第9話 森を抜けて街まで行こう
とんとん
「黒いもりの姿焼き」
とんとん
「カエルの開き」
とんとん・・・・・・
それ、ホントに食えるのか?
と、食べ物ゾーンすら抜け出した食べたいモノゲームを続けていたら、、、
「もうここからは森の領域を抜けちゃうから、おいらはここまでにさせてもらうよ~」
ってバドが言った。
「あれ?街まで案内してくれるんやないのん?」
美月が寂しそうに声をかける。
「森から出ちゃうとさぁ、お肌カピカピになっちゃうんだ~。それに人目につくのもヤだし~」
美肌を気にするのかよ。妖精さんよう。んまぁ、よくよく見るとツルッツルのテカッテカだもんね。羨ましい・・・
「そっか。残念だけど仕方ないよね。わざわざここまで付いてきてくれてありがとね」
「おいらも久しぶりに楽しかったよ~。あっ、そうだ」
と言ってバドはくるくるとバク転を始めた。
「これを持って行きなよ」
と木でできた可愛い笛のようなモノを差し出した。
「これを吹いてくれたら、多少遠くに居てもおいらに聞こえるから。何か困ったこととか、またこの森に来るようなことがあったら使ってよ~。あっ、街中では使わないでね~」
「えっ、ホントにいいの?ありがとー」
バド・・・お前はなんていい奴なんだ。。。
いい奴だと見込んでお願いしてみるか。
「バド、それとね、私達ってまだまだ未熟者だし、これから街まで無事に行けるか分かんないんだ。。。からね、その、前にやってもらった【妖精の粉】を分けてもらえない?かな?」
「うーん、確かに少しヤバそうだもんね。わかったよ~」
と言いながらクルッとバク転をする。
「あっ、人数分お願いね」
しれっと厚かましいお願いにランクアップさせる。そんな私は出来る女(自称。)だ
「はいはい。仕方ない」
クルクルクルクル回るバド。酔わないかな?大丈夫かな?私なら確実に酔いそうだよ。自分が頼んでやってもらってんのにね。
「これでいい?はーっ、こんなに粉出したのなんていつ振りだろう。もうカラカラになっちゃう、、、って、あっ、あの【バカ忍者】のとき以来だっ、思い出しただけで腹立つ~!」
真っ赤な顔してむきーって言ってるバド。
「バカ忍者???」
「そっ。龍さんと一緒にいたバカ忍者で人使いが荒くって。何度も何度もおいらをブンブン振り回して粉出させて。挙げ句の果てには『お前いっつもプルプルしてんな。バイブかよ。おっ、うちのボスにお土産に持って帰ろうかな?したら、あの欲求不満ババアも満足するかもだからな』なんて訳の分かんない事いってニヤニヤして。んとにもう大嫌い!」
そういいながらプルプルと震え出す。バイブ?ぷぷっ分からんでもないな。バイブって何か知らないけど。
「あーっ!思い出しただけで腹が立つ~!じゃ、おいらもう行くねっ。お姉さんたちも気をつけてねっ!」
ってなんかぷりぷり怒りながら飛んでいった。。。思い出し自爆?よくわからん。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「行っちゃったね」
「う、うん」
「街ってどっちだろ?」
「さ、さぁ・・・」
「とりあえず、森出よっか」
って5人でこそこそ会話をしてたら、ばびゅーんとバドが飛んで戻ってきた。
「このまま真っ直ぐ森を出たら左に行って!ここから一番近い街があるからっ!じゃ!」
ってまたばびゅーんと飛んで行った。
「なんか悪いことしちゃった。かな?」
「「「「さぁー」」」」
首を傾げる4人。黒歴史に触れたってんならその切っ掛けを作ったのは私だし、悪いことしちゃった?かな。今度謝っておこう。いや、謝ったらまた思い出したりするかもだし。。。そっとしとこう。
掌にはこんもりとなった【妖精の粉】があった。
「妖精の粉貰ったんだけど、入れるものがない。どうしよ?このままアイテムボックスに入れちゃう?」
「そだね。みんなで均等に分けて入れとこっか」
5人それぞれひとつまみずつ粉を取り、アイテムボックスに収納した。
「さぁ、気ぃ入れ直して!ほな行こかー!」
「「「「おーっ!」」」」
またゾロゾロと歩き始めた。こんなに歩いたのっていつ振りだろう?でも全然疲れてないし。これも異世界の不思議なのかな?なんて考えてたら、すぐに森を抜けた。
澄んだスカイブルーの広い空と、ぽつーんと浮かぶ綿菓子のような白い雲。風で緑が揺蕩んで見える果てしない草原。ただただ広いその大地に思わず「ふあーっ」って声をあげた。