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これはロマンス詐欺?

最初はただの自慢ばかりで、正直うんざりしていた。

もしかして…これはロマンス詐欺?

そう疑いながらも、なぜかやり取りをやめられなかった。

そして、たった一枚の写真が――私の見方を変えた。

マッチングは、意外とあっさり成立した。

ウマトローーそれが彼の名前だった。

いや、“名前らしきもの”だった。


てんこ盛りのメールが次々と来る


「JQ上場の会社を売却後、今は不動産収入で暮らしています。」


「筋トレと柔術が日課です。世界大会で優勝経験もあります。」


「息子は成人して会社経営者で、今は賃貸で好きなことをして生きています。」


誰とか政治家先生との握手の写真


なんとか大使とのツーショット写真


あぁ、きたきた。


“俺、すごいんですよ”の自慢モード。


りんは画面を閉じようとして、ふと手を止めた。


「……これロマンス詐欺?」


でも、その瞬間。


どれどれ遊んでやるか


完全に嘘をついてるとは思えない。

でも、本当のことも言ってない。


「しばらく、様子を見てやろうじゃない。」


りんは返信を打ち込んだ。

まるで、獲物に近づく探偵のような気分で。



また来たー

今度はプライベートジェットですか。


スクロールする指が止まりかけた。

えぇ、もうその手の“盛り話”はお腹いっぱい。


不動産、投資、柔道、息子は独立、ヨーロッパ数十回、そしてこのフェラーリ


どこまで積むの?このステータスのタワー。


まるで経歴がパワーポイントでできてる男。

それが最初の印象だった。


そんな会話が続いていたある夜。

ふいに届いたメッセージ。


「今日試合で準優勝でした」

「さすがに疲れてるんで、もう寝ます」


「……つまり、負けたってことね。」


りんは、スマホを指でくるくる回しながら呟いた。


でもなぜか――

その“準優勝”という単語に、ちょっと引っかかった。


“負けたと言わずに準優勝というあたりもあいつらしいな”


AIに語りかけるスズキヒロシ空手の試合で準優勝だったんだって、、、



「鈴木裕 柔道 準優勝」


入力してEnterを押した数秒後、

AIが表示したひとつの記事。


そこには、男が押さえ込まれている試合写真が載っていた。


グラウンドに寝かされ、

顔をゆがめながら耐えている彼。


りんは、その写真に釘付けになった。


あのフェラーリの後ろ姿と同じ肩のライン。

あの自信満々な口ぶりとは正反対の、むき出しの無力感。


なんで、そんな写真を自分で見せずに「準優勝でした」なんて、軽く言えるんだろう。


本気で、戦ってたんだ。


その一枚の写真に、

はじめて彼の「本当」がにじんだ気がした。


そしてりんは思った。


「この人、全部が嘘じゃない。……でもどこまでが本当なのかはわからない。」


それでも、

その“押さえ込まれてる姿”に、

なぜか胸がぎゅっとなった。


…もう、ただの観客ではいられないかもしれない。


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