いいねが出会いの始まり
マッチングアプリ。
そこは、現れては消える人たちの群れ。
そんな中で出会った――ちょっといけすかない後ろ姿の男。
フェラーリを背に立つその背中に、なぜか哀愁を感じた。
気づけば、私は“いいね”を押していた。
相戸りんは、離婚してからずっと一人で過ごしてきた。
何人かの男と出会いはあったが、長く続くことはなく、いつの間にか消えていった。
りんは、日本人離れした小顔と細い長い足を持つスタイルの持ち主。
男たちはその姿に魅了されたが、本人にその自覚はない。
むしろ「私は美人じゃない」と、自信すら持っていなかった。
「いい女だ」と言われても、心のどこかでその意味を測りかねる。
別れ際をシンプルに終わらせるから?
去っていく男を追いかけることもせず、ただ静かに自分の仕事に戻っていく。
1人が寂しいとふと感じた夜、気まぐれにマッチングアプリを開いた。
登録しても、すぐにマッチはする。
けれど、つまらない。
現れては消える人たち。
傷つけ、傷つけられ、心がすり減っていく。
それでも、その日も何となくアプリを開く。
「92%かぁ」
ふと目に留まったのは、フェラーリを背景にした男の後ろ姿。
見え透いたポーズ。
いけすかない――そう思ったはずなのに、その背中には不思議な哀愁があった。
気がつけば、いいねを押していた。