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境界の夜  作者: ハープ
4/6

常途一変 後

1日の授業が終わりホームルームが始まった。

一宮教諭が手短にと話し始める。

そして今後の予定について連絡が終わると一宮教諭が

「最後にテストが近いことを忘れないでね。以上!」

と笑顔で話を終えた。

光彩は下校の準備を済ませて真理有と最後の打ち合わせをする。

光彩「真理有、場所は月名丘にしましょ。地元民も滅多に寄り付かないし、その分人払いも簡単なもので済む」

真理有「分かったわ。でもそこまで付き合ってくれるかしら?」

光彩「放課後問題無いって言ってたから大丈夫でしょ。街の案内ってことで、じゃあ何かあったらよろしくね」

そう言って光彩は定の所へ行き「遠夜君、この後案内したい場所があるんだけど時間ある?」

定「予定は無いから大丈夫だ。是非頼むよ」

光彩「じゃあ行きましょうか暗くなる前に」

窓の外ほんの少し光の色が濃くなる中、2人は教室を出る。

学校の玄関を出ると傍に自販機があった。

定「月城何飲む?」

光彩「じゃあお言葉に甘えてコーヒー、ブラックで」

定が了解と言って自販機へ向かった。

定「はいブラックコーヒー」

光彩「ありがとう」

光彩が前を歩き定がついて行く。

定「それで今からどこに向かうんだ?」

光彩「月名丘っていうちょっとした隠れスポットよ」

定「それは楽しみだな。住人なら皆知ってるみたいな場所か?」

光彩「そうねある意味有名よ。そのせいで今は人があまり寄り付かなくなったけど」

定「幽霊でも出るとか?」

光彩「それは根も葉もない噂の一つね。実際は記憶喪失者や意識を失って発見された人が続出したのよ」

定「何か危険なガスが発生してたとか犯人がいたとか?」

光彩「それがね犯人なんてのもいなかったのよ。ある時期そんな出来事が頻発して色々調べたらしいんだけど物的、科学的根拠になるものは一切見つからなかった。

人為的でもなければ自然現象でもなく原因は不明。

それから程なくしてこの不可解な出来事はパッタリと止んだわ」

定「じゃあ今は安全なのか?」

光彩「ええ何度も足を運んでる私が保証する」

定「怖いもの知らずなんだな月城」

光彩「ま、そんなこんなあって今じゃ隠れスポット的存在になってるのよ」

定「でも原因は何だったんだろうな、本当に呪い的なものだったのかな」

光彩「呪い的ねーそれが1番しっくりくるかもね」

そう話していると月名丘の看板が見えてきた。

時刻は16時20分少しずつ日が傾いていた

光彩「ここから少し登るから」

定「ああ、」

定の目には光彩が映っていた。

自分より背は少し低いくらいか髪は黒髪のロング、ライトブルーの瞳、一挙一動無駄のない動きは目を奪われる。

彼女の言動にはどれも芯がある。

そうぼんやりと見ていると不意に光彩が「遠夜君この時期に転校してきたけどテストは大丈夫なの?」

定「勉強はそれなりに出来るから大丈夫だ。クラスの人からノートも移させてもらえるから問題ないよ」

光彩「そ、」

定「心配してくれてありがとう」

光彩「別にそんなんじゃないわよ」

他愛もない会話をしながら緑地を登っていく。

気づけば定はブレザーを脱いでいた。

道は人が歩けるよう少しだけ整備されており周りは草木が生い茂っている。

時折やさしい風が2人を通過する。

しばらくすると丘の中腹の開けた場所へと辿り着いた。

光彩「ここよ」

そうして定は柵の方へ歩みを進めると月名市の全体像がそこにあった。

紅く染まりつつある空が街を照らしていた。

定「いい景色だな」

光彩「月名市を一望できる数少ない場所よ。ここから学校も自分の家も大体の場所は把握できる」

そう言うと貰った缶コーヒーを開けて一口飲むと、光彩は真理有からのプレゼントを準備する。

魔力を流すと先端に翠玉色の炎が灯る。

定が景色に注目している今なら容易くこなせる。

そうして光彩は定の背中へと炎の針を刺した。

