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多分乙女ゲームの世界だけども私は本編に興味がないしトキメキたくもない(仮)  作者: こいかわぎすけ
03 本編開始 ドキ!間違いだらけのフィールドワーク!
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59  迷宮の島へ

「酷い姉、酷い弟、ああ売られた私、かわいそう♪」


 空港にて飛行船舶を待つ私。

 気分が最悪の私は楽しそうなマリアを恨めしげに見るしか出来なかった。

 鼻歌歌うほど、マリアは笑顔だ。

 豚もニッコニコ。ニッコニコなんだよ、あのクソブタが?

 

 こりゃ完全に豚はクララに惚れてんな…

 

 予想通り豚はクララそっくりなマリアもお気に入りっぽい。


「はあ…」


 ため息を付く。

 結局私はクララの頼みを断れなかった。

 何処で聞きつけたか、クララと別れた後に豚に釘を刺されたからである。


「ゼペット嬢のお願い断らないよね?」


 ここまでされたらどうしようもない。

 私はやむなく……マリアをフィールドワークに同行させることにした。

 本人はノリノリだった。どんな神経をしてるのか。とっちめてやりたい……

 現在私は豚の護衛としての参加だ。

 嫌々ながらも豚と妹に従っている。

 私の横の“妹”が恐る恐ると言った感じで、言う。


「モニカ、お…姉ちゃん。大丈夫ですか?」


 私は町娘、いつものマリアの格好のクララを見る。

 

「大丈夫。あんたも気をつけてね」


 私はそう言いつつ、クララとマリアを見比べる。

 恐ろしいほど二人は似ていた。

 元々クララは友達が少なく無言気味と言うことで、入れ換わったことさえバレていない。

 ただ、私の妹がクララにそっくりと言う事実は多くの貴族科の生徒に驚かれた。

 とばっちりなのだが、その余波で豚が姉妹丼愛好者と罵られていた。

 言い放った三馬鹿は直後にファットマンから怒りの制裁を受けてたっけ…


「おおーい、モニカにマリア。何やってるんだ、置いていくぞ?」


 豚が、鬱陶しい。

 好きな子が二倍になったようなもんだもんな。

 嬉しいよね?だろうね。

 理由は察してやるが、普段の傍若無人さは何処行ったんだ?

 豚から幸せの波動を感じて、私は戸惑うしかない。


>あの豚も男ってことよ


 【記憶】が察してやるが、私にはたまったもんじゃなかった。

 ああ、そうだろうね。楽しいだろうね、豚は。

 私はこのフィールドワークがどうなるか不安になった。


>豚は楽しそうだな 好みの顔の傾向の女の子が沢山いてさ


 私も入ってるの、ソレ?

 


▽▽▽


 

 目的地となる迷宮(ダンジョン)は旧都から飛行船舶で3日かかる浮遊島にあった。

 道中色々あった。


 【記憶】から島が浮くのは何故だの、この飛行船舶が何故飛ぶのかだの、あれこれ質問攻めされる羽目になった。

 知らないよ、そんなこと。


 あと、やっぱりクララもマリア同様芋が好きだったすることが発覚した。

 美味しいけどね、お芋。


 そうだファットマン関係で言えば三馬鹿が暴走していた。

 王都派に喧嘩売られたらしい。

 豚と一緒に後始末を対応したんだけど……

 私を見るなり「げえ、愛人一号!」って酷い言い草だ。

 死にたいのかクソ貴族ども。


 最後に…一番びっくりしたのがリリシア様だ。

 代わる代わる貴公子たちから口説かれていたっけ。

 一人だけ「リリシア殿、味噌持ってきてないか?」と質問してた黒髪の西国人がいたけど…


 さて高級ホテルもかくやと言う船旅が終わり、私たちは浮遊島に到着した。

 


 現在私たちはデッキにて待機している。

 上陸待ちの為だ。

 甲板に他の生徒と並びながら。これからの予定を私は思い出す。


…確か迷宮(ダンジョン)前の冒険者協会に顔を出し、装備を整えてからクジ順に順次潜っていくだったか。

 目的は第10階層に教職員が設置したペンダントを持ち帰ること。

 私はちらりとパーティーメンバーを見る。


 豚、妹、クララ、そして私。


 今、豚が取りだした豚の手作りの芋タルトで骨抜きになっている愚妹とクララは回復持ち。

 タルトに感激している愚妹は、私と同様に剣の心得がある。

 この3日間、見たことがないほど御機嫌なクソ豚……一応風魔法を使えるとのこと。

 見たことないけどね。

 ただ、この間の鎧騒動を見る限りだと、豚は意外と動けるので心配はない。

 タルトをおねだりしているクララがネックだが、まあ護衛対象だと思えば何とかなるか。

 そう思っていると、上陸の準備が出来たらしい。

 高位の貴族から飛行船舶から下りていく。


 あ、殿下がリリシア様をエスコートした。


 直後、周囲の生徒から悲鳴と困惑の声が上がる。

 私はこっそりカーミラ様を見た。

 彼女は平然としており、隣に立つ護衛らしいメカクレ男子生徒に耳打ちしている。

 後で誰なのかファットマンに教えてもらお。

 そう私が考えた時だった。


「……」


 ぞわり、嫌な視線を感じた。

 値踏みするような不快な感覚。だが、貴族からと言うこともありえる。

 私は慎重に視線の元を確認する。


 視線の主は一人の令嬢だった。


 中性的な美貌、髪は短く、意志の強そうな目をしている。

 背は高くない。

 そんな彼女は、傍らに陰気そうな男の従者を連れていた。


……関わらない方がいいな。


 私はそっと視線を戻してリリシア様を見た。


 ん? なんか顔が引きつってるような…? 嬉しくないのかな?


「モニカ」


 紛らわしいがクララの格好(制服を着ただけとも言う)のマリアが言う。


「はい、ゼペット様」


「あの方、私見たことあります」


 ああ、そうかテッドの件か。

 私はマリアを見る。


「リリシア様って言うそうよ」


 本人同士は面識あるはずなので、この会話は変なのだが、マリアは納得したようだ。

 テッド曰く、主人公。この世界の主。そんなリリシア様の背中を私とマリアは見る。


「なんだか、普通そうね」


 同感だわ、妹。

 


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