番外編: イラスト沈黙の日
成り行きは沈滞したまま。
あいつが動き出さない限り進展はない。
……でも、待つだけなんて性に合わないから、別の角度から仕掛けてみた。
りんは、そっとヒロのアルバムにこの一枚を忍ばせた。
ヒロの逆鱗に触れ、「少し距離を置きましょう」と言われてから数日。
ため息ばかりの毎日だった。
あの夜、何も言わずに入れた一枚のイラスト。
けれど、その夜は既読にならない。
夜中に目を覚まして確認しても、変わらず。
翌日の昼休み。
ふとスマホを見ると、既読になっていた。
――でも、それだけ。メッセージはない。
ところが夕方、突然ヒロから写真が届く。
相変わらずの自慢話てんこ盛り。
しっかり鎧をまとった言葉に、りんは少しがっかりした。
だから——小悪魔モード全開。
アルバムの奥から、あの“したり顔”の写真を引っ張り出す。
「10歩下がってたはずなのに…まだ下がらなきゃだめ?」
そのセリフを添えて送信。
ヒロは最初、その顔をよく見なかった。
だから、自分が距離を置こうと言ったことなど忘れたかのように、
「どうした? 何かあったのかい?」と返してきた。
りんは迷わずその言葉にリプライし、
ヒロが言った「距離を置こう」の部分を突いた。
最初、ヒロは何のことかよくわからなかった。
だが、画面を見直し——こいつの、このしたり顔。
胸の奥に、静かに怒りがじわっと広がっていく。
――これ以上、この女に振り回されるもんか。
短く打ち込んだ。
「しばらくメール控えます」
その文字が、りんの頭の中で何度もリフレインした。
あーあ、またやっちゃった。
本筋はまだ動かないけれど、だからこそ遊べる余白もある。
さて、この余白をどう埋めるかは——お楽しみに。




