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15■ 転生者_後

ソレユケテンセイシャー

 黙ったモニカを、俺は見ていた。

 彼女と出会って俺は、明確に俺だと自覚したのだ…

 故に彼女が普通じゃないと言う確信が俺にはあった。


 あの日、初めて俺が俺だと自覚した時。

 俺は悪夢を見ていたんじゃないかと思った。

 けれど俺の意志でダットの体は動き、ダットの記憶を思い出してしまう。


――何故自分が“ここ”にいるのか?


 初め、俺は本気で理解できなかった。

 おまけに酔っていた時の記憶が正しいなら、俺は酷く馬鹿な事を【とあるキャラ】にしている。


 詰んだ状況だった。


 俺は、普通の社会人だ。

 スマホゲーの海外翻訳を担当しているだけで、その他に特徴の無い男の筈。

 死んだ記憶も、何かやった記憶も無いのに、“乙女ゲーム”の中にいるだけの俺。


 頭がどうにかなりそうだった。


 この俺が、転生か憑依したのは、本編のサブキャラだ。ダットと名乗ってはいるが、本編では名前すら出ないヒロインにサブイベントの報酬を渡して消えるキャラだ。

 さらに言えば、イベントも終わってる。

 俺はヒロインにアイテムを渡している。


…早い話が本編からフェードアウトするのを待っている状態だ。


 だが、何かが狂った。

 この黒髪の美少女が、俺を叩きのめしイベントを終えて消える筈の“俺”に未来を提案した。


 ありえないと思う。

 ゲームにはない展開。だからサブキャラの俺は、ソレに縋った。


 彼女の接触がなければ、ここまではっきり自覚できるとは思えなかったからこそ、俺は彼女に賭けた。

 なにより、あのクララを妹と呼ぶ彼女が普通な筈がない。


 彼女も俺の同類テンセイシャだと思ったからこそ、英語で話しかけてみた。


――予想は当たった。彼女は英語を理解していたのだ!


 やはり彼女も俺の同類だ。

 この世界で一人じゃないという保証を得た俺は安堵した。


「言いたいことはそれだけか?」


「?!!」


 俺が彼女の反応を待っていた時だ。

 俺の質問への返事の代わりに、彼女は俺の首を締めた。

 あまりに突然。だから反応できなかった。


――何が起こった?!


 首を締められつつ、俺は持ち上げられる。

“ステータス”の鑑定をかけても、彼女は魔法を使用していない。

 スキルも発動していない筈なのに……尋常な力じゃなかった。

 一般的な男性である俺を彼女は片手で持ち上げる。


 その青い目で俺を見ながら―――“彼女”は質問した。


「何者だ?お前は?」


 モニカでは無い。

 俺は直感した。

“何物”かは俺の首を締めながら続ける。


「答えろ。この子に何の目的があって英語で質問した?」


 俺は、答える。


「さたけこうじ…だ……日本で、働いてた……」


 少女が手を離す。

 俺は咳込みながら、彼女を見る。


「あんた、何だ?魔法を感じない、それにモニカじゃないんだろ?」


 青い目が俺を見下ろす。

 冷たい視線だった。


「俺に名はない。…もうこの子に絡むな、この子は普通を望んでる」


「なに言ってんだ?!彼女も俺と同じだろう!」


 俺が言うと、モニカの姿をした何物かは邪悪な顔を浮かべる。


「同類だと?この子と貴様が?」


 隠すことのない殺気が彼女から溢れ出す。


「忌々しい。思いあがりも甚だしい。お前がどう感じようと、この子はこの時代の人間だ」


 傭兵で、死線を潜った筈の俺の体が恐怖を訴えた。


「洗いざらい吐いてから、死ね」


 そうして彼女は手を振り上げたが…動かない。

 

「お嬢!この男は…!!」


 モニカが言う。

 一人叫んでいるのだが、誰かに対して言っているのは明確だった。


「だからって何殺そうとしてんのよ!」


「…こいつも俺と同じでこの世界の遺物だ。消すべきだ!」


 そうしたモニカの独り言のやり取りがあってから、モニカは俺を見た。


「…それで?ダット?それともサタケ?あんた何者なの」


 俺は賭けに勝ったと感じた。





SQ好きです

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