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再会

 美佐子は長野にUターンしてやり直す形になり、引っ越しの荷物を整理したり、りんごの面倒を見たり。それから隣町に住む兄の所に顔を出したり。長野に生活の拠点を移すにあたりやるべきことを少しずつこなした。高校卒業後、長野が嫌いで上京した訳ではなくただ単に東京の大学に進学してみたかっただけで、そのまま東京で就職して俊介と結婚した形となったのだが、こんな流れで自分が長野に戻るとも考えてなかったため人生何が起こるか本当にわからないものだと思った。長野に戻った理由のひとつに兄がどうやらりんご栽培を継がない意思があるようでこのまま両親の代で廃業するのも居た堪れなく、妹も鹿児島へ嫁いでおり、今自分が戻って継ぐタイミングがいいのではないかと決心もあった。あえて俊介には話はしなかった。

ゴム長にほっかむり帽、軽トラを自分で運転して農協に挨拶に行った。東京では決してやらない装い。だけど私はこの農家や農作業が嫌いじゃなかった。小さい時はきょうだい皆で手伝っていたし。これから両親がやっている仕事の範疇を私が受け継ぐ。そう。やっていこう。ここで、男性に頼らず自立して。それがこの今の私への戒めだ。

 農協に着くと若い男の子が柴犬を連れて来ていた。柴犬もまだ若い雄で尻尾をちぎれんばかりに振りまくり遊んで遊んでと前足を挙げて愛想を振りまく。あはは、今度モカも連れてこよう。モカは東京では座敷犬だったけど長野ではもう外にも出して一緒に連れて行こうかな。

「あれ、高橋さんとこの軽トラ⋯?」

柴犬を連れたその男の子が話し掛けてくれた。高橋は私の旧姓で、私はこの機会に高橋姓に戻した。

「こんにちは。今度両親から受け継ぐことになりました、高橋りんご園の高橋美佐子です。宜しくお願いします。」

柴犬を撫でながら答えた。

「そうなんですね!宜しくお願いします。俺は吉田信司です。父親と一緒にやってます。こっちはチャー、毛が茶色だから。」

柴犬の紹介もしてくれた。

「あはは、そのままだね!」

そのネーミングに思わず笑ってしまう。

信司は18歳で地元の消防団に所属しながら父親とりんごを作っていると言った。

「おーい!信司、こっち手伝え!」

遠くから男が信司に声を掛け近づいてきた。

「あれっ?美佐子か?」

すぐにわかった。その男は中学生の頃初めて付き合った吉田祐司くんだった。サッカー部の。

「えーっ!吉田くん!吉田くんなの?」

こんな所で会えるなんて。

「美佐子か!すぐに分かったよ。元気か?」

「元気だよー。吉田くんこっちにいたんだ。」

「おう、東京で就職したときもあったんだけど。今は息子とやってる。」

「そうだったんだ。私も最近戻って来て継いだの。今農協に挨拶に来て、信司くん息子さんだったのね?」

吉田くんは年相応のおじさんにはなったものの、あの頃の面影がありすぐに分かった。そして彼の方もすぐに私に気づいてくれたみたい。

「そう。うちは俺の後は信司が継ぐ予定。今修行中。」

信司は脱帽し宜しくお願いします、と頭を下げ、チャーは美佐子に遊んでと足元に纏わりつくのだった。


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