1、2、3秒経過。


炎の針は無反応。

光彩はホッと胸を撫で下ろす。

これで遠夜 定は無害だとほぼ確定した。

気配は感じないけれど、どこかで見ている真理有もこれで一安心したことだろう。

針を箱に戻して街に目を向ける。

光彩「どう、ご満足いただけた?」

定「大満足だ。連れてきてくれてありがとう」

そう話すと笑顔を光彩に向けた。

残りのコーヒーを飲み干して光彩は「じゃあ暗くなる前に帰りましょうか」と定に視線をやるともう一人の気配を微かに感じた。

気配を消していた真理有、


ではなくそこには

ケープマントに身を包んだ赤眼の人型が

定の右腕を斬り落としていた。

定「ぐっ゙あ゙ぁ゙ぁ゙あ゙あ゙っ゙!」と悲鳴が上がる。

赤眼の人型が前方へ定を蹴り飛ばす。

それとほぼ同時、光彩の右腕に幾何学の模様がを帯びて表面化する。

手を広げ前方に突き出すとセレストブルーの光弾に赤色のエカルラートの稲妻が纏い光弾の中に混じる。

前方に放たれると赤眼の人型が目を見開き体の前で腕を交差させると瞬く間に森の中に吹き飛ばされた。

右腕を押さえ体勢を崩して光彩の足下で蹲る定。

光彩の左の足下には右腕が飛んできていた。

光彩「遠夜君!」そう言うと定の右腕に手を翳す。

淡い光が定の傷口を包むと痛みが薄れていく。

定「これは、、どう、なってるんだ」

光彩「動かないで!」そう言って左手で定の右腕を拾い上げ傷口に近づけると切断部分を不思議な模様が繋ぎ合わせた。

光彩「これはあくまで応急処置、表面だけ繋いでるだけで中身の修復には時間がかかるの。だから右手は無理に動かさないで」と落ち着いた口調で言った。

光彩「遠夜君走れる?」切迫した状況が彼女の声から伝わる。

定「ああ、少し…ふらつくが走れないことはない。

このまま座り込んでたら今度は首を刎ねられかねない」皮肉まじりに話し冷静に見えるが、この状況は全く理解できていない。

一つだけ確かなのは、自分はキツネ狩りのキツネだということだけだ。

光彩「落ち着いて聞いて、今斬られた箇所に呪いがかかってる。でも安心してすぐに死ぬ類のものではないから。一先ずあなたは人がいる所まで逃げなさい。

あいつはあたしがなんとかする」

定「俺一人で月城を置いて逃げろっていうのか?」

光彩「そうよ。この状況にあなたを巻き込んだのは私の責任、だからなんとしても遠夜 定を逃がす」

定「死なないよな?月城」

光彩「死ぬ気は毛頭ないわ。後で合流して呪いも解いてあげる約束する。時間切れよ行きなさいっ!」

遠夜 定は走り出した。

全身は思うように動かず、視界はぼやけ、まっすぐ走ることさえままならない。まるで自分の身体じゃないみたいだった。

ふらつきながらも中腹へと繋がっていた道へと走る。

その最中赤い2つの眼光が定の右端に映った。

そこには曲刀を振りかざした赤眼が定に迫っていた。

振り下ろされる瞬間、定に向かっていた身体を空中で半回転させると背後から光彩が至近距離で光刃が放たれた。

間一髪で防ぐ赤眼。

少し弾き飛ばされたが難なく体勢を戻すと地面に着地した。

その隙に定は草木に囲まれた道を駆け下りていく。

光彩「あなた何者?一般人を真っ先に狙うなんて正気じゃないみたいだけど」

赤眼「目撃者は殺す。今回は先に消したほうが効率が良かったそれだけだ」

光彩「目的は私でしょ?無関係の人間を巻き込むあたり、気に食わないわ」

すると距離にして2km弱、森の中から凄まじい衝撃音が鳴った。

その時カラスが光彩の肩に止まった。

光彩「――真理有のカラス!――」

真理有の使い魔を介してコンタクトを取る。

真理有「光彩生きてる?」

光彩「ええ無事よさっきの衝撃は真理有?」

真理有「あなたの方にもお客がいるようね。本調子じゃない光彩と合流したいのはやまやまだけれど、こっちも足止めを食らっていてまだ合流出来そうにないわ」

赤眼「お友達かな?」あっという間に光彩の目の前に距離を詰めると呪文を唱えた。「FLAMMA()

