13 協力者を募る(ただし弱みを握りつつ)
おのれファットマン!!!
クララ嬢を誘えるわけがない。
しかたなく、私は一人で鎧同好会に向かった。
……そして私は、二つ部室があることに驚いた。
ヨロイ愛好会と、鎧部だ。
どっちに行けと…言ってたっけ?
>ヨロイの方だな
>ありがと
部室を開けると、そこにいたのは…
「…お」
「え?」
「は?」
男子三人だ。
チビ、ガリ、ノッポだ。
「ファットマン様に言われてきた、モニカです。鎧をお借りしたいのですが」
そう言うと、三人は嫌そうな顔をした。
「…マジか、あのデブ俺らに嘘ついたぞ」
チビが言った。
「いや待て…デブは裏切らねえ筈だ、ひでえことをするが」
ノッポがフォローする。
「それよりまずは挨拶だろう」
ガリが突っ込む。
>ファットマンの友人らしいが あーなんだ、彼はやっぱ侮れねえわ
【記憶】が指摘する。私も同感だ。
そう思っていると、三人とも名乗った。
「チップスだ」とチビ。
「ストローです」とガリ。
「エイカーって言います」とノッポ。
「よろしくお願いします。お三方はファットマン様のご友人で?」
三人は顔を見合う。
「…俺決めた。デブは殺す」
「同意だ。あのヤロウ…やっぱり美人と縁があるじゃねえか」
「俺も手伝うぞ…何が、貴族令嬢を始め女性は気位が高いから無理だ…ちゃっかり美少女囲ってやがる」
>お嬢 この馬鹿どもの排除をお勧めする
【記憶】の提案を蹴って、私は言う。
「…あの」
「ああもちろん、ファットマンとは友人さ!」
威勢よくチビが言う。
「オウとも」
続いてガリ。
「そうですね、親友ですよ…僕らは」
最後にノッポ。
「ではご協力をお願いしたいです。やはり、平民では鎧の確保が難しく…」
私が営業用笑顔で頼むと、三人は赤面した。
>策士やなー…
黙ってて。
そうして案内された鎧を見て…私は絶句した。
「「「これしかなくて」」」
恥じて三人に言われたけど、これは無い。
兜 胴 腕 足と完全にバラバラだ。
その上、外装は剥がれてるわ、内部の魔力反発材は擦り切れかけてる。
炉こそ数打ちが入ってるが、推進器が根元からない。
幸い、流用できそうな部品は転がっているが…
>…その?なんだ、お嬢 ガンバ…?
【記憶】がフォローする。
思わず私はぼやいてた…
「……これ、直る?そもそも勝てるかな」
まずは修理だと私は覚悟を決めた。
一人で出来ることなど限界がある。
その為、私は友人を頼った。
キミから彫金のセット一式を買いつつ、魔力反発材の術式の彫りを依頼する。
それからポールをとっ捕まえて、塗装をお願いした。
ヘンリーには起重機と足場を借りつつ、木工職人を紹介してもらう。
メリダが嫌がったが、頼み込んで伝達用の魔力紐の作成を依頼した。
そしてセリーヌには…
「何で…俺たちが…」
呻くチップ少年にセリーヌが笑顔で言う。
「ファットマン様から書面を預かってますので」
チビガリノッポの監視役をお願いした。
いくら修理が出来ると言っても、時間がない。ファットマンに相談すると、彼は快く友人を紹介した。
セリーヌにはその三人の監督と、皆の連絡係を完璧にやってくれた。
どうにも三馬鹿とは面識があるようだ。
「畜生!やっぱりファットマンはクズだ!」
ノッポが言うが、ガリが諫める。
「無理だよ…借りた金を担保にされてるんだから」
「あいつめ」
私も作業しつつ、悪いかな?と思ったが仕方がない。
ファットマンとも話し合ったが、最終的に用意してもらったのは鎧2つだ。
――ゼペット嬢のメンツもあるだろう?
とのことで、彼女の鎧とヨロイ乗りは何とかしないと行けなかった。
おかげで、お小遣いが減った…
「ダット、分かってるわよね」
「は、はぃ…」
コレはダットが乗る鎧だ。
彼にはひたすら炉の癖を掴んでもらっている。
はたから見ると炉を抱えているだけだが、魔力を流し込んでいる筈である。
この同期が上手くいかないことには始まらないのだ。
頼むぞ、へっぽこ。
>……お嬢 ナチュラルに人使い荒いからな
>そう?
>ああ…無自覚の長女的な無理強い…
モニカは無自覚の人使い荒いタイプです。