井の中の蛙 五
途中の説明が読み難いので後書きに要点だけ纏めてあります
「は、はぁ!? な、何言ってるんで──いつっ……」
「ん~、間近でみると~やっぱり凄~く可愛いわね。食べちゃいたい。食べちゃうわ」
ひょこっと、頭の上から逆さまの女の人が現れた。
艶のある長い黒髪と同色の瞳。紅色の唇。スラッと細い顔はとても整っていて、肌も凄く艶がある。
──そして額には、短いく黒い二本の角。
この人も、黒鬼だ。
「結構むちゃしたのね~、妖気がすっからかんよ。貴女はハンターなのよね?
じゃあ手っ取り早く妖力を補充しなきゃ」
こてんと顔を倒して、唇に指を当てる。
仕草がいちいち、何というか、妖艶……? そ、それよりもっ
「い、いやいや、いいです! 自然回復を待ちますから!」
「だめよ~。妖力は鬼の生命線、それを枯らしたままなんて、何かあった時に対応できないわ」
妖力。
それは、鬼族のみが持つ不思議な力。
鬼はみな、生まれた時から角を介し妖力を体の内に貯めているのだ。
妖力の運用は多岐に渡る。
腕に纏わせて力を増幅させたり、脚に纏わせて脚力を上げる。これは赤鬼と青鬼が得意な技だ。ちなみに赤鬼が脚に妖力纏わせたりも出来るらしいが、纏える妖力が腕より少なく好んでやる鬼は少ないらしい。逆も然り。だが黒鬼は関係ない。流石!
妖力は謎が多い。鬼系統の種族しか持たないそれは、基本纏う事で能力のブーストが出来る。もちろん私も出来る。
とある偉い学者はこう言ったらしい。「妖力は二つ目の魔力だ」と。
あの時、連戦からの連戦で体力が少なくなっていた私は、溜めていた妖力を全て解放し、がむしゃらに戦った。と思う。途中からの記憶が無いので分からないが、きっとオークは全て倒せた筈だ。
あの時は『妖力解放!』と声高々と叫んだが、別にそんな事する必要はない。ただ、あの時は少し吹っ切れてたのだろう。今になってちょっと恥ずかしい。
集落に居た頃は暇すぎて必殺技的なものも何個か作っていた。その全てにちょっと恥ずかしい名前があるのは秘密だ。
鬼は自身の妖力が急激に減少すると、周りから妖力を強引に取り込もうとする。
それでも足りないと、体が本能を呼び覚まし妖力を回復させやすい状態にするらしい。私はこの状態になった事がない。
しかし、本能を呼び覚ますというのは非常に危険だ。鬼という一括りでの本能なら、きっと戦闘本能とか、狩猟本能とかだろう。──しかし、それがもっと細かい括りだったなら。
黒鬼の、本能。
それはあの集落にいた時嫌ほど思い知らされた。
つまり、朝昼晩構わずギシアンするとこで──
(き、きたっ!)
「ほら、段々欲しくなってきたでしょ~?」
体の奥から、甘い痺れ。
この人から匂う男の香りが分かる。
それを感じて、私の中のナニカが疼く。
「わ、わたしは、そんなことしないぃっ!」
私は、集落にいた黒鬼たちのように本能に任せて淫らな事なんて、絶対にしない!
「そんな事言って~。今の貴女、すっごくいやらしい顔してるわよ~? ジェイドが去勢してなかったら、絶対押し倒されてるわ」
「おいツクモ、俺は去勢などしていない」
「じゃあ今、この子とヤっちゃう?」
「馬鹿を言え」
「勿体ないわね~。この街一番の人気者と、世にも珍しい処女の黒鬼と出来るって言うのに~」
「花街一、な」
「そうとも言うわね~」
会話しながらも、ツクモと呼ばれた女性は私の肩やお腹をわさわさと撫でる。
「痛みも~、快楽で上書きしちゃえば平気なのよ~?」
「──ッッッ!?」
ツー、と。指の腹で角を撫でられた。
(な、何が……)
「そのうぶな反応、いいわね~♪ それじゃあ、女の子同士で気持ちよくなる方法を教えてあげる♪」
段々とツクモさんの顔が近づいてきて、唇と唇が──
1 ヨミが使ったのは、妖気と言う鬼だけが持つ謎パワー。それを全て使ったため現在は枯渇状態。
2 妖気が枯渇すると本能が呼び覚まされ、体が妖気を取り込みやすくする(発情)
3 部屋に居た妖艶な黒鬼のお姉さんに襲われる!