第8話 とんとん
とんとん
「天ぷらうどん」
とんとん
「ラーメン」
とんとん・・・
「ちょっと待った~!」
美香が必死の形相で叫ぶ。
「何よ?まだラーメン出てなかったでしょ?」
「そーじゃなーい!!ラーメンって抽象的に言い過ぎなんだよ~。そんなんじゃ小泉さんが怒ってきちゃうよっ!」
って、誰なんだよ?小泉さんって?
「じゃーなんて言えばいいのよ?」
「んー、例えば、、、濃厚でこってりしたホロホロとろとろな肉厚チャーシューが沢山乗ったあっさり豚骨ラーメン!とかさっ」
「「「「長すぎるわっ!!」」」」
って具合に、食べたいモノゲームを延々と繰り返しながら、とてとてと森の中を歩いていた。初めての戦闘があって以降、これまでに3度程魔物に出くわしたんだけど、それぞれの役割分担が出来てきてなんとか形になりつつあった。美香が大盾でがっちり防御壁を作り、その後ろに美月、美魅のアタッカー二人。盾に体当たりされたら即、その隙をついて前に出てズバッ!って感じ。今んとこうまく機能している。って言っても例のウサギばっかりしか表れてないんだけどね。ドロップアイテムの方はやっぱり鶏肉しか出て来なかった。緑色の石っころは6個貯まった。前の分と合わせて、鶏肉4個、石っころ8個になった。
私と美優?
私と美優はおとり役。ウサギが出てきたら気を引いてスタコラと逃げ回り、最終的に盾の方まで誘導する。って流れな訳だ。戦いに直接参加してる訳じゃないんだけど、結構疲れるんだよ?これでも。
そんな事はどうでもいい?ゲームの方が気になる?
今では【お肉シリーズ】【定食シリーズ】【丼シリーズ】【イタリアンシリーズ】を経て【麺ロード】に入ったところだ。
そうそう。この緑色の石っころは【魔石】といって、マジックアイテムのようなモノ?らしい。緑色のは【風の魔石】らしい。詳しい事は街で確認しなきゃね。バドも存在だけは知ってるんだけど、それが何の為にあるのか、どんな価値があるのかは知らないらしい。んま、妖精だからそんなもんか?
「ところでさぁ、さっきからウサギばっかり出て来てるんだけど、ここはウサギの森かなんかなのかね?」
少し話題を振ってみた。だって、食べ物の名前ばっか考えてたらお腹空いたが気になって仕方ないんだもん。。。美香を陥れようとしたのに、なんか自爆した気分だわ。んまぁ、美香もかなりヤられてるみたいだけど。涎垂れてるし。
「ここら辺はウサギよりも猪のような魔物が多いんだけどね。やっぱり【黒龍の金貨】の影響があるのかな?よわっちいウサギばっかだね」
「よわっちいっても、私達いっぱいいっぱいだよ?ってか、バドもいい加減手伝ってくれてもいいんじゃない??」
美里はブーッと膨れてバドを睨む。
「おいらが戦ったら勝負にならないもん」
シュッシュツとシャドーボクシングをしながらバドは答える。
「おー。見かけによらずそんなに強いのかよ!」
「うん、もうボコボコだよ~。おいらが」
「やられるんか~いっ!」
顔を真っ赤にして両手で顔を隠している。
「だっておっかないじゃな~い。ケンカははんた~いっ。平和主義なんだよ~。おいらはいつも逃げるが勝ちさっ!」
なんて言いながら、ウインクしてペロリと舌を出してはにかんでいる。平和主義ねぇ~。それでこの異世界で生きてイケるのなら羨ましいわ。
「と、と、また魔物が来たわね。ってか、茶色いぞ?今回のは」
「あー。猪の魔物みたいだね」
おー。初のウサギ以外の魔物だ。それよりこの森では【スライム】なんてのは出ないのかね?ロールプレイングと言えばスライムじゃろがい。ロールプレイングゲームの世界かどうか知らないけどさっ。
「はーい。じゃあ!戦闘配置についてね~っ」
明るく指示を出す美優。都合4回にして戦い方をマスターした様子である。応用力のやる奴だ。んまー、本人は「きゃー!助けてダーリーン(はーと)」なんて言いながらきゃいきゃい遊んでるように見えるのだが、、、どこにいるのだ?ゆあダーリン。
しゅたたたーって私達が猪の気を引いて走り回って、盾を構える3人のとこまで戻ってきて、さっと盾の後ろに隠れる。猪は勢いそのままに【ドゴーーン】と盾にぶつかると動きが止まる。そこでアタッカーの二人が【ぶっしゃー】してはい。終わり。猪相手でも問題なかったね。
気になるドロップアイテムは?どれどれ、、、ウサギ肉と黄色い半透明な石っころ、、、「なんで猪からウサギなんだよ!」さんざウサギ倒しても鶏肉しか出なかったのに?異世界の常識がわからん。
意味不なドロップルールにモヤモヤした気持ちでいてたんだけど
「あたし、レベル3になってる~」
って美香が叫んで我に戻った。レベル?
「なにレベルって?」
「さっきね、【すていたす】を見てみたの。そしたらレベルってのが新たに書いて?あって、そこにレベル3ってなってるの」
ほうほう。レベルなんてのが存在するのか、それはそれは。ただ単に魔物をやっつけちゃうってのも面白くないし、可愛そうだもんね。レベル上げる為に仕方なくやっつけちゃうんだよー。って事の方が自分に納得できていいかもね。まだまだ低レベルだろうけど、地道にとんとん上げていけばいいだろう。
「どれどれ、私もレベル上がってるのかな?」
なんて言いながら左腕のタトゥーに手を添える。
レベル、、、1?だよ?
「あーん?私レベル1しかないよ~?」
がっくり肩を落とす。
「だってミサトきゃいきゃいしながら走って遊んでるだけじゃん!」
美香。そりゃないぜ?あー見えて結構真剣なんだぜ?
「私なんてレベルという概念すらないじゃないのよ~!」
美優が真っ赤な顔して怒ってる。考えてみれば美優は魔物から攻撃された事も攻撃をした事も今んとこないもんね。そー言えば。
私?私は【ど腐れ大ウサギ】に1度襲われてるからね。それでなのかな?
「まーまー、レベルうんぬんってのも色々システムがあるんやろから、詳しい事は街で確認してみたらええやん?」
ホロっとフォローにまわる美月。さてはレベルアップしてるんだな?高レベルの余裕(妬み。)が為せる技かっ。ちっ。
今に見ておれ~!私もとんとんレベルアップしちゃうんだからね~!