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・・・父上の屋敷から帰ると、母上はいつものように莚の上で疲れた身体をさすっていた。
「よいですか匡、お前はいっそう修行に励み、異母兄上より秀でた陰陽師にならなくてはなりません。お前が術に長けているのは、父上とこの母の血筋のお陰なのです。聞けば異母兄上は式神がまるで使えないとか。代わりに占星術と兵法ばかり学んでいるというではないですか。
お前が術を磨き、かの安倍晴明様や川人様のように、偉大な陰陽師になれば、家督を継ぐことも叶いましょう。そのために母は労を惜しみません。かようにみすぼらしい住まいも、慣れぬ畑仕事も、お前のために耐え忍んでいるのです。晴れ着も、我が家に受け継がれてきた珊瑚も惜しくはありません。喜んでお前のために手放しましょう。
きっと佐伯の家督を継いで、この母の無念を晴らしておくれ」
母上はささくれだった両手で私の頬をおさえこむと、私をじっと見つめた。母上の目には異様な光が宿り、威圧的だった。私は思わず目を逸らした・・・
匡が目を覚ますと、部屋の中はすでに暑く、障子紙ごしに差しこむ朝日は眩しいほどだった。匡は布団から身体を起こし、首を振った。
夢なのか記憶なのか、もう分からない。異様な目をした母の顔。とうに母の顔を忘れてしまったはずなのに、夢の中ではやけに鮮明で生々しかった。




