原点
今日の打ち合わせは和香の自宅。
宗像さんの家はなるほど、玄関のタイル貼りが昭和を感じさせた。僕の見立てでは築50年超、水回りはリフォーム済でもそれから20年は経過していそうな佇まい。そして台所の天井に至っては雨漏り跡が。台所の窓を出窓にリフォームしているがそこからも雨漏りがしているという。シングルガラスが逆に良きアンティークさを醸す。古いけど大切に住んでいるのが分かる。2階には和室が二間のみ。6畳と4畳半。襖は張り替えてあった。階段の上も収納スペースにしており古き良き昭和の建物。僕は和室が嫌いじゃない。何となく懐かしい様な。この造りも⋯
「古いでしょ。だから今回建て替えて新しくなった建物で私も気分を新しくして今後の人生を生きようと思っています。」
彼女の決意。清々しい。その手伝いが出来るのが素直に嬉しい。
「僕がお手伝いできて光栄です。築年数はどれくらい?50年位かな?」
「そうですね。51年だと思います。古いでしょう?今はもう無いようですが、地元の工務店が施工していて⋯」
宗像さんは既に解散している地元の工務店の名前を挙げた。
「あっ?えっ?そこ、僕の実家もその工務店で⋯」
実家の施工もその工務店だった。だからちょっと懐かしいような感じがあったのか。この造りにも共通点が。もしかして、建築士も同じだったりして。僕が建築士を目指した原点の実家。宗像さんも信じられない、といった表情で戸惑っているような、楽しんでいるかのような。互いに見つめ合う。こんな所にも宗像さんとの共通点があることに何か他人とは思えないような、もっと大袈裟に言えば運命、いや宿命といったものまで予感し全てを良い方向へ考えてしまう自分がいた。恥ずかしながら。この興奮の気持ち。この高鳴り。このきらめき。それらで景色まで違って見えてしまう。ちょっと現金な自分。いや、でもこんな感じも悪くない。いいだろう。その位の「勘違い」は。肯定しよう。そして未来も。僕の人生にこんなことが起こったことを寧ろ歓迎しよう。もしかしたら最大の贈り物なのかも知れない。
「これからも宜しくお願い致します」
僕は何か良くわからない挨拶をしていた。




