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33  弟(鈍感)とモブ

 わいわい夕食をメイドちゃんたちと囲んだ。

 実家大丈夫かな?と思ったが、まあウェルが最悪なんとかするだろう。

 帰宅しようとすると、メイド長から呼びとめられた。


「…一週間の泊まり込みと、若から伺っております」


 なにそれ聞いてない。

 抗議しようとしたが、客室を借りられて考えを改めた。

 めっちゃいい部屋じゃない。

 よし、帰宅しないことにしよう。


>現金ですのう


 【記憶】を突っ込みを無視しつつ、私服に着替えた私はベットでごろごろしていた。


「あ~駄目になる…」


 そうダラダラしていると、部屋がノックされた。

 誰だ?


「姉ちゃん、俺だ」


「…アル?」


 まさかの弟である。

 私は扉を開けた。弟である。


「何よ」


「ちょっと話したい」


「わかった、なに?」


 まあ、自分の部屋で無いし。

 私は弟を部屋に招き入れる。

 どこか緊張した様子の弟は、部屋に入るなり私に頭を下げた。


「頼む、姉ちゃん。助けてほしい」


「…何事?お金?それとも、何か仕事で下手うったとか?一緒に謝りに行けとか?」


 ごくごく冷静に愚弟がやらかしそうな事を上げると、弟は首を振る。

 

「何、違うの?どしたの?」


 なかなか弟は口を開かない。心配さと、若干のいら立ちを感じ始めていると弟はボソリと零した。


「……ミリベルとの間を持ってくれない?」


 私は固まった。


>あー…あー…DTからの恋愛相談だぞ。どうするお嬢?


 【記憶】の指摘にハッとした。

 私は、慎重に言葉を選ぶ。


「ミリベルって、あのミリベルちゃんよね?」


「うん」


「あんたが雇われるきっかけとなった?」


「うん」


 私は目元を抑えた。

 なんだろう、少々ふらつく。

 私はベッドに腰を下ろすと、弟に質問する。


「あんた嫌われたわけ?」


「うん…」


 マジか。

 あれだけ気炎を吐いて「ミリベルを取り返す!」って豪語した結果がコレか。

 私は気が遠くなった。弟は気まずさからか、膝をついてしまっている。


「アルさ」


「はい」


「私の記憶間違いじゃなければ」


「はい」


「ミリベルちゃんと、あんた…イイ感じだったよね?」


「…そう、でした」


>おい、やめろお嬢。弟君、血の涙流しそうな顔してるぞ!


 【記憶】今は黙ってて。


「で、彼女を取り返すの失敗したじゃない?」


「…です」


 弟がさらに小さくなる。


「それじゃない?」


 私が思いつく、愚弟がミリベルちゃんにフラれるであろう最大の原因を言うと弟は硬直し、ついに床に手をついた。


>見事なorz


 【記憶】を無視しながら、私は弟の返事を待った。


「……姉ちゃんの言うとおりだけど、初めは違ったんだ。普通に会話してくれたし」


「うん」


「でもここ最近、話しかけても無視されて…」


「ん?」


 ミリベルちゃんの性格を私は思い出していた。

 彼女が無視する時は、聞いてないか怒ってる時だったはず。

 愚弟の発言を信じるなら、駆け落ち失敗はあんまり気にしてないように思える。


「あんた、ミリベルちゃん怒らせたの?」


「いや理由が分かんない」


 私は何故かその瞬間、ケリーちゃんを思い出した。

 アルくん呼び、無駄に親しい関係…


「愚弟」


「はい」


「あんた、ケリーちゃんとどうなの?」


 私が聞くと、弟は顔を上げた。


「……どうって?」


「仲がいいのかって聞いてるの」


 アルは眉を寄せた。


「多分、いいんじゃないかな?俺の飯だけ大盛りにしてくれるし、愛称で呼ばれても嫌じゃないし」


 私は、頭痛を覚えた。


「愚弟、ケリーちゃんになんかやった?なんでもいいから」


「え?何もしてな「言え」」

 

 威圧プレッシャーをかけると、弟は震えた。

 多分、今なら喧嘩して負けるだろう。

 が弟は私の恐怖の刷り込みには逆らえなかったようだ。


「買い出しの時にケリーが絡んだゴロツキをぶちのめしたり、領地巡行の時に野盗から守ったりとかしました!!」


 私は、思いっきりアルの右頬に張り手を入れた。


「ばっかじゃないの!なんで好きな女の子がいて他の子にムネキュンしそうなことすんのよ!」


「いってえて!何もビンタはねえだろ!」


「するわよ、バカ!何、駆け落ちしようとした相手放置して新しい女作ろうとしてんの!」


 私が胸倉掴むと、アルは驚いた表情をした。


「待って、姉ちゃん!」


「余分なこと言ったらまた叩くよ?!」


「落ち着いてくれ、姉ちゃん!!」


 言われて、私はカッとなった気持ちを落ち着ける。 


「そもそも、駆け落ちって何?」


 私は茫然となった。

 猛烈な頭痛を覚えながら、私は弟の胸倉から手を外しつつ質問をぶつけた。


「アル…あんたにとって、ミリベルちゃんって?」


「幼馴染で友達」


 弟は即答した。


>弟氏、鈍感なのか…うっぁー難儀な


 私は彼の腹部にひざ蹴りを叩きこみ、頭を抱えた。


「この…鈍感!!!」


 私の大声に、すわ喧嘩かとケリーちゃんがやってきて、私は吐きそうな気分になった。

 どーすんの、これ?



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