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疲れた。今日も疲れました。休みが欲しいです・・・。時計が天辺を超えた時間に、私はなんでこんな所を歩いてるんですかね・・・。残業ばかりでいい加減死ねそうな気がしますね、これは。貧乏くじばかりですよ最近。
部下と上司の尻拭いをして、取引先に頭を下げ、あっちにこっちに駆け回る毎日。同時に入社した同期の女性たちは結婚などを理由に会社を去っていく今日この頃。お局になり、中間管理になってからはこんなのばかりで、恋愛なんてする時間も意欲も出てこない。すっかり枯れた28歳・・・あっ処女ではないですよ。別れってから何年ですかね~、まあいいですよ。
しかし・・・体がだるい、頭も痛いですが最近時間が無くてバフ○リンで誤魔化して病院には行ってなかったですね。次の休みがいつか分からないですが、休みがあれば病院に行きましょう。薬・・・・会社に忘れましたねこれは・・・はぁ・・・
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『高架下を抜けたらそこは森でした・・・』
ん~~~~~。事態が呑み込めない!!さっき私は仕事から帰りながら、体調不良のために薬を探してたんですね、歩きながら。で、歩いてた場所は高架下歩いてたんですよ、足元はアスファルトでしたよ勿論。で、薬が無かったんですね、(あー会社に忘れたな)って考えながら数秒目を閉じて歩いたんですよ。数秒って言っても1・2秒ですよ?なんで私今森なんですか??アスファルトのはずの足元は土。
「おかしいですね、先ほどまで夜だったのにどうして日が昇ってるのでしょうか?おかしいですね、後ろを見ても森ですよ?私が歩いてたアスファルトはどこに消えたのですかね??・・・・・あ・・・・」
気がついては行けない物に気が付いてしまいました。ふと見上げた先にはなんと、太陽が2つありました。
「どこですかここは!!!!!!!!!!!!!!!」
「うぉぉ!?吃驚した。急にでかい声出すなよ姉ちゃん。・・・見ない格好のだな?そんな恰好で森に入るとか自殺志願者か?・・・それに・・・ここいらじゃ見ない顔だ。」
・・・・変わった格好の少年です。12歳ぐらいでしょうか?布の服に皮のベストでしょうか?腰にも同様に皮が巻きつけてあり、背中には弓を背をっています。そして小麦色の肌に茶色の髪と紫色の瞳。はたして地球に紫色の瞳の持ち主はどれくらい居るのでしょうか?まあ、太陽が2つある時点で絶対に地球ではないでしょうが。さて困りました。ここが何処かわからず、そしてこの少年の質問にどう答えたものか。まさか『地球から来ました』なんて言えないですし、私はどうするのが正しいのでしょうね。
「おい!黙るなよ!?それとも俺の言葉が分からないのか??大丈夫かよ・・・まさか!本当に死ぬ気なんじゃないだろうな!」
これは訂正しましょう。凄い目力で少年が下から見上げてきます。
「あ~。すまない少年。別に自殺するつもりは無いから安心して良い。心配させたなら悪かったが、ただ私も困っていてね、どうしたら良いか考えてたんだ。」
「姉ちゃんが困ってる理由って、さっき大声で叫んでた『どこですかここは!』ってやつか?自分で来たんじゃ無いのかよ?しかし奇天烈な服着てるな~。俺こんな服見たこと無いや、どこから来たんだ?」
「・・・・日本ですかね。」
「ニホンってどこだ?聞いたこと無いぞ俺?姉ちゃんは何困ってんだよ?魔物にでも襲われて身ぐるみ落としたか??」
今サラッと嫌な事言いましたねこの少年。魔物って聞こえたのは空耳ですかね?。
「少年、ここには魔物がいるのかい?」
あぁー。少年がこいつ何言ってんだって顔で私を見て来ますよ・・・。知らないのだから仕方ないじゃないですか。
「姉ちゃんマジで大丈夫かよ?ここに居るんだから来るまでにも魔物の1匹や2匹は居ただろ??魔物に会わずに来れるような場所じゃないぜココ。」
さて、なんて説明した物か困ったな。正直にすべて話すわけにもいかないし、嘘を言ってもすぐにばれる気がする。嘘は言わずに言える部分だけ言うのが良いかな。
「少年、さっき困ってると言ったがまさしくそれで困っている。」
「はぁ?どういうことだよ??」
「私にはここでの記憶が無いんだ。ここが何処で、どうやってここに来たのが分からない。どうしてここに居るのかも理由が分からないんだ。ところで少年、君の名前を教えてくれないかい。ずっと少年と呼ばれるのも嫌だろう?」
「・・・レオで良い。てか、記憶が無いって冗談だろ?何も憶えてないのかよ??」
少年、レオが吃驚した表情で私の顔を見上げている。
「レオ、何も憶えてない訳ではないんだ、私はマイと言う名前で年齢は28だ。ただ、何処にいたかは覚えているけど、どうやってここまで来たかは分からないんだ。ちなみにここは何て名前の森なんだい?」
魔物が居るらしい、ファンタジー要素の強い世界で、フルネームなんて名乗らないよ。レオも苗字にあたる部分は名乗らなかったし。
「まじかよ・・・。あーここは、アスルステイル国のセルヴェル領にあるヌアザグルの森だよ。マイ姉ちゃんだっけ?行く場所あるのかよ?」
有るわけないじゃないですか。知らない世界の知らない国に私の行く場所なんてないですよ。帰れるんですかねこれ。てか、どうしましょうかコレから。途方に暮れてレオからの言葉に反応できないでいると、レオは何かを察してくれたらしく、私の手を取って歩き出す。繋がれた手を振り払う事も出来ずにレオに連れられて歩く。
「なあ・・・姉ちゃんは貴族様なのか?」
「どうしてそう思うのですか?」
「喋り方とかあと、手が・・・荒れてないだろ?汚れてもないし、だからそうなのかなって」
そういわれてレオの手に意識を向けると、レオの手はガサガサで皮が固く感じますね。私を見つけるまで狩をしていたのでしょうか、私を引っ張るレオの背中に捕ったであろう獲物がありますし、出会った場所に来るまでに魔物に出会うと言っていたからきっとそれともレオは戦ったのでしょう。この世界の12歳ぐらいの少年にはこれが普通なのですかね。基準が分からないので謎ですよ。ただ、レオの手から考えると確かに私の手は綺麗かもしれないですね・・・。
「レオ、私は貴族ではないですよ。あの場所でも話しましたが私にここでの記憶はありません。でも自分が誰かぐらいは覚えています。だから違うとハッキリ言えますよ。喋り方はまあ・・・これが普通だったので・・・固いですか?」
「固いなんてもんじゃないな・・・聞いててゾワゾワするから辞めてほしいぐらいだし、絶対村で浮くから辞めれるならやめた方が良いぞそれ。」
少々酷い言われ様なきがします。でも浮くのは勘弁ですね。面倒事も嫌ですし、これからは少しずつ言葉を崩していくようにしなくては・・・。
「言葉に関しては、レオが忠告してくれたことだし、気を付けることに・・・するね。」
「姉ちゃん・・・語尾に迷うほどかよ。あ、あと村に連れてやるからさ、そこでこれからどうするか考えたらいいと思うぞ。森の中で考えてても仕方ないし、来た方法が分かんないのに帰れないだろ?ニホンだっけ?俺聞いたことないからさ案内もできないし、かーちゃんやとーちゃんなら知ってるかもだし、姉ちゃん悪いやつじゃ無いっぽいから助けてやるよ。」