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パパと私  作者: 華南
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「坂下忍」と言う男

Act.4 「坂下忍」と言う男






白樺学園に転校した日、私は偶然にも、あの「坂下忍」を見た。

最初、彼を生で見た感想は、写真が動いている…、であった。


それ程彼は、真季子さんの部屋に飾られている「成月涼司」さんにそっくりであった…。


ただ、性格はどうかと言うと…、正直な感想、とても「成月涼司」さんには似てないと思った。


真季子さん曰く、「坂下忍」は眉目秀麗で、穏やかで優しい、まるで絵に書いた様な「王子様」で父親である涼司さんと、とてもよく似てると言うのだが、私には巨大な猫を被った、底の無いブラックホールの様な男としか見えなかった。


実際、初めて彼を見た場面が…、付き合っていた女性と別れる場面であった。

涙を流して散々ごねている彼女に、坂下忍はうんざりした様子で見つめていた。


そう、冷ややかで蔑んだ目で…。


口調は穏やかでありながら淡々と語るその言葉には、暖かみが感じられない。


「俺、お前の顔、好みではなかったんだ」と決定打を突きつけられた時、彼女が余りにも可哀想だと思った。


はあ、見るべきではなかった、と言うのが正直な感想である。

それは私だけではなく、偶然、その場面にいた女生徒もそう思ったハズ。


だって、彼女の目には彼をとても侮蔑している様に見て取れたから…。




すらりとした背の高い、真面目そうな人。


それが彼女の印象だった。

その彼女が今後坂下忍と深く関わっていくとは、今の私には思いもよらない事であった。


「…はああ、これを真季子さんに言うべきかしら…。

だって、あの「坂下忍」が実は二重人格であったなんて言えないよね〜。

真美子さんに言ったって、キラキラモードに変換されて、「坂下忍」をもっと美化しそうだもん。


絶対にそうよ!


はああ、美形って、やっぱりどこかちょっと違うのよね。


坂下忍にしても人間味が無いじゃない。

今迄付き合っていた彼女に、別れる時にあそこ迄言うかな…。


なんか、変に期待していた私がちょっとバカだと思ってしまった。

でも、真季子さんの夢は壊したく無いし…。


そうだ!


見なかった事にしよう!


そうしよう…。


そして当らず触らずと、そうしながらも真季子さんに提供出来る情報は、ばっちり掴んで、持ち帰ってあげないと。


真季子さん、かなり変わっているけど、あそこまで己の信念と言うか、情念を貫き通す姿はあっぱれだと思うし、なんか可愛いと思えてきたりしてるし。

私には到底出来ない所業だけど、見てるとつい応援したくなるんだよね…。


恐るべし、真季子さん!」


そう心のなかで決心した私は、坂下忍と距離を保ちながら観察する事を日課と定めたのであった。


毎日、観察していると思う事は、本当に綺麗な顔をしていると言う事。


パパ、侑一も綺麗な顔をしてると思うが、坂下忍の顔は既に次元が違う。

一つ間違えると人形の様だ。


表情は穏やかに微笑んでいるが、まるで感情が窺えない。


(みんな気付いていないと思うけど、なんかこううさんくさいと言うか、人に物凄い距離を感じると言うか…。

私が坂下忍の事情を真季子さんから聞いていなかったら、皆と同じく彼の完璧なる仮面を見破る事が出来ないだろう…。

だって、あの別れの時の場面を見ていても、彼の感情が含まれているとは到底思えなかったから。

冷たく言ったあの言葉にも多分、感情が無い…。)


ふうう、と溜息をつきながら、放課後、学校を後にしようと教室を出て廊下を歩いていると、偶然、坂下忍と出会った。


(珍しく女子に囲まれていない…。)


図書室を入って少し壁際になる場所に立ち止まっている。

誰かを見ている様だ。


その自然を見た時、私は、「あっ」と、叫びそうになった。

そう、見つめる彼の瞳に確かなる感情が見て取れたから。


(誰を見つめているのだろう?

ここからでは見ている女生徒の背中しか見えない…。

だけど確かに感情が伝わる。

瞳に宿る熱を含んだ確かなる「感情」が…。


彼は、多分、あの女生徒が好きなんだ…!)


そう思った途端、何かが私の中で動き出した。


うん、彼をとても知りたいと思った。

恋愛感情とかそういうのが心の中で芽生えたからでは無く、ただ、単に彼を知りたいと思った。


「成月涼司」さんの息子ではなく、ただの「坂下忍」を…。


心の中にその思いが波紋の様に広がっていった。

その日を境に、私と坂下忍との奇妙な関係が動き始めるのであった…。

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