表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/68

02  女学生は見た(誰を?)

しばらくストックです

02



 学園の中庭だった。

 その日は晴れで、初夏の気持ちのいい風が吹いていた。

 

 多くの学生が日向に出て日光を浴びている。

 中には私のように弁当箱を広げる学生も少なくない。


 ごうと風が吹いた。


 邪魔な髪を縛ろうとしていたリボンが、指の間から抜けた。

 風に乗ったソレは、私の座っていたベンチからガゼポを超えて何処かへと飛んでいく。

 安くないリボンである。

 いわゆる平民の私はソレを追い掛けて、ベンチにバケットを残して歩き出した。



 第二校舎と室内運動場間までリボンは飛んで行った。

 走れば一発でキャッチできたが、この学園の生徒の大半は上級国民である。

 そんな、「はしたない」真似は出来なかった。


…うっとうしい風だなあ、そんなことを考えながらやっと止まったリボンを拾う。


 オシャレ好きの妹がくれた青いリボンを握った時だった。


「…あれ?」


 私は妹を学園で見つけた。



 私は甲冑師の長女だ。

 家族は父母に妹4人弟2人の大家族。

 なので、本当は学園に進学できるような家庭ではない。


 けれど、うちの父が造った鎧を『いたく気に入られたお貴族様』がサプライズとして私を入学させてくれたのだ。


 ただ、入学できたのは私だけ。

 勉強が好きじゃない双子の妹は入学を断った。


 なのにだ、その私の双子の妹であるマリアが学園内にいた。


「ええ?」


 驚いたのは、それだけじゃない。

 まるで、貴族の生徒のように彼女は制服を改造したドレスを着ている。


 普段は酒場【豪傑の庵】で給仕をしているマリアの…ありえない格好に私は混乱した。


 家族から見てもマリアは目立つ容姿をしていた。

 金髪に赤い斑点の散る鳶色の目、目鼻立ちも綺麗だ。

 黙っていれば、良家の娘に見える。


 が、マリアが学校に入り込んでる筈がないのだ。

 なんせ彼女は今日も仕事の筈である。

 今頃は昼食を取りに来たゴロツキの相手をしてるはず。


…あのガサツが何故?


 と私が混乱していると、そのマリアのそっくりさんは声を出した。


「……本気ですか」


 声まで同じじゃないか。

 私がさらに驚いてると、そんな妹のそっくりさんに向き合っていた赤毛の少年が口を開く。


「もちろんだとも。ゼペットの女は得意だろ?」


 マリアのそっくりさんに話しかけた少年、見かけは嫌な感じはしなかった。

 ただ、どうやら彼も貴族らしい。豪奢な改造制服を着用し帯剣までしていた。


 顔立ちもソコソコ整ってる。

 ニキビが無ければもっと好ましい奴である。


「お断りします。そんな不埒なことはできません」


 そんな彼に、妹のそっくりさんは明確な嫌悪を顔に浮かべて返答した。


「婚約者もいないくせにか」


「関係ないでしょう!」


 声を荒げ、彼女は少年を拒絶する。


「おい」


 少年の声が低くなるが、少女は無視して歩き出した。

 私は二人から見つからないように、さっとその場から離れた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