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21  決闘三回戦~モブ対無表情01~

ヨロイバトル


 最後の決闘が始まろうとしていた。

 戻ってきたファットマンは『腹痛』で棄権したのだと初戦の顛末を私とクララに説明する。

 ダットは最低限の治療を受けボロ雑巾のように待機室で転がっている。


>なにか有ったぞ


 【記憶】の指摘に私も頷く。

 さて、最終戦だ。

 ファットマンの私兵が鎧に乗り込もうとするが…


「冗談が厳しいねえ」


 ファットマンがぼやいた。

…私たちの目の前で、ファットマンの鎧が崩れた。


>お嬢


>向こうの嫌がらせでしょう?


 私は返事を返しつつ、またもや起きた『不幸』を見る。

 見ていると対戦相手のソレオの私兵が連れて行かれた…どうやら主犯として疑われたらしい。

 そうか、そう来るか。

 

「上等じゃん」


 私は一人呟くと、準備を始めた。



▽▽▽



 それが、しばらく前のことだ。


>他ごと考えるとか余裕無いぞ!お嬢!


 【記憶】が叱咤する中、私は操作を行う。

 自機の脇をボイド機が駆け抜ける。被弾は、しなかった。


「分かってる!」


 態勢を整えつつ、私は思考する。


…正直ボイドが出てくるとは思わなかった。


 だが、その姿を見て燃えた自分がいたのも事実だ。


「馬鹿だな、私!」


 旋回する、ボイド機――ダットが落した同型の鎧――私は追う。

 魔力が吸われる感覚。炉が鎧用に変換した魔力が推進器を回す。

 加速度が私の体に襲いかかる。


「……ッ!!」


 歯、食いしばれ私!

 左のクロスボウを構え、発射。ボルトはボイド機を狙うのでなく、やつの進路を抑える形で放った。

 ボイド機は自機を捻り込むことで回避し、そのまま下へと向かう。


「?」


 おかしな操作だった。

 悔しいことに、私の機体とボイド機では覆せない性能差がある。

 こちらが勝っているのは、瞬間的な加速のみ。

 現在も、ボイドの攻撃を回避したから背後を追えただけであり、その直前まではこちらが追われる形だった。

 

「性能差がある状況で、更に高度まで捨てる…?」


 私を侮ったにしては奇妙な操作。

 更に私の下に潜り込んだボイド機は、剣から槍に持ちかえていた。

 投げ槍の動きだを目視した私は自分の判断が間違っていたことを覚った。 


>お嬢!


―――雷光が駆けあがった。


「…?!!」


 直前に旋回に転じていたのが、私を救った。

 雷魔法を付与した槍の直撃を避けつつ、私は機体を地表に向け加速させる。

 【記憶】に聞く。


「アレ!分かる!?」 


>投げ槍を終点にした魔法と判断 目視後の回避は絶望的だ


「…ならその前に落とすしかないわね!」


 槍は残り3本。

 私は再度アレを投げられる前に接近戦に持ち込んで討ち取ることを決意する。

 剣を構え、討ち下ろしつつボイド機へと突っ込む。

 無論、ボイド機も間を開けず急上昇してくる。


>浅い!


 酷い衝撃が鎧を揺らす。

 互いに一撃ずつ浴びせることに成功する。

 けれど機体性能の差から、こちらの一刀は軽くボイド機を傷つけただけだった。


「まだよ!」

 

 急制動をかけ瞬時に反転、鎧が捻じれ悲鳴のような軋みを上げる。

 そのなかで、クロスボウを放つ。放たれたボルトは、ついにボイド機を捕えた。

 

>来るぞ!


 ボルトが直撃しても、ボイド機は止まらない。

 奴もまた急反転、こちらに向け突っ込む。

 自然、真正面からの剣の撃ち合いとなる。

 

「!!」


 ぱっと、火花が散る。

 突きを繰り出した私、横薙ぎのボイド。双方の剣が交差し、私の剣の背に乗ったボイド機の剣が軌道が逸れ私の鎧の左腕を弾き飛ばす。こちらの突きも決まったが、身構える間もなく衝撃と同時に左腕の反応が消えた。

 損害を目視する余裕はない。

 私はボイド機を蹴飛ばし、再度高度の優位を取り戻す。


――次手で取る。


 そう決意し、再度攻撃を私は試みた。

 地上へと落下しながらの攻撃だ、下手をすれば私が落ちる危険性もある。

 だが、ここが好機であることもまた事実。残る右手で私は剣を打ち下ろした。


 白刃が走る。


 しかし、それはボイド機を傷つけなかった。


「??!!」


 視界を塗りつぶす、白。

 雷魔法!!

 私は鎧を急上昇させるしかない。このままいけば地面へ激突、やむをえなかった。

 目が激しく痛む。太陽を直視したと同様だった。


「…くっ」


 目を直す?いや、身体強化フィジカルブーストをやれる余裕はない。

 撃墜と言う未来を思ってしまった瞬間。

 鎧が、文字通り歪んだ。


>脱出しろ、お嬢!


 体を強打する中、【記憶】が叫ぶ。

 やや回復した視界の中、駆けあがったボイド機が見えた。目くらましから転じ、こちらに一打加えたと見える。

 やつはそのまま高度を稼ぐ、雷の槍で止めを刺す腹と見た。

 

「絶対嫌」


 私は【記憶】に返事を返す。


>あれは防げん!


 記憶がそう言う中、ボイド機は槍を投げる態勢に入る。

 私は、右腕を操作する。

 再度、雷光が轟いた。


 私は、その横を駆けあがる! 


>…ばっかじゃねえの! 剣を投げて間に合わせる?!


 私がやったのは槍の射線に向けての剣の全力投擲。

 予想は当たった。槍と剣…双方に雷は吸われた。


 動かない左手から持ち替えたクロスボウを私は放つ。


 それはボイド機の胴に吸い込まれるように命中した。

 態勢を崩すボイド機に肉薄した私は、撃ち尽くしたクロスボウで殴打する。

 ボイド機は高度を失う…加速もあり地面への激突を恐れたらしく、ボイド機は強引に着地する。

 私もまた、鎧を旋回させると同じように捨てた剣の近くに着地する。


 これが決着だろう。


 私は、気持ちを落ち着けボイド機を見た。

ヒロインなのに…やだ暴力的…

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