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髪留め

 「陽菜ちゃん、もし勉強で煮詰まったらフルーツパフェでも食べに行かない?」

和香は陽菜を老舗のフルーツパーラーへ誘った。

「えっ?いいの?」

陽菜の目が輝く。

「勿論、奢ります!」

「わーい!」

きっと、女の子を産み育てたらこんな感じに女子同士で甘い物を食べに行ったり、洋服を買ったりするのかな。大輝は着るものに関しては全く興味がなく、小さい頃は歴博等の博物館ばかりに行きたいと言い、よく連れて行ったものだった。

「大輝とはこういうところには一緒には来てくれないからね、陽菜ちゃん付き合ってくれてありがとうね。」

フルーツパーラーの窓際の席に陽菜と向かい合って座った。宝石の様に輝く選び抜かれたメロンやいちごが所狭しとパフェグラスに品良く飾り並べられてどれも美味しそうでどれから食べ始めていいやら。

「んー幸せだね。」

甘い物は幸せにしてくれると思う。今日はこの幸せを心ゆくまで味わおう。

「陽菜ちゃん、勉強どう?あまり根詰めると体調崩すよ。」

陽菜の頑張り様は尋常じゃない。

「高校入る時も今まで勉強ろくにしてなかったから⋯それって勉強する意味がわからなかったの。でも今は看護大入りたいから。目標出来たから。」

今日の陽菜の髪も勿論私が結った。両サイドの髪を編み込み後ろでまとめた。襟足はあくまでもストレートに下ろし陽菜の髪の美しさを最大限に活かす。

「それって大輝のおかげ?」

陽菜はちょっと恥ずかしい様な、あのはにかんだ笑顔で頷く。

「そっか。そんなに大輝の事思想ってくれてありがとう。大輝のどんな所を気に入ってくれたの?」

息子を好きな女の子、というだけで可愛く思えてしまうが陽菜は本当に可愛く、先程もフルーツパーラーまで一緒に歩いていたときにモデルに興味ないか、とスカウトされた程だった。陽菜は興味がない、看護師になりたいからと断っていた。和香は職場のホームページ用の撮影でも外された程なのでそんな声も掛かったこともなく、本当にスカウトなんてあるのかと感じた。陽菜は動じることもないためこういったことは一度や二度ではないのだろう。陽菜の美しさは真実の輝き。美佐子譲り、といったところか。美佐子も群を抜いた美しさがあった。俊介だって「イケメン」の類だ。両親から受け継いだサラブレッド。しかし大輝は??私の息子だし良く陽菜が好きになってくれたものだ。笑ってしまった。

「先生、本当歴史が好きみたいで、その話しをするとき楽しそう。それから私が消しゴム落とした時拾ってくれたの。」

「あはは!そんなことで大輝のこと好きになってくれたんだ。ありがとう。」

陽菜に大輝は勿体ないな、と思ってしまった。素直な、そして若くて誠実なまだ青くて汚れていない、真っさらな好意。青春。応援したい。こういう時、母親としたら息子を取られると思うんだろうか?私は寧ろこんな息子でいいのか?と尋ねてしまう。陽菜が看護師になったら大輝は陽菜を受け入れるのだろうか。あの病院での陽菜に告白した言葉。あれは本心だろうか。でもこんなに陽菜を本気にさせているのだから大輝ももう撤回はできないぞ、と母親ながら心の中でほくそ笑んだりして。

「和香さん、もう切ってないの?」

恐らく、陽菜が和香に一番に聞いてみたいのはこの質問だろう。

「うん。最近はもう切ってないかな。実はね、美佐子さんとお会いしたときに一時落ち込んでしまってね、でも左手だったからそんなに深くやってないよ。美佐子さんてすごい美人さんだからびっくりしてしまってね⋯人と比べたらいけないって分かってるんだけどね。俊介さんは美人さんが好きなのかなぁって⋯バカだよね。」

「和香さん、ママはパパがいたのに彼氏がいたの。卑怯だったの。全然美しくなんかない。」

陽菜は私を慰めてくれるのだろうか。

「ありがとう。陽菜ちゃん。本当ありがとうね。陽菜ちゃんは大丈夫?」

「うん。和香さんが優しくしてくれるから嬉しい。この前のお弁当もありがとう。うずらの卵に顔が付いてて可愛いかった。」

お互いちょっと涙ぐんでいたと思う。

「うん。じゃあもうお互いに切るのはやめよう。約束ね。私も頑張る。切ることに逃げたりしないように。それから、お父さんのことね、俊介さんのこと⋯私は俊介さんのこと、好きです。大好き。だから本当の家族になりたいと思っているし結婚もしたいと思ってるの。許してくれますか?」

陽菜は涙目になって

「そんな⋯許すなんて。パパを宜しくお願いします。」

陽菜が看護大に受かるまでは支えになりたいと思った。

「ありがとう。陽菜ちゃん。」

お互い思いっきり泣いて認め、笑った。

 帰り道、ファッション雑貨店で黒猫の形をした髪留めを見つけ、陽菜にどう?と訊くとカワイイ!と応えてくれたので購入し、明日早速着けてみようねと約束して家に着いた。


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