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コケ池にて

初めまして、杉橋章生というド素人です。

アリアンローズ応募作なこの物語は、10%のノリと

90%の何となくで構成されてます。


「この文法おかしいよwwww」

「誤字多すぎwwwうぇwww」

又、

「おっす。愛花だよ?一緒に帰ろ」

などの報告ありましたら、コメント頂けると狂喜乱舞します。

しかも、全裸です。

 てろってろの陽射し、ポレッポレな時間。まったりとした夕凪が頬を撫でる。そんな夏の終わり。



 中央都市から走竜で3日間北部へ移動した場所にある小さな農村。どこにでもありそうな農村だけれど、近場にコケだらけの池があるのでコケ池村なんて呼ばれていた。



 瓶覘(かめのぞき)の青に漂う水面が、淡藤色から黄丹(おうに)の橙へと移り行く空模様を模写している。



 そんなコケ池を眺めながら、名もない広葉樹に持たれ掛け地面に座る少女。



 少女はコケ池村で購入した容器をポケットから取り出し蓋を開ける。付属された3つの輪がある棒を、容器に入ったコブ池村の特産であるシャボン草の液体を馴染ませる。



 シャボン草の液体が馴染んだ棒を唇の前まで移動させ、ほぅ―、と息を吹きかけた。



 3つの輪から大小様々な泡球が紡ぎ出され、池へとそよぐ夕凪に乗り、瓶覘や黄丹に色を変えて浮かんだり沈んだり空遊ぶ。



 「ひよひよ。綺麗だね」


 

 隣で休憩していた二本足の走竜に頭をコツンを預け呟く。



 「きゅるるぅ」



 ひよひよと呼ばれた走竜が、水晶体の様な目を細くして返事を返す。



 「うん。素敵だね」



 



 コケ池村にある民宿のお婆さんが――旅行記の取材で村まで来たのならねぇー、折角だから夕暮れ時のコブ池まで足を伸ばしてねぇー。きっと良いものがみれるからぁー。ついでにこれ買ってきぃしゃい――何て言われたので、ひよひよを連れて来ています。



 薄萌葱(うすもえぎ)のケープに付けている社員証にも書いてありますが、私の名前はリリーオ・アルネオ。親しい人にはリリオとかリリーなんて呼ばれています。中央都市にあるホロビュー用書籍、わかりやすく言うと電子書籍でしょうか、その出版会社の旅行記を担当していまして、走竜のひよひよと半ば無計画に、気になるものをあっちいって撮影し、おいしいものを目指して食べ、って旅をしています。



 よく自由気ままな仕事に思われがちですが、必ず1日1回旅行記を会社に提出しないといけないので、結構大変なんですこれでも。



 短く揃えた栗色の髪、そばかすの残る幼い顔立ち、成長する兆しのない平坦な胸で男の子に間違われますが、一応これでも女の子であるわけで、中央都市でゆるふわな洋服を着て髪を伸ばし、甘いものを食べるような生活にも心残りはあります。



 でも、仕事は仕事ですし家族のようなひよひよと一緒に終わらない旅を続けられる方が、幸せだったりするんです。



 「風、少し強くなってきたけど大丈夫?」


 「きゅるきゅー」


 「うん。無理させてごめんね。それと、ありがとう」



 黄丹に映り、浮かんで、沈んで、弾ける泡球を、ほぅ―、と追加する。



 てろってろの夕日が紺から藍色へのグラデーションで溶けて、シンっと空気が冷たくなる。



 私の作った泡球が水辺に自生するシャボン草へ辿り着いて弾けた。触発されたようにシャボン草から細かい泡が湧き出て風走り空に舞い、辺りの草もそれを真似した。



 細かい泡の群れが池を覆い、自然のベールがモールのように上下する。



 濃藍の空を数え切れない星々が瞬き自己主張し始め、空からの光がベールのような泡群を包み込む頃――



 水面をはだか電球虫が飛び回り、秋はまだかとせっかちなビオラ虫が歌いだす。



 そんな自然の協奏曲が心に融解するように染み込み、星明りと泡群の作ったスクリーンで踊りだすはだか電球虫に視界がいっぱいになる。



 「なんだかこう言うのってとてもいいね。本当に幸せだね、ひよひよ」


 

 ひよひよは何も言わず長い首で、コツンと預けた頭を後ろから抱きとめてくれた。






 おおよそ200年前位だろうか、私達の住む世界はサイエンス・テクノロジー、という魔法文明を捨て始めた。自然の為、世界の為だと当時の偉い人は言っていたと聞いてます。



 それより前の時代を滅びの時計、後の時代を逆時計回りの時代なんて呼んでます。


 

 まだ、中央都市は滅びの時計を捨てきれなかったりするけれど、少しでも中央を離れると大地の事を考える人達が住んでいて、私にはそれがとでも眩しく見えて――



 これから先、世界はどう変わっていくのかな?と考えながら目の前の情景を眺めていたら、ひよひよが私の頬をつたう一筋の涙をペロリと舐めた。



 「いつの間にか泣いてたんだね。ありがとねひよひよ。それと仕事しなくちゃだから鞄開けて」



 そう伝えると、私の頭から長い首が離れて、ひよひよの腰にある鞄を器用に口で開けて、顔を突っ込み傷つけないように、大きな魚の目みたいなレンズが付いたコンパクトカメラを探してくれる。



 「きゅーぅる」



 小さく啼いてからカメラを壊さない力で咥え、用意してくれたひよひよに感謝の意味を込めて首を撫でる。



 「メモリはまだ余裕あるけど、バッテリーが半分切ってるなぁ。次の都市まで保てばいいけど、気にしたってどうしようもないものね」



 カシャリカシャリと無心でボタンを押して撮影していると、次第に泡群か薄くなり、はだか電球虫の数も減っていく。そろそろこの現象も終わるのだろう、私はカメラをしまいシャボン草の液でまた泡球を作り遊ぶ。



 今日のお仕事は就寝前までお休み。泡球とわずかに残るはだか電球虫の明かり、ビオラ虫の演奏はまだあるから、私とひよひよで楽しまなくては勿体無い。




 ――そうここからは私達だけの時間――



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