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パパと私  作者: 華南
8/30

恋の予感…?

Act.8   恋の予感…?






忍との交際宣言を渋々ながらも受け入れた春菜は、帰宅後、侑一に事の顛末を話した。

話した途端侑一は少し考え込んで、そして優しく微笑んだ。


その微笑みに一瞬、見惚れたがすぐにかぶりを振る。

実の父親(とは言いがたいが)にトキめくなんて…!とは死んでも侑一には言えない。


でも…、とちらりと侑一を見て、本当にこの人が父親なんだ…と変に実感した。


(年齢も見た目もとても父親とは言いがたいが、でも確実に自分にはこの人の血が流れている。

観察力が鋭いって坂下君は言ったけど、でも、そんな風にはとても見えない。

だって、パパはいつもぽやぽやと優しく笑っている。


一緒に暮らし始めて一ヶ月…。


時間を見つけては今迄の埋め合わせをするが如く、パパは私との時間を大切にした。


食事は勿論、映画鑑賞にショッピング、ドライブに…。

毎日DVD鑑賞をして一緒に、笑ったり、そして泣いたり。


感動モノを見ると私より先に涙ぐんで…。


毎回肘をついてティッシュを渡すのが習慣になった。


時折私を見つめる時、パパはとても懐かしい瞳をする。

ママの事を思いだしているんだ…、と思うと心の中が切なくなる。


パパとママの事はパパから聞いたけど、でも、2人の間に流れていた空気は私には解らない。


ママが今生きていたら、どんな感じだったのだろう?


現実としては許されない行為だったけど、でも、この世に私を存在させてくれた。


2人が愛さなければ生ませれなかった命。


ママが命と引き換えに私を誕生させた…。


涙がつと、出た…。


子供の頃、両親がいなくて寂しかったけど、でも祖父母に沢山の愛情を与えられて、大切に育てられて…。

そして今、いないと思っていたパパに大切に思われ愛されている…。


とても幸せだと思う。


とても幸せなのですが…。


やっぱり14歳差のパパは、パパだけど、パパだけど!


気持ちが微妙なのよね…。)


挿絵(By みてみん)



「 ふううと、溜息をつくとどう思ったのか、侑一は急に忍の事を話しだした。


「忍君を見てビックリしたろう。

真季子の部屋にある等身大の写真が動いたと思っただろう?」


どうして自分が忍の事を感じた事を解ったのか、不思議そうに侑一を見つめた。


「…忍君は性格も涼司さんにそっくりだよ。」


にっこり微笑みながら話す侑一の言葉に疑問を感じた春菜は、侑一に問いただした。


「どういう意味?

真季子さんが言う様な「王子様」とはとても言いがたかったけど。」


「いや、そっくりだよ。

彼は涼司さんの性格をそのままコピーして演じてるんだから。」


侑一の思わぬ言葉に、春菜は言葉を出すタイミングを失った。


「彼はね。

自己の性格を防御する為に、敢えて父親である涼司さんの性格を思いだしながら、ずっと演じている。

事故から目覚めた時からずっと。


その事に僕は、彼に初めて会った時から気付いていたよ。

多分、忍君は僕が感づいている事を知っている。


「彼」は…、とても賢いよ。


正直、僕は春菜に忍君には近づいて欲しくなかったけど、でも、これも運命だよね。

春菜は忍君にとても近しい存在だから、忍君は親近感を持ちながらも春菜を苦手と思っているハズだ。


だから春菜を自分の側で監視する為に期間限定で付き合うと考えた。


春菜は…、忍君の暴かれたく無い心を感じ取ったんだろう…?」


侑一の言葉を聞きながら春菜はこくり、と頷いた。


「坂下君には…、気になる人がいるの。

本人はその事に対して拒んでいる…。

でも彼女の姿をとても切ない瞳をして見つめてるの!」


ぽつりぽつりと言う春菜の様子を見ながら侑一は複雑な心境に陥っていた。


もし…、春菜が既に忍に心惹かれているのなら、この恋は実る事はまず、無い…。


忍には最初から心に決まった少女が存在する。

義兄である豪が彼の過去を話した時、そう話していた…。


彼が目覚めたのはその少女との出会いによるモノだと。


そして今の人格が目覚めたのも、その所為だと言う事も…。


ふうう、と深く息を吐いた。


(まあ、仕方ないか。

こればかりは本人が決める事だ。

恋心を止める事は誰にも出来ない事は、僕が既に経験している。

それを敢えて止めろとは春菜には言えない。


いや、言うべきではないだろう。


菜穂…。


僕たちの娘は、純粋で不器用で、そしてとても聡くて優しい…。


君にそっくりだよ、菜穂。)


春菜の姿を見つめながら侑一は、菜穂との思い出に心を馳せていたのであった…。



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