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多分乙女ゲームの世界だけども私は本編に興味がないしトキメキたくもない(仮)  作者: こいかわぎすけ
03 本編開始 ドキ!間違いだらけのフィールドワーク!
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58  おねだりって男女ともに絶許だよね?

 翌朝曇りだった。

 何故だろう、ちょっと気分が重い。

 学園まで歩いていると、隣に馬車が急停止した。

 なんだ?と思うと声をかけられた。


「モニカ、おはよう」


 豚であった。

 引きつった笑顔で返事を返し、逃げようとするがファットマンが手招きする。

 このブタ、本格的に私の学園生活を台無しにするつもりだろうか…?

 嫌々ながらも私は馬車に乗り込む。

 対面のファットマンは、いきなり爆弾発言をブン投げてきた。


「今度のフィールドワークに同行してくれ」


「お断りします」


 即答すると、ファットマンは苦笑い。

 それから彼は言った。


「頼むよ。人手が足りないんだ」


「護衛が欲しいなら、愚弟で十分では?」


「アルは別の仕事を頼んでいてな…」


「じゃあ、ボイド。それかオハラさん」


 強そうなファットマン家の人間の名前を上げると、豚は気まずそうに言った。


「今回、どちらも別件で難しくてな…君しかいないから頼んだ」


 げ…


「負け犬は?」


 結果は知っているが、私が一応マットもいるぞ?と提案すると豚は真顔になった。

 具体的には目が据わり、普段のヘラヘラ笑いが消えたとも言う。


「負け犬…?あのクソ鼠か?」


 声低っ。どんだけマットの事が嫌いなんだ…


「鼠って」


 事実マットは雨に濡れた野良犬そっくりの残念な奴だ。

 けどマット、顔の素材は良いのだぞ?


「顔も見たくなくない。会話すら嫌だ」


 ガキみたいなことをのたまった伯爵様だった。

 良い機会だわ。

 決闘の時、マットが青い顔していた理由を今さらながら私は聞いてみようと思った。


「それは何故でしょう?」


「勝手に騎士と名乗りやがったから」


 自称は許さんと貴族としての建前を豚は言ったが、私は察した。

 コイツ、マリアの騎士と名乗ったことを聞きつけて激怒してるっぽい。うわーマットに落ち度のない豚の一方的な私怨じゃん。

 豚は自分でもこれ以上マットの事を話すのは不味いと思っているのか、話題を強引に戻した。

 

「協力してくれたら、アルの借金を減額しようと思うんだ」


 断れないじゃん!!

 私は、この疫病神と愚弟を恨んだ。


▽▽▽


 馬車から下りて嫌な注目を浴びた。

 逃げるように商業科の教室に入ると、セリーヌが近づいて来る。

 彼女は真剣な顔で私に言った。


「モニカ…ファットマン様は……お金持ちだけど…私、愛人とか妾とか応援できないから」


 心が砕けそうだった。

 どうやら学園内の印象では、私は豚に懸想していることになっているらしい。

 良かった、金にすり寄るビッチとか言われてなくて。

 

「違うわよ。決闘の時の縁で、今度の貴族科のフィールドワークの護衛に誘われたの。他の意味ないから」


 そう否定したが、自分で言っても怪しく感じた。

 護衛が女って、その地点で疑われない?

 私はクラスメートからの生温かい視線を浴びながら、あの豚への怒りを募らせた。

 今度ボイドに物陰から雷で狙ってもらおう。

 うん、そうしよう。



 

 若干クラスメートに距離を感じながらの授業だった。

 昼休みになり、何処へ食べに行くか悩んでいると俄かに教室が騒がしくなった。

 何事かと思うと、クラスメートの男の子がやや上ずった声で私に教えてくれた。


 ゼペット様が私を呼んでいるらしい――


 私ぃ?

 セリーヌを見ると露骨に彼女は顔を背けやがった。

 メリダも同様である。そんなに嫌なの!?

 行くしかないか…



 訪問頻度が高い談話室の扉を開けると、クララが待っていた。

 相変わらずマリアそっくりである。


「お久しぶりですね、モニカ」


「ごきげんうるわしゅうゼペットさま」


>お嬢 俺ちゃんもドンビキするくらい その言葉遣いキモイ


 【記憶】を無視しながら私はクララに近づく。


「決闘の時の助力感謝します。お礼が遅くなりましたね…」

 

 クララはそう言って目を閉じる。

 

「…何かお願いがあると聞きましたが」


 クララはマリアに似ているとは言え、貴族だ。

 豚やボイドとは違う。注意せねば。


「ええ、今度のフィールドワークのことで」


 また、フィールドワークか!!

 私はハタ迷惑な旧王朝の開祖を恨んだ。


「………ファットマン様に聞きました」


 長いこと間を取ってからクララは言う。


「モニカの妹は、私にとても似ていると」


 あ…、すっごく悪い未来が見えた。

 そして豚の口の軽さにびっくりした。

 野郎、もしかしてクララが好きなのか?

 あり得る。絶対そうだ。

 マットを苛め抜いてるのも、モニカの騎士と名乗り、決闘の代理人として出たからだろう。なんて小さい男なのだろう、奴は。

 そう私が豚の人間臭い面を考察して現実逃避していたのだが、クララは予想通りの言葉を吐いた。


「私の代わりにフィールドワークに護衛兼本人代役として参加していただけないかな?と」


 私はクララを見る。


「正気ですか、ゼペット様」


「はい、正気です。その…私、あまり武に明るくなく……回復魔法は人並み以上なのですが」


 妙な所まで似ているな。マリアと同じく回復魔法持ちか。これで好物がマリアと同じく芋だと言ったら、もう驚愕の一致だ。


「フィールドワークはその、迷宮(ダンジョン)に潜りますので…出来れば自身での戦闘は避けたく」


 そうだろうね、私だって嫌だよ。

 なんで魔物と戦わなきゃいけないのさ。


「かといって、潜らないわけにはいかないので…お金もありませんし」


 そう言えばゼペット家は貧乏だと聞いたことがある。いや豚が金持ちすぎるだけか、本人見てるとリッチには見えないけど。シニア様はいい感じなのに本人酷いからな色々。


「代理をお願いしたいんです、駄目ですか」


「うちの妹を?」


「ええ」


 お断りしますと、言おう。そう私は決心した。

 マリアがお嬢様なんてマジ無理だ。

 大股で椅子に座って、ガハハと笑って、草刈を片手で投げる女だよ?

 無理無理、絶対無理。


「駄目でしょうか?マリアの弟がファットマン様から大量に借金されていると聞きました。微々たるものですが…私も協力しますので」


 マリアそっくりの顔でお願いされ、私は――



豚は好きな女の子に近づく虫に躊躇しないタイプ。

クララは末っ子力が高いタイプ。

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