いんく
毒性のある液体が言葉になって、それを紙で包みました。赤い箱へと投げると、食べてしまいました。バイクに乗った人がお腹を開いて、毒物を摘出しました。そして、また帰ってきました。
「サンタさん、おねがいします。クリスマスのプレゼントはじゆうがほしいです」
また届かなかった。毒が滴るくらい書いたのに、全部戻ってきた。良い子じゃないから、でもどうしようもないよ。だって、良い子は死んでしまうから、残ったのは悪い子なんだ。
でもね、どっかの良い子達は、プレゼント貰うんだろうね。でも、それはそれで報われないのかも。だって、心から欲しいと思えるものが、そもそも有るのかな。プレゼントにどんなに空気を詰め込んでも、それは虚なんだ。
心から喜ぶ事の無いのと、心から喜ぶ事が出来ないこと。まぁ、別に良いんだけどね。
町はチカチカ眩しい、頭の中にもチカチカ目眩。似たようなものが増殖して、いや、似たようなものになることで満足してる。人はチカチカ変貌するのが嫌になったから、飾りをチカチカさせることにしたんだ。
毒にまみれた紙が風で飛んでいった。見失うのは良くない、追いかける。空のプレゼントでは満足したくない。みんなは仮面をかぶって喜ぶけど、だって、プレゼントってそういうことなのか、台本通りなのがわかっているのか。台本に添うまるで人形。
やっと追い付いた。今度こそ風で飛ばされないように、飲み込んだ。目の前を見た、追いかけるのに一生懸命で気がつかなかった。赤い服のサンタさん、やっと届いたんだね。
「ぼくのクリスマスプレゼント、じゆうをください」
サンタさんは頷いた。僕を縛る鎖を断ち切る刃物と、人を入れられるくらいの白い袋。そして、自由になれた。
メリークリスマス。君のプレゼントには中身があるかな。いやいや、何か凄い高価なものとかそういう話では無いんだよ。本当に欲しいものって案外無いよね、それだけ満たされているって話なんだけど、満たされてるから虚を抱える事になるんだ。
あぁ、そうだ。定価1000円程度の包丁と、そこらの布切れを張り合わせた袋だけで、一人を救う事が出来たのだから。満たして虚になるなら、枯渇を与えよう。そして、その重さを背負う事にしよう。肩から背負う、命ひとつ分の重さは、真っ黒な手紙と同じくらいだ。
「満たして不幸、枯渇して不幸。こんな世界に幸せを、メリークリスマス」