どこまでも誇示する男
車。
それもフェラーリ
男はガードレールにもたれていた。
しかも、後ろ姿。
肩が少し落ちていて、
首筋にかかるシャツの襟が、なんだか無造作で。
“ステータス”や“自信”を見せたいはずの写真なのに、
そこには、妙な「哀愁」が漂っていた。
「……この哀愁、妙に気になる。」
気づいたら、指が「いいね」を押していた。
理由はわからない。
ただ、その後ろ姿の空気が、りんのどこかを引き寄せた。
数分後、画面が震えた。
そこには――「マッチしました」の文字。
そしてすぐに届いた一行のメッセージ。
内容は…ほとんど覚えていない。
ただ、やたらと自信に満ちていて、
何かを誇らしげに見せつける匂いがした。
なんか嫌だなぁと思いつつも
否定することなく褒めちぎることもなく
当たり障りなく返事を書いた。
こいつなんかギャフンと言わせたい
そんな衝動もあった。
来るメール来るメール
自慢自慢自慢
自慢のてんこ盛り
りんは大概辟易してきていた
そんな折
いつもと違う内容が届いた
そこには、いつもの強がっているあいつはいなかった。
傷ついた小鳥のように、小さく震えている――
そんな波動が、画面越しにまっすぐ飛び込んできた。
りんの指は、しばらく動かなかった。
何を返すべきか…いや、本当は返すべきじゃないのかもしれない