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番外編: イラスト 待ち時間
待つ時間は、りんにとってただの空白じゃない。
それは、ヒロのことを思い描くための、大切な余白。
待っている時間は、不思議だ。
時計の針は、わざとゆっくり進んでいるように見える。
耳に触れる風が髪を揺らし、そのたびに、ヒロの横顔がよみがえる。
まだ来ない——
でも、それも悪くない。
今日はどんな表情で現れるだろう。
あの時の笑顔? それとも、少し照れた目線?
唇からこぼれたメロディーが、風に乗って遠くへ流れていく。
胸の中で膨らんだ期待は、少し苦く、でも甘い。
この長さがあるから、会えた瞬間はもっと特別になる。
その夜、私はこのイラストをそっとアルバムに入れた。
既読になったものの、何の反応もなかった。
「まだ来ない」が「やっと会えた」に変わる瞬間が、いちばん好き。
待ち時間さえ、ヒロと過ごす物語の一部です。




