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みのることのなかった恋
私たちは、お互いに恋をした。
それなのに、近寄ろうとはしなかった。
本気になってしまうことが、お互いにわかっていたから。
彼が送ってくる写真には、いつも少しだけステータスが混じっていた。
ランボルギーニの車体の一部。
六本木の限られた人しか見られない景色。
帝国ホテルのバーラウンジ。
私はいつも違うものを送った。
月の写真。
花の写真。
料理の写真。
そして、こう伝えた。
「鎧を脱いで待ってるから。」
しばらくすると、彼から少し変わった写真が届くようになった。
お好み焼き屋のマスター。
仲間と笑い合うバーベキュー。
ああ、この人も鎧を脱ごうと、一生懸命努力しているんだ。
そう思った。
けれど、その一方で、彼のFacebookには、
一億円の時計、
ファーストクラスで向かうイタリア旅行、
高級な酒のボトルが、次々と並んでいった。
私が「鎧を脱いで」と言うたびに、
彼は鎧を脱ごうとする。
でも、気がつくと、
もっと重く、もっと硬い鎧をまとって戻ってくる。
「これが俺だ。」
そう言わんばかりに。
私たちは、確かに恋をしていた。
でも、最後まで近づくことはできなかった。
私が欲しかったのは、鎧の中にいる彼。
彼が見せ続けたのは、誰にも傷つけられないための鎧だった。




