竹内
俊介は和香の新築工事は以前から付き合いのあった地元工務店へ、その現場監督兼棟梁をしている竹内経由で依頼した。
地元の小さな工務店にありがちな、本来なら棟梁だが現場監督の役も兼ね朝から晩まで仕事をしているような男で、家より現場にいる時間の方が長いだろう。まぁ、自分もそんな感じだけど。竹内とは同い年ということもあり、胸襟を開いて話すことが多かった。
「お前⋯、随分熱心だな。」
竹内が呆れたような驚いたような表情と苦笑い。宗像さんの図面を前にそんなに熱心に説明してしまったのだろうか。
「まぁ、お前好きだよな?こういう狭小住宅に旗竿地」
その、含みを持たせた物言い。
「勿論。大好物。」
狭小地を如何に有効に使うかは建築士の腕の見せ所だろう。そういうの、得意分野。
「それだけじゃないだろ。」
竹内がニヤリと笑いながら。
「どういう意味なんだ?」
真面目に返してしまった。何が言いたいんだ。
「いや⋯離婚してお前、随分変わったなって。自分の意見を押し通す所あっただろ。これが正しいって。そんな所寧ろ俺は好きだったけどな。今は相手の意見聞いてからやる感じ?この施主に対してもそうしてるんだろう?」
「何が言いたいんだ?」
自分でも変わったと思っていたけど指摘されるのは初めてだった。
「この施主に、惚れてるんだろ。」
不意にそんな言葉が竹内から、竹内の口から出てくるのにこっちがびっくりした。
「おちょくってんのか?」
お互い笑いながら。軽口たたきながら。
「これから宜しく頼むよ。」
竹内は煙草を燻らせながら、これからまた現場が増えることにワクワクしているような、そんな表情だった。
「吸い過ぎなんじゃないのか。体は気をつけろよ。」
「おう、若くないからな。互いにな。」
背を向けて後ろ手に手を振りながら咥え煙草で去って行った。




