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転校生が来た。
それはそれは可愛い女子生徒だった。
一目で見てそれがエレナの生まれ変わりだとわかった。
◆
「で、なんで貴方はまだここにいるんですか?」
当たり前みたいに俺の席の前で弁当を広げ始める元伯爵のご子息をみて溜息を付く。
彼は相変わらず時々俺に愛を囁いて、それからこうやって割りと一緒に時間を過ごす事もある。
転校生は人好きのする性格もあって、もてていると聞いた。
「いやですねえ。前世は前世、今は今だよ。」
当たり前のように言われるが、そうであれば目の前の人が自分にこだわる理由も無いのにと思う。
前世でエレナとの仲を諦める何かがあったのか、それとも現世の彼女は何かあるのか、自分にはまるでわからなかった。
「大変失礼なことをお聞きしますが。」
別に聞かなくても良かったことなのかもしれない。
前世なんて、誰かの記憶を映像として知っているだけのことだ。だから、この質問は全く意味の無いものなのかもしれない。けれど、目の前の男の心を酷くえぐるかも知れない質問だった。
「貴方はゲイなんですか?」
「……ああ、君以外の男を好きになるかって?」
目の前の男は前世の話はしなかった。
微笑んではいるけれど、何かを探るようなそんな目でこちらを見られて、聞いてしまったことを後悔する。
「さあ、どうなんだろうね。女性とお付き合いをしたことはあるけれど……。」
お付き合いがどこまでのものかは知らない。
だけど、俺以外の人間と付き合えるなら、それこそ俺にこだわる必要は無い様に思える。
前世の禍根があったとしても、そんなことに囚われてこちらにダメージの無い嫌がらせを続けるより、他の誰かと幸せになった方がどう考えてもいい。
こんな風に自分と時間を過ごすという不毛さを考えると、このままじゃいけない気がした
どうすればこの人は、俺に興味をなくしてくれるのだろうか。前世での自分の行いを忘れてくれるのだろうか。