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パパと私  作者: 華南
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ウワサのマキコさん

Act.3 ウワサのマキコさん





パパ、侑一にはとんでもなく綺麗で、そしてとんでもなく変わっている妹さんが一人、いる。


更科真季子さん、30歳、独身。


そう…。


彼女の姿はキラ星の如く輝いていて、見ていると余りの眩しさに目が潰れるではないかと思われるくらい、それ程の美人さんである。

但し…、姿と性格は必ずしも一致するとは限らないとそれをお手本とした、とても珍しい人種と私は力説したい。

実際彼女と暮らしてみて私は、いかに自分がマトモだというのを、毎日の如く思い知らされる。


ああ、真季子さん。


真季子さん!


どうして貴女は真季子さんなんでしょう…?


頬を染めて、毎日、写真の彼氏に愛の言葉を捧げてる。


「私は貴方の一生涯の恋人です…」と目を潤ませる姿は、まさにパパと一緒。


そう、彼女もまた、パパと同じく「純愛」を貫く永遠の乙女であった…。




「涼司さん。

お早うございます。

真季子は今日で、うふふふ、30歳と14日を迎える様になりました。

こうして貴方に毎日、愛を捧げる事が出来るなんて、本当に幸せです…!


え、出会いが無いのかって?


もう、涼司さんたら〜。

私が涼司さん一筋だと言うのを知って、そんな事を言うんだから…。

浮気すると思っているの?


嫌だわ…!


私には貴方だけ。

そう、貴方だけが私の恋人。

貴方が私に夢中なのを知ってそんな意地悪を言うんだから…。

でも、嫉妬してくれたからそういうのでしょう?


嬉しい!


愛してるわ、涼司さん!」


シックでセンスの良い20帖はあるかと思われるモダンな部屋にそぐわない、部屋の中心に飾られた巨大なパネル…。


等身大のアイドルのポスターを入れたパネルかと思いきや、それはある男性の写真を引き伸ばしたものだと言う事を後で知ったのだが…。


その男性とは、成月涼司さん。


そう、パパとママの恋愛の最大の障害を生み出した人物で、この世の物ではないと思われる位の超美形。


最初、写真を見た時、パパ、侑一よりも綺麗な男性が存在する事に恐怖を憶えた…。


(ああ、また始まった…。

真季子さんの愛の讃歌!

まあ、毎朝、「これ」が無いと朝が来たと思えなくなった私も既におかしいのだけど。

習慣とは本当に恐ろしい…。


真季子さんの「これ」を見ないと一日が始まらないと感じる程、私も既に更科家の一員と化している…!


しかし、これほど自分の世界に陶酔出来る人がこの世に2人も存在するとは思わなかった。


流石、更科兄妹!


私って、絶対宮野家の血筋を濃く受け継いだのだわ。


本当に良かった…。

確かにパパや真季子さんの様に、美しい容姿とはとても言いがたいけど…。


でも、ご近所では可愛いって言ってもらえていたし、それなりにモテていたと…、思うけど。


ま、本命にはいつも振られていたけど。


それはさて置き、自己陶酔出来る性格が伴うんだったら、超美形よりも絶対に私はこのままでいい!


ママ、本当に、有り難う…!)


心の中でママに感謝の言葉を捧げていると、いつの間にかパパが側に来ていた。

真季子さんの様子を見て恍惚した様子に、私は心の中でやはり兄妹!と拍手喝采を贈っていた。


「真季子の愛の語らいも年期が入って、見ていて清々しいね。

いや〜、実に心が洗われる様だよ。

相手が「あの」涼司さんでなかったら、僕は真季子の恋を永遠に応援するんだけどね。」


隣で自分と違う世界の住人が存在する…、ああ、聞かなかった事にしよう、と春菜は心の中で強く誓った。


ただ、だんだんと自分がその世界に感化されているのではなかろうか?と思う当たり既に、更科家の住人と化している。


「さて、今日もこれで頑張れるわ…。

あら、お兄様。

朝から会議があるのに、そんなにのんびりしていても宜しいのかしら?」


途端に仕事モードに入る真季子さんは、パパの会社で重役職に就く程、仕事が出来る女性である。

身内だからと言う事でなく、自分の実力で勝ち取って就いたと言う。


「ねえ、春菜ちゃん。

白樺学園での学園生活はどうなの?」


更科家に引き取られて一週間後、私は真季子さんの強い勧めで…、いや、強制的に白樺学園に転校させられた。

ある男子生徒に接触する為に。


「…まだ、遠目でしか忍さんの姿を見ていません。

席もかなり離れているし。

同じ教室になっても、いつも回りに女性がいて話す機会が無いんです…」


「…そうなの?

でも遠目でも姿を見れるなんて、春菜ちゃんは幸せだわ…。


ああ、どうして忍さんと同じ年齢ではなかったのかしら?


あら、そうなると涼司さんにとても悪いわ。


だって…」


だんだんと長くなりそうな真季子さんの語らいモードを阻止すべく、私は「今日こそ、吉報を持って帰宅するので!」と短く言いその場を去った。




そう、これが「坂下忍」との出会いであり、そして…。


後に私は、期間限定であるが、彼の恋人として学園生活を営むのであった…。



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