今は超大型の炉が主流なんだっけ?」


 カーミラは、飛行船舶の仕組みを思い出す。

 確かゲーム中の設定では魔力に反発する反射材を船体の底に敷きつめることで空へ飛び、推進力は鎧の炉の何倍も大きいものを使ってプロペラを回していたんだっけ。


「そ、風任せ~からの~人力魔力推進からの~炉の大型化で対応って流れ」


「じゃあ」


 カーミラは内燃機関の開発をしようとロイハルトに持ちかける積りだった。

 模型大好き、メカ大好きの彼なら食いつくと信じていたから。

 だが、ソレを言う前に爆音が二人の会話を遮った。

 

―――――ズドン!!!!


 即座にロイハルトはカーミラを突き飛ばす。

 瞬時に、得物である剣を抜いて彼は背後に向き直った。


……濃厚な土煙が立ちあがった直後、ソレが一発で断ち切られる。


 ロイハルトが、友人であるロラン張りの超絶技巧に瞠目していると、その剣の使い手は武器を戻しながら言った。


「大変失礼した。カーミラ殿、ロイハルト殿。横着して迷宮から出てきたが、迷惑かけた」


 西国貴族である異邦人、珊瑚はぺこりと頭を下げる。

 転んだカーミラは珊瑚を見て、真っ青な顔になった。

 ガタガタと彼女は恐怖から震え、恥も外聞も無くロイハルトに抱きついた。 

 変態(ロイハルト)は、思わぬ役得に驚きつつも安心していた。

 珊瑚なら問題なかろうとの判断からだ。

 

――カーミラ様、カップ数が増えたし肥えて良い体になったなあ…もうちょっとポチャになってくれないかな?

 

 そうまったく別の事を考えながら、彼は意外と波長の合う珊瑚に話しかけた。

 

「おお、珊瑚。どうしたー?」


「いやな、ロイハルト殿。殿下らとはぐれてしまったのだ」


「おお大変だ」


「うん困ったものだ、リリシア殿もおるのでな。だから急いで助けを呼ぶために天井を30枚くらい抜いて出てきた」


 カーミラはその発言で更に震えあがった。

 30枚とか気楽に言うが、迷宮(ダンジョン)はそんな発泡スチロールのように気軽に破壊できるものじゃない。


「豪気だなあーどうやって抜くの?コツある?」


「コツか?そうだなあ、点ではなく面を意識して…」


 へらへら会話している男ら、その片われである変態の腕に縋りながらカーミラは恐怖しか感じていなかった。

 ロイハルトは変態で抜けているが、腕っ節はロランに次ぐ。

 そのロイハルトでさえ迷宮(ダンジョン)の壁は抜かなかった。

 いや抜けるかもしれないが、気安く出来るものではないだろう。

 そんなことがロラン以外で出来る攻略対象が予告なしに自分の元へ素っ飛んでくる。

 カーミラには珊瑚が恐怖の大王にしか見えなかった。


「話したいのは山々だが急いでいる。すまないがロイハルト殿、ここで失礼する」


「うん、ではまた」

 

 どうやら会話は終わったらしい。

 珊瑚は教員に事象を説明しに行った。

 腰が砕けそうなカーミラは涙目でロイハルトに叫んだ。


「この馬鹿!!危険だから突き飛ばしたのは仕方ないとはいえ、なにノホホンと私の天敵の一人と話してるのよ!!」


「おう、良い顔ですよカーミラ様」


 駄目だ…

 カーミラは軽く絶望した。

 全力で育てたが、育て方が悪かったのか、3ロ全員何処かダメンズになってる。



 

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