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憶測

 「パパ⋯予備校行きたい。」

陽菜はあれから予備校のパンフレットをいくつか取り寄せていたらしい。

「えっ?予備校?」

本気なのだろうか。

「うん。私ね、看護師になりたいの。看護学校じゃなくて看護大に行きたい。」

この夏休みから行きたいという。

「トリマーにはならないの?」

僕はあえて言ってみた。

「うん。和香さんの病院に行って色々見てたらね、看護いいなって⋯。」

「そうなんだね。いいと思う。予備校は近くにあるの?これから学校終わってからも通うなら通いやすい所がいいね。」

とアドバイスした。大輝先生に言われたのか?と言うのはやめておいた。折角やる気になっているなら応援してあげよう。

「ここの予備校いいかなって⋯ほら、医療系大学に特化、って。」

とあるパンフレットを指さした。

「うん。じゃあ、今度一緒に見学に行ってみようか?」と返事をした。

陽菜はそれから医療系の予備校に通うようになり、美佐子と住む前の家と僕のマンションを行き来していた。勉強で煮詰まると場所を変えて気分転換になるのだろう。娘にそういった居場所を作ってやるのはいいと思った。どちらにもいない時は図書館へ行ったり、コーヒーチェーンストアへ行ったりしていた様だ。兎に角看護大に受かりたい、陽菜の原動力はそれだけなのだろう。父親として、応援してるよ。陽菜!


 それから和香はいよいよ退院することになった。結局3週間ほど入院はかかり、更に1週間は自宅療養しつつリハビリや通院となった。僕は退院日には仕事を入れずに迎えに行った。陽菜は予備校で模試があるとかで陽菜を予備校まで車で送りその足で病院まで向かった。

病院に着くと既に大輝がおり会計を今済ませた、という。和香は荷物をまとめていた。右手のギプスは以前に比べて大分簡易的なものに変化している。

「お世話になりました。本当に色々ありがとうございました。」

ナースステーションに菓子折りを渡しお礼を言って後にした。

遠くで「あのご夫婦本当仲いいのよね〜。」

なんて看護師達の会話が聞こえてきて和香と目を合わせて微笑み合ってしまう。和香のそのはにかんだ笑み。僕はそれが1番好き。そして大輝ももうふたりを認めていた。

大輝はこれから会議があるとかで学校に戻ると言った。母親を頼む、とまた以前の様に何度も僕に頭を下げるのでもうそんな事はしなくていいと伝えて別れた。大輝も真面目な人間だな。そんな所に陽菜は惹かれたのだろうか。その陽菜の父親が僕で、そして僕の好きなひとは大輝の母親。この網目模様の様に繋がってゆく人間関係は途切れることを知らない。

大輝の、あの陽菜への告白は本心だろうか。陽菜がもし看護師になれたなら、大輝は陽菜を受け入れるのだろうか。憶測ばかりが渦巻いた。僕の頭の中だけで考えてみても何も進展はしなかった。

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