第46話 アーユーレディー?
「湖かあ!思い出すね♪セッちゃんとオイデに初めて会ったときの事!!お魚取り合いしてさ!あっ!ねえ、あの時のお魚料理作れる?ボク食べたいな!ね?いいでしょ?」
大きな湖に気分が高揚したのか、竜の姿に戻り無邪気に波打ち際を飛び回る。
「んナァ~。あんときはひで~モン見せつけられたからよぉ~。今でもたま~に夢に出てきてうなされるんだナァ~」
そういや、そうだったな・・・アイツらに料理の皿運んだ時にポロッとやっちまったんだっけなぁ・・・。魚、か。そうだな・・・最後の晩餐に思い出の一皿・・・いいね。
「前みたいにボク、お魚追い込んで来るからさ、ルイが護符でドカーンしてセッちゃんが弓でドスってしてさ!それでいい?」
「・・・わかった」
セリがぶっきらぼうに答える。リンはそれに一瞬不思議そうな顔をしたがこちらの方に向きなおすとオレが頬を隠しているのに気づいた。
「ちょっとルイ!!なに食べてるの??飴?ズルイズルイ~っ!僕にも頂戴♪
・・・うわっ!・・・腫れてる!?ね、どうしたのそれ!!」
「何でもねぇ~よ!!」
「なんでもないワケないじゃん!!そんなに腫れてるんだよ!?象にひっぱたかれたってそんなにならないよ!?・・・あ!!わかった!!ルイ、セッちゃんに何かしようとしたでしょ!!さっき呼びに言ったとき、二人っきりになったもんね~!おかしいと思ったんだ~!セッちゃん、なんかちょっと怒ってるっぽいしさぁ!そんで殴られたんでしょ!?
も~、ルゥ~イ~、敵うワケないじゃんセッちゃんに~!」
「コラ!そんな白い目で見るな!それに魚の時は勝ったわ!!オレは負けん!!」
・・・確かに怒らせはしたが、襲いかかったりなどするものかっての!!セリ相手にそんなことしたら命がいくつ有っても足りないゼ。
「・・・私負けてないもん」
すっげー睨んでるし・・・。視線から逃れる為に護符の入った鞄を漁るが、お目当ての爆破の呪符も、それどころか攻撃系のものが何もない。
「・・・ありゃ。護符が・・・ちっ。ロクな護符が残ってねぇな・・・リン、咥えて来てくれる?なんちゃって」
「え!?やだよ~!!何往復させるつもりなのさあ!でっかいの見つけて来るから何とかしてよ!」
そうだよな・・・。コイツらい~~っぱい食うしな。小せぇとオレもちょこちょこ焼くの大変だし・・・とはいえ水中からデカいモン、どうやって引っ張りだすか・・・。
「リンちゃん、私の側まで追いやってよ!ぶん殴って岸に放り出す!!むしゃくしゃすっから、丁度いい。とびきりでっかいの頼むね、思いっきり殴りたいから!!」
「分かった、任せて!んじゃ、行ってきま~~す!」
あー、それならいけるか!しかしオレへの憂さ晴らしにぶん殴ぐられるのか・・・可哀想なお魚さん・・・ナムナム。
あ、どうせ食うのか。
つぅ~かまあ、リンの奴ホントに速ぇな!もうマメツブみたいに、いや、ゴマつぶみたいになっちまった。
「んナァ~。んじゃ、オイラ薪拾って来てやるよぅ。たまには手伝わねっとナァ」
いいねぇ。チームワークだねえ。ホッとするねぇ・・・。コイツらなら、オレが居なくなっても悲しみを乗り越えて強くやっていける!って確信したぜ!・・・って、う~ん、悲しんで・・・くれる・・・よな?
「んきゃああああああっっっ!!」
沖の方から大絶叫が水柱と共にやってくる。おお、さすがリン。もう獲物を見つけたか!
「なになになになに!?ちょっと、待っっ!近い近い近い!何コイツキモい~~!!
嫌~~っつ!メッチャぶつかって来ようとする!コイツが“ぶつかりおじさん”って奴なの~~!?」
「そんなのドロンと逃げりゃいいじゃねか。早くコッチ来いよー」
「違うの!何か変なの!このミズウミ!変身出来なっ!今のやばっっ!マジコイツ変態!セッちゃん助けて~~っっ!!」
ありゃ。変身出来ねぇって、そんな事も有るんだ。何だろうね・・・。神殿の近くだから女神の力でも掛かっているんかねぇ。
まあ、死にゃしねえだろ。
「リンちゃ~~ん!そのまま真っ直ぐ~!
・・・よし、来たぞ~~!!うん、デッカイね!・・・そのまま・・・来た!!」
「セヤァっっ」掛け声と共に大きく振りかぶった右手を力任せに叩きつける。ゴバッと、まるでゼリーのように水がえぐれ、かなりの大きさの物体が空に放り出され、わりかしオレの近くにドスンと頭から地面に落下した。
体長、5、6メートル、ってとこか・・・ん!コイツは・・・!!
「おお!リン!すげぇよ!コイツ、アユだ!アユのバケモンだ!スゲぇ~デケエな~!アユは美味いらしいぜ!?よくやった!!」
繊細な銀細工の様な魚体に鮮やかな黄色い斑がエラの後ろにひとつ。図鑑でしか見たことないが、縄張り意識が高くて他の個体を追い出す習性があるとか。リンのやつ、間違われて追い出されたな?銀色で体色も似てるし。でも、たしか大きくても30cm位だったような・・・?こんなに大きく育つのはやっぱりこれもこの湖でリンが変身出来ないってのに関係してるのか?
「ッゼェ、ゼェ・・・そ・・そう・・・よかった・・・。やったね。バケモンゲットだぜ!?だね」
・・・リンめ、オレが言おうと思ってたのに!!先を越されることほど悔しい事は無い。
「ちっくしょう!!イライラしてんから狙いがズレた!ルイにぶつけてやろうと思ったのに・・・」
いやいや、セリセリさん?こんなデケえのぶつかったらオレ、ペチャンコよ!?
何か危ないから直ぐに解体して飯にしよう!
「鱗はかんじない・・・滑らかな魚体だから身は皮ごと剥ぐとして・・・コイツはナイフじゃ無理だな!剣でいくか。先ずは肛門から腹を割いてっ、と。う!?」
ドロンと黄色い内臓がはみ出してくる。いや、正確には卵、だ。
「こりやあ、メスだったか!アユのメスでアーユーレディ?ってか!?いやあ、ピンときちゃったゼ」
「そこば「ヒラメいた」じゃないの?」
「どした!?リン。冴えてるじゃねぇか!アジなまねをしてくれる」
「イワシておけば」
二人して大爆笑。
「んナァ~。なあに楽しそうにしてるだぁ?オイラ一緒懸命働いてるってのに!ひどいんだナァ~!」
丁度オイデが帰って来たのだが青年なオイデが見慣れない。ちょっとイケメンだし・・・。ちっ。
薪を受け取り、リンと「他に魚シリーズないかな」なんて話しながら調理開始。
半身は前のようにムニエルに、残る半身は塩焼きで頂いく。
肉質は白身で淡白、ほんのりスイカのような甘い香りが漂う。卵の方はひと噛みがニワトリのたまご5個分くらい濃厚な感じでヨダレがとまらん。
実に美味い!!正直、香草ムニエルは勿体なかったが、リンが大喜びで食べていたからそれでヨシ!!
みんな、ご満悦のようだ。オイデなんか
「んナァ~・・・神々しい味がするナァ!」
とか言って涙と鼻水垂らして食ってたぜ。
ああ、やっぱり食事っていいよな!セリは相変わらずブンムクレだが、こうしてみんなで食事するのも最後だ。よく目に焼き付けておこう。
いつまでもこの楽しいひと時を味わいたいがちょうど焚き火も落ち着いてきたところだし、仕方ない、燻りトークタイムだな。
・・・さてと・・・。
「あー、リン、オイデ。ちょっと聞いてくれ。さっきセリセリには話したんだが、オレはお前たちに伝えなければならない事がある。黙って最後まで聞いてくれ」
セリセリに伝えた事と同じ事をコイツらにも話した。オイデは黙って聞いてくれたがやはり、リンは途中で怒りだした。
「何で!?何でルイがそんな目に遭わなければならないの!?納得いかないよ!!ルイもルイだし!!いくらリッチェの為だってルイが死んじゃったら意味ないじゃん!!全然納得出来ないよ!!」
「オレだって殺されたかねぇよ。出来ることならまだみんなと一緒に居たいさ!・・・この旅が終わってもお前らと別れるつもりなんざなかったよ。セリの旅の目的も手伝ってやりたかったさ。そんで、みんなで世界中を旅して、美味いモン食って、美味い酒飲んで、お前とケンカして、リッチェが笑って・・・そんな夢も見るようになっていた!」
「だったら余計になんでなのさ!!」
「・・・だけどな、全部叶うなんてムシのいい話なんてねえ!だったらせめてそんな夢と引き換えにしてでも、例えオレが居なくなってしまったとしても生き返えらせてやりたい理由が出来た」
「好き以外になんかあんのか?」
「実はな・・・さっきな、お前にぶっ飛ばされた時、むか~しの記憶が蘇ってよ・・・愛の鉄拳ってヤツな」
「愛!?ちっ、違う!そりゃ好きだけど、仲間として、って言うか、うん!仲間として直ぐに話してくれなかったのに腹が立っただけ!・・・愛、とかよくわかんないもん。
・・・うん!?記憶?それは私、聞いてない!どういうことだ??」
「・・・今から百年ちょっと位前の大戦でヒト族が圧勝したよな?ところがこの頃には、既にヒトは全てが自分達の力で切り拓いた未来だと思い上がるようになっていた。前は「女神様!!女神様!!」「御加護じやー、祝福じゃ~」ってチヤホヤしてたのによ。神様なんて拝まれてナンボだろ?「私、まだオワコンじゃないの!」そこで誰かを使ってヒトの弱さを集めさせ、大勢の前で公開処刑、浄化させてみせる事を思いついた。早い話ヒーローショーだな・・・ここまでは今みんなに話した通りだ」
「・・・話が見えないぞ!?」
「待てって。だけどな、オレより前にも何人か試してみてたらしいんだわ。けども、み~んな魔人化に耐えらんなくて自害したんだとよ!魔力を保持出来ねえのよ、ヒトじゃ。容量不足ってやつ?」
「ヒトじゃ?待って、なんで!?だってルイは平気じゃん!」
「ンナ!おっさんだからか?」
「違うわ!おっさん関係ない!・・・オレ、ヒトだけどヒト族じゃねぇんだよ・・・」
「ンナ!じゃオッサン族なのか?」
「あるか!ボケェ~!おっさんは種族じゃない!っつーの!!」
「んナっΣ(・ω・ノ)ノ」
「・・・ふぅ。話の続きな!?ヒトが耐えられないならじゃあ他を、ってんで探したんだけどもだ~れも手なんか挙げやしねぇ。そりゃそうだ、女神様信仰してんのってヒトだからな。むしろ他種族からしたら“敵”だものよ。んで、困った女神は思いついた。
“そうだ!エルフの死体をヒトとして蘇えさせよ♪姿似てるし。魔力持ってるし!記憶は消しちゃえば問題ない!”
・・・・まあ、転生、ってやつ?・・・それが、オレ。どうやらオレってば前世エルフらしいんだなこれが!で、リンはさっき「なんでそこまで!」って聞いたよな!?実はよ・・・リッチェはオレの娘だったんだ」
一同「えぇ~~!!??」




