健太と真由美
健太と真由美は高校の同級生だった。真由美は校則を真面目に守るタイプではなく、スカートの丈を極限まで短くし、髪を脱色、制服を着崩し化粧を施すタイプだった。健太もどちらかというとやんちゃなタイプで学校もあまり真面目には行かずガソリンスタンドでのバイトに明け暮れた。近い将来は大工になるつもりで勉強も特別熱心にはしなかった。寧ろ高校を中退して一刻も早く大工見習いになりたかった。当時ニッカポッカ姿にも憧れていた。ウチの父ちゃんが一番かっこええ。大工の父親が好きだった。健太は高校を中退して見習いに弟子入りしたいと伝えた事が一度だけあった。父親は案の定猛反対した。父親は中卒で大工になった経緯があり、高校位は出ておけと小さい頃から健太に教えていた。「大工でコケても学があれば惨めな思いをせずに済むけんな、せめて高校位は出とけよ。」父親もよほど悔しい思いをしたことがあったのだろうか。大工に学歴なんか必要なのか⋯健太は考えた。しかし中退したところで大工の見習いにはさせてくれなさそうだ。高校は適当に行き卒業した。大工になって漸くひとりで仕事を回せるようになった頃、父親から2級建築士の受験を勧められ3度目で合格できた。「技術と資格は裏切らんけん。」よく父親が言っていた。ハウスメーカーに転職した際にとりあえず高卒で良かったのかと思った。そして大工時代に吸収した技術と2級建築士の知識が役に立った。父ちゃんが言っていたことはこれか。そんな父親は長年の喫煙で慢性閉塞性肺疾患になった後に肺がんで亡くなった。父ちゃん⋯ありがとう教えてくれて。やっと分かった父親の言葉とありがたみ。
大工時代は早く真由美を養いたくて結婚した。実は女性は真由美しか知らなかった。真由美には気を遣わなくて済む。でも何故そんなに早く結婚したかったのだろうか。仲間の中でも若すぎる結婚だった。子供もふたり産まれた。真由美と結婚してなかったらどうなっていたのか。愚問か。そんな事を考えても仕方ない。しかし美佐子と見つめ合ったことがあってからそんな事ばかりを考えてしまうのだった。




