01 本編無視したプロローグ
新作です。脳みそ筋肉女子です。
※転移者出ますがチートはありません。
※一応、魔法と剣の世界です。
※ロボとヒロインの事情はおいおい出ます。
※ちゃんと、ヒーローは出します。
※基本は章で完結スタイルを考えてます。
※設定は、ぼちぼち出してきます。
01
からりと晴れた空だった。
雲は千切れた綿のよう。
底抜けに青い空には第二月が見えている。
先ほどのまでの熱狂は冷え、閑散としていた闘技場からはざわめきしか聞こえない。
満席ほどいないとはいえ、結構な数の学生がいた。
先ほどまでは気がつかなかったけど、商魂たくましい生徒が飲食物を売っている。
その後ろでは、賭けの胴元が『私』の試合の券をもぎっていた。
「はあ……」
最初から、嫌な予感がしていた。
この三回戦う決闘騒ぎで、最初に戦った時もそうだった。
最初の代理人が『不幸にも』腹痛でダウン。
だから一回戦は勝ちを敵方に譲った。
二回目は、私が探した傭兵……今はボロ雑巾そっくりの青年……が何とか勝った。
決戦となる今回。
またもや『不幸にも』鎧が壊れた。
着ていた人は重体だそうだ。
「……なんで乗る羽目になるかなぁ」
嫌な気分だ。
万が一の自衛用として、ショートソードを掴む。
今から着替えてる暇はない。
そうして闘技場脇、野球場のベンチみたいなところから待機している鎧の場所まで行こうとすると、この決闘騒ぎの原因となった少女が私を慌てて呼びとめた。
「モニカ! 何を!」
「クララさん?」
意外に思うと、貴族の少女は私の肩を掴んだ。
金髪に、赤い斑点の散る金の瞳の美少女だ。
肌はつるっつる、めっちゃ可愛いコである。
「もういいんです!」
私は、視線を対戦する相手にやった。
意地悪そうな貴族の少年。
まあロクでもない赤髪の坊っちゃんを見ながら言う。
「とはいえ、棄権なんてダメでは? 貴族の誇りにかけて」
「それで死んだら終わりじゃないですか!無理です!乗れるって言っても、モニカさんは女性で……それに、何も悪くないじゃないですか」
あー、指摘の通りだよね。
だが、やるしかないだろう。
ちらりと、ベンチの奥のデブを見る。
やつは笑った。
「ファットマン家に勝利を」
心の底から怨念を込めて、そう言ってやった。
デブはキョトンとしたが、すぐに察した。
「美しき騎士に、勝利の女神がほほ笑むように」
おう、流石貴族。
嫌みが慣れてる。
…そうね、隣のクララと比べれば私はフツーだよ。
彼らに背中を向けて、私は鎧へと近づく。
鎧――いや【記憶】が言うにはロボット――は膝をついた待機状態だった。
鎧愛好会が放棄し、私が直したチェーンクラス。
見かけは、騎士の鎧を大きくして背中に不格好なプロペラと羽を背負った奴である。
全身、名もない流派の模造品。
安かったプルシアンブルーで染め上げたから「そこそこ」は見れる。
【記憶】が言うには「深刻なメカ不足」とのことだが、私は興味がない。
「行こうか」
右膝を足場に、前面の装甲を開けつつコックピットに滑り込む。
剣を投げ込みつつ装甲を締める。
新式――操縦桿方式――のソレに乗り込むと、各種ベルトを締めつつ操作を確認する。
メインエンジンである炉は既に火を入れた。
視界は良好、魔術による視界の投影は問題ない。
操縦桿――操作杖は左右共に違和感なく、握って振れば腕が反応する。
手と連動させるため、操縦席についた手綱と腕を繋ぐ。これが腕の動きを反応させる。
軽く、鐙を踏みこむと脚が動いた。
【記憶】がうるさくフットペダルと言えと言うが、無視して機体を起こす。
腰の鞍の反応も悪くない。この鞍、腰の部分についている部品である。
これを背中で押したり引いたり操作することで推進器である魔術機関を動作させる。
推進器が回り始める。
機体に振動が共振して、音を鳴らす。
びりびりとした振動を感じながら、私は目を閉じる。
「……」
息を吐く、魔力を鎧に通していく。
炉に私の魔力を繋ぐ。
「う……」
違和感、吐き気、めまい……
「ええい、この!」
そんな感覚を根性でねじ伏せ、私は武器を取る。
単発クロスボウと、鎧用のファルシオン。
そうして私は、貴族の坊っちゃんと向き合った。
絢爛豪華な飾りの銀の鎧である。武装は、仕込み筒ありの大盾に長剣。
背中にはランスを背負ったソイツが私の相手のようだ。
立会人が、旗を上げる。
「……褒めてやる、平民」
坊っちゃんはそう言った。
コイツ、絶対泣かす。
私は固く誓った。
――――そして、白い旗が落ちた。
轟音を上げつつ、二機の鎧が空へと舞い上がった。
ストック作って頑張ります。