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「やっとお前も元服か」
「はい、父上や兄上のお役に立てるよう、これからも精進いたします」
「お前のように能力の高い弟がいて、俺は果報者だな」
兄上は呟くように言うと、唇を歪めて笑った。人を小馬鹿にした笑い方、などと揶揄する者もいるが、これは兄上の癖だ。私が一番よく知ってる。兄上は私を馬鹿にしたことなど、ただの一度もないのだから。
「もう準備は済んだのか」
「はい、直垂の仕立てが終わったと聞きました。それに源元綱様が烏帽子親を引き受けてくださいました」
「あの元綱様が?・・・それは良かったな」
兄上は腰かけていた石垣から立ち上がった。
「三日後、お前の元服姿を見るのが楽しみだ」
そして懐から包みを取り出して、私に差し出した。
「これは母上からお前へ」
「奥方様が、私に?かたじけのうございます」
父上の正室の奥方様が、妾腹の私に祝いをくださるなんて思いもよらなかった。私は兄上から包みを受け取り、竹の皮を開いて中を見た。うまそうな饅頭が二つ入っていた。
「兄上、一ついかがですか」
「これはお前の祝いだろう。お鶴殿と食べるといい」
そう言って兄上は笑った。晴れやかな笑顔だった。私はうれしくなって兄上に一礼し、包みを抱えて家に走った。母上に早く見せたかった。




