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パパと私  作者: 華南
29/30

恋愛狂想曲 その14

前回更新から、に、二ヶ月経っている…。

お、お待たせしました!

更新です〜(汗)

Act.28  恋愛狂想曲 その14




(え、キ、キスされている〜!!!

た、孝治さんと私、キスしている。

それもかなりディープな…!)


心の中で喚きながらも、自分の状況を変に冷静に分析している当たり侑一に何処か似ている、と春菜は自分の性格を頭の隅で考えていた。


(このままでは駄目…!

このままでは孝治さんに気持ちが流れてしまう。


私は坂下君が好きなのに…。

彼を助けたいのに、このままでは…!)


坂下君…、と呟きながら春菜はいつの間にか瞼に涙を浮かばせていた…。


ふと、唇が離れる感覚に春菜は目を見開いた。

自分を静かに見つめる孝治の視線に春菜は一瞬、惚けた。


「孝治さん…?」


「性急過ぎた。

今日の春菜の姿を見たら抑えが利かなかった。」


孝治の言葉にずきり、と強い痛みが衝撃となって春菜を襲う。

惚けていた感情が一気に現実へと引き戻される。

そしてやはり、と自分の疑問を確定させた。


(やっぱり孝治さんは今でもママを愛している。

私に言った言葉もあれもママを私に重ねて言った言葉。

私を見つめて一人の女として好きになったって、あれも全部嘘。

真実は、違っていたんだ…。


誰も私を見ていない。


そう、パパさえも…)


そう思った途端、空しさと哀しさが入り交じった感情に捕われた。

深く息を吐きながら沸き上がる言い様も無い感情を必死に抑え春菜は、孝治に自分の感情を悟られない様に距離を取ろうと離れようとしたが…。


「え、何…?

な、なんで???」


膝が笑って下肢に力が入らない。

孝治とのキスで自分の腰が砕けた春菜の腰に腕を回し、耳元で囁く。


「俺のキスに腰が砕けたか…。

感じただろう?」


孝治の言葉に真っ赤になって否定するが、今の状況を見たら事実としか映らないだろう。

身体を震えさせながら悪態をつくしか今の春菜には出来なかった。


「た、孝治さんのスケベ!

パパ達の前で手は出さないと言いながら…!」


真っ赤になって自分に文句を言う春菜がおかしくて孝治はしれっと一言、こう言った。


「これくらいで手を出したうちに入ると思うか?

俺が本気を出したら春菜は一日中ベットに身体が纏われていると思うが。」


「た、孝治さん!」


「俺は春菜を満足させる事が出来るがね…」


「な、何言い出すのよ、セクハラ男!

ほ、本当にもう…!」


孝治の言葉に茹で蛸の様に顔を真っ赤にしながら、春菜は慌てふためいていた。


本当に手を出されたら自分の感情、おかまい無しに孝治に全て奪われるしまう…。


頬に両手を添えながら孝治から言われた言葉に真剣に春菜は悩んでいた。


(だ、だってあのキスで今の状態なら、抱かれたらど、どうなるの私…!

いや、ちょっと待って春菜。


この状況で考えたいのは解るけど、私が好きなのはあくまでも坂下君なの!

幾ら孝治さんが魅力的な男性でも、イヤ…。

キスで確かに感じたのは認めるけど、でも心は…。)


真っ赤にさせたかと思うと急に深刻になり顔を白くさせる春菜の反応を、笑いながら見つめる孝治に気付いた春菜が、怪訝な目で見つめる。


「何がおかしいんですか、孝治さん」


「いや、余りにも新鮮な反応なので見ていて楽しい、とね」


くつくつ笑いながら言う孝治に春菜は一気に不機嫌になる。


「どうせ子供ですから、今の出来事に大人の様な振る舞いなんて出来ません!」


「それが春菜なんだからいいんだ、今のままで」


急に静かに言われる言葉に孝治を見つめる。


その瞳から目が離せない。


「孝治さん…」


真摯に自分を見つめる孝治が一瞬、怖いと感じた。


自分を乞う瞳。


心の中には忍が存在する。


どうしても助けたい人…。


今の心のバランスを、過去を解放させて自然な笑みを彼から引き出したい。

その側に自分も微笑んでいたい。


それが今の自分の想いなのに…。


でも孝治のこの瞳を見ると揺らいでしまう。

忍から決して注がれる事の無い、真剣な想い。


この瞳を見つめたら本当に自分を愛していると錯覚してしまう。

無意識にそんな感情に作り替えている孝治の気持ちを…。


(ねえ、孝治さん。

貴方は知っているの?


私を私として見ている、ママではない私をずっと愛して妻にしたいと言いながら、貴方は私にママを重ねている。


そうすり替えて自分の気持ちを保っているのを貴方は気付いていない…。


真摯に私に訴えても、それは長年思い続けたママに対しての告白にしか聞こえない。

それに早く気付いて欲しい。


そうではないと孝治さんが本気になって誰かを愛する事が出来ないから…。)


「春菜…」


「何処に私を連れて行こうとしていたのですか?」


「もう着いている。」


「え?」


「ここで俺は初めて春菜に会った…」


車から降りる事を促された私は着いた場所に目が離せなかった。


二階建ての小さな別荘。

庭には花々が咲き乱れ甘い香りが鼻孔をくすぐる。

木の暖かみを感じるその建物の中に入ると、壁に飾られた写真に涙があふれた。


嗚咽を零す私に孝治さんが優しく肩を抱く。


「ここは菜穂ちゃんが亡くなる寸前迄、住んでいた別荘。

春菜はここで生まれたんだ…」


そういって懐かしい目で写真を見つめる。


そこには私を抱いて優しく微笑むママの写真が飾られいていた…。


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