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鬼の休日 六

 私は気絶したミアさんを背負い、リーシャさんと共に本館に三階にある二人の部屋へと向かっていた。

 もちろんカグヤちゃんも途中で回収している。

 風呂上がりという事で、四人とも浴衣姿だ。



「二階は丸々オンセンだけなので、移動する度に服を着るのが面倒くさいらしいですよ」


 だからタオルを巻いただけの人が沢山居たのか。


 ──いや、全然納得出来ない! 面倒だからって、同性同士だからって、普通はあんな格好で歩かない!

 ……黒鬼の集落では割と見る光景だったけど。


「やっぱり意味分かんないです……」


「あはは。私も始めて来た時はびっくりしましたよ。でも慣れると結構気持ちいいんですよ?」


 慣れると、気持ちいい……?

 いやいやいや。


「それと、混浴の方ではいかがわしい事が秘密裏に行われてて、未成年は入っちゃいけないらしいです。

 カグヤちゃん、注意してくだいね?」


 いかがわしい事……。

 今回の旅行を計画したのはツクモさんだし、その事を知らない訳がない。

 真っ先に入っていったよなぁ……。


 同じ黒鬼だけど、性的な事の一切避けている私には縁のない話だ。

 でもそのお陰で精霊と契約出来て陽魔法が使えるし、良い事尽くめだ。

 えっちなのはいけないと思います。うん。


「ここです。

 凄いですね。人を背負って階段を上がってきたのに息が上がってないなんて」


「鍛えてますから」


 もちろん種族の力もあるけど、私は何気に森で鍛えていた。と言うよりそれしかする事が無かった。


「お帰りリーシャ。オンセンは楽しめた?

 あれ、そこの二人は?」


 扉を開け、ミアさんを背負って部屋に入っていくと、銀色の髪を短く切りそろえた、中性的な女の子が出迎えてくれた。


「こちらはヨミさんとカグヤちゃんです。ミアさんが不慮の事故で気絶してしまい、運んでもらうの手伝ってもらいました」


「まあ、ミアの事だからそんなだとは思ったよ。

 ヨミさんだったよね、ありがとう。ミアはそこら辺に置いててくれて構わないよ。

 お茶を出すからちょっと待ってて」


 銀髪の女の子は私服を着ている。

 温泉には入らなかったんだろう。


「そう言えば名乗ってなかったね。僕の名前はマリーって言うんだ。こう見えても16歳だよ」


「え?」


 16歳? 私と同い年?


「あはは。皆最初はそんな反応だよ」


 11であるカグヤちゃんより、少し大きい程度の身長だ。

 もちろん私は見下ろす形になっている。


「これでもリーシャとミアより年上なのさ」 


 えっへん、と。

 腰に両手を当てるマリーさん。


「ヨミさんは何歳なんだい?」


「私も16ですよ」


「おお! じゃあそんな硬い話し方やめて、お互い呼び捨てで呼び合おうじゃないか!

 マリーでいいよ、ヨミ!」


「わ、わかり……わかった、マリー。

 よろしく」


 ぶんぶん、と。

 両手を握られ、上下に激しく揺さぶられる。


「年上だったんですね。私たちの事も呼び捨てで呼んでくださいね。もうお友達なんですし」


 お、お友達……?


 集落では人を避け、ハンターたちは年上の男ばかり。

 カグヤちゃんは妹だし、ツクモさんはアレだし、師匠は師匠だし。

 そんな、生まれてこの方友達というものが居なかった私に、友達だと?


「お、おお! 私たち、友達!」


 二人を抱き締め、クルクルと回る。


「わああああ!!! どうしたんだいヨミ〜!」


「お、落ち着いてください〜!」


 落ち着いて居られるか! 私に友達が出来たんだぞ! こんな嬉しい事が




「──何やってんだ、お前ら」


 と。

 二人を回していたら、入り口の方から聞きなれない男の声が聞こえてきた。


「へ」


 私は停止する。


 気分は、家に誰も居ないと思ってノリノリで歌っていた時に親にばったり出くわしてしまった時。


「……私はヨミ。色々あってミアさんを運びに来た。要は済んだのでこれで失礼する。

 カグヤちゃん、行くよ」


「あ、はい。それでは」


 相手の顔も見ず、早足で部屋から退散する。すれ違い様に、蒼い髪が見えた。



 それはともかく──




(恥ずいぃぃぃぃぃ!!!!! え、え、え? なんであのタイミングで来るの? もう十秒遅くてもいいじゃん! 私が普段からあんな事するような人って思われてるかも!)


 途中で部屋に戻るカグヤちゃんと別れ、私は早足で別館に向かった。



 死にたい。



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