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46■ 取り残された男


 俺は駆けよるボイドとミリベル、そしてモニカを見た。


「大丈夫か?…痩せたか?」


 口早にボイドが質問してくる。

 腹の傷は繕ってある。

 俺はボイドの観察眼に若干の警戒心を抱きながらも答えることにした。


「見ればわかるだろ。命あるだけましだ…父上は?」


 モニカが即答する。


「…瓦礫の下。ケリーちゃんに救援を呼ばせたけど」


 ミリベルを背負ったモニカを見る。

 嘘を混ぜるような相手ではない。俺は、父を考えた。

 あれが死ぬだろうか? ただソレを疑うのは俺だけの話しだ。

 俺はミリベルとボイドに言う。


「大義だった」


 ボイドの表情が動いた。珍しい、が理由を把握して俺はボイドを小突いた。


「お前は今は俺の使用人の一人だろうが」


「…」


 異論ありそうなボイドから視線を外すと、俺はモニカに言う。


「まず屋敷から出る、君の弟は――」


 言葉に詰まった。モニカに怒りの表情が浮かぶ。


「ファットマン様、それ以上言いいますか?」


 俺は言葉を飲み込んだ。

 続ければ彼女から憎悪を向けられることは理解した。


「失言だった。行くぞ」


 謝罪を口にしつつも、俺は移動を促しながら鎧の動きを予想する。

 今鎧に対処しているアルの腕はすさまじい。が、単騎でろくな装備もなければもって数分。

 俺はアルの死を数えつつ、屋敷の戦力を考察しながらボイドに質問する。


「ボイド、オハラは何処だ?鎧乗りはどうした?」


「……師匠は」


 言いにくそうなボイドに変わり、モニカが食いこんで質問する。


「光魔法で洗脳される可能性があんのに、実力者や鎧を出すんですか?」


「光?」


 思わず口に出るほど最悪の相手だった。

 幻覚、毒の類なら火、水、風、土、金の属性で代用できる。

 だが洗脳は別だ。光と闇は、火の高位の魔法使いが苦労して行う洗脳魔法と比較して何倍も容易に洗脳魔法を操れる。

 対策が無いわけではないが、平時の屋敷の私兵に洗脳に耐えられる筈がない…


 しれっと、洗脳を弾いて激戦を繰り広げるアルは別だ。

 あいつは、色々ふざけている。


 俺が死ななかったから勝ったものの、二度とやりあいたくない相手だった。


「……くっそ」


 逸れた思考を戻しつつ、俺は考える。

 モニカとボイドで洗脳された私兵はなんとかなる。

 オハラも光魔法に後れを取りはしない。


「父上の現世への踏ん張りしだいか」


 思わず口に出た。

 父が死ぬと不味い。葬儀に、地位の相続に…そして始まる死ぬまで続く権力ゲーム。

 まだ実績も糞もないなか、地位だけ振ってきても困るのは俺だ。


「……」


 無言でモニカが俺を見る。

 先を考えすぎたか、下手打てばこの少女に首を飛ばされかねない。

 俺は、声を大きくして言う。


「態勢を整えて、鎧を討つ」 

 

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