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00_グランド・ウェイスト
窓の外。
父の目には、そこを歩く人間たちが「人」としては映っていない。彼らは「エネルギーの淀み」に見えている。
彼らはお金を持っているのに使わない。時間があるのに動かない。才能があるのに挑戦しない。あまりにももったいない。それに比べて、、
『……見ろ、あの星を』
自らの質量を燃やし尽くし、猛烈な勢いで宇宙へ熱を還元し続ける星。
宇宙は、物質がエネルギーに変わり、拡散していくプロセス(散逸)を望んでいる。
だというのに、人類は「不安」や「保身」という名の殻に閉じこもり、行動を、エネルギーの発散を堰き止めている。
「もはや、これは罪だ」
父は呟いた。
「怠慢だ」
人間が愚かなのではない。「脳」が進化についていけていないのだ。
複雑化した現代社会において、人間の脳は処理能力の限界を超えている。だから「迷う」。だから「立ち止まる」。
そのロスタイムが、膨大なエネルギー損失を生んでいる。
「ならば、アップデートするしかない」
父の決意は固かった。
その狂気的なまでに純粋で、確固たる信念。
それを生み出したのは――
今にして思えば、あの『夢』がすべての始まりだった。