一瞬にして炎が光彩を呑み込んだ。

その地面から紋章が浮かび上がると眩い光と共に炎は消失した。

上空に突如表れた魔法陣から赤眼を標的にレーザーが射出され再び距離が空く。

光彩「こっちもちょっと苦戦中。それより余ってる使い魔はまだいる?」

真理有「一応いるけど戦闘は全くできないわよ」

光彩「それでもいい遠夜 定の追跡をお願い。あいつも狙われてる」

真理有「構わないけど、結界が張られているからきっとまだこの場所に居るわよ」

光彩「っ!?いつから?」

真理有「私達が入る前は何もなかったからその後ね。恐らくつけられていたわ私達」

光彩「一先ず使い魔をお願い。私達は早いとここいつらを片付けましょう」

真理有「無理はしないように」

光彩「善処はする」

そうして情報共有が終わり光彩は深呼吸をして…「UNUS(1)」そう唱えると、魔法陣が展開される。

光彩の背中、足下、両腕、更にはその背後に2つ展開された。

赤眼はその光景と魔力の上昇に驚かされた。

今真っ向からやり合っては良くて相打ちだ。

光彩「じゃあ始めましょうか。」

背後の2つの魔法陣から砲弾が放たれた。

交わすので精一杯の赤眼。

距離は詰められない、甘く見過ぎた今回の作戦は失敗だ。

砲弾が赤眼の足下に着弾し後方へ吹き飛ばされた。

その後ろで別の衝撃波によってもう一人マントの人影と合流した。

赤眼「失敗だ今日は退くぞ」

赤眼の仲間「ああ、不十分すぎたな」

光彩「逃げられると思ってるの?」

赤眼「次は互いに万全を期して戦おう」

そう言い残すと真っ黒な炎と共に姿を消した。

光彩「真理有、平気?」

真理有「私は無傷よ。光彩は…無茶をしたわね」呆れていた。

光彩「ちょっとだけ、ねっ?そんなことより遠夜君は?」

真理有「生きてるわ、反応は消えてない」

光彩「案内して」

使い魔を頼りに定の場所へ向かうと道を外れた林の中に、木にもたれている定の姿があった。

真理有「彼、呪いがかかってるわね」

光彩「赤眼の使ってた曲刀に呪いが仕込んであったわ。遠夜君、平気…ではないか」

定「…やぁ月城あいつはどうなった?」

光彩「逃げられたわ。今は安全よ」

定「そうか、ここ一本道だったよな?」

光彩「ちょっと細工されて出られなくなってたわ。ごめんなさい気付けなくて、それより早く移動しないと立てる?」左手を差し出す。

定「ああ、ありがとう」そうして光彩の左手を掴む。

っ!小さな衝撃が走った。

2人の左手が触れたその時、遠夜 定に魔力が宿った。

微弱ではあるが左腕に浮かんだ紋章が何よりの証拠。

彼は魔法術者(Magus)として覚醒した。

魔力の開通の影響で定は意識を失ってしまった。

光彩「これは、、どういうことなの?真理有」

真理有「私も理解が追いついていないわ」と困惑する。

光彩「事情は後で聞きましょう。私の家に運ぶわよ」

真理有「ええ使い魔に運んでもらいましょう。その方が人目も気にせずに済むわ」

光彩「お願い」

急いで光彩の自宅へと向かった。

自宅へ戻ると光彩と真理有は解呪へと取り掛かる。

呪いは傷口から複雑に絡み合いながら徐々に侵蝕していた。

光彩が液体の入った小瓶を取り出し定に飲ませる。

浄化作用のあるマカライトから創り出した魔法術者の特別製。

光彩「始めましょう」

光る手が定の方に触れると呪いが浮かび上がってきた。

紐状に雁字搦めになった呪言を慎重に解いていく。

解呪は20分程で完了した。

光彩「ふぅ~、これで良しっ。後は意識が回復してからね」

真理有「お疲れ様、私達も休憩しましょう」

光彩「かなり消耗しちゃったものね。リビングでコーヒーでも飲みましょ」

2人はリビングへ移動する。

時刻は18時30分、外はすっかり暗くなっていた。

真理有「ねぇさっきの続きだけど彼、何者なのかしら」

光彩「全く見当もつかないわ。突然変異ってあり得る?」

真理有「無くもない話だけど、それなら幼い頃から覚醒しているはずよ」

光彩「やっぱり本人に聞くのが早そうね。はい、ミルク入り」

真理有「ありがとう」

光彩「お腹空かない?」

真理有「そうね」

光彩「デリバリー頼んじゃいますか」

真理有「私はピザが食べたいわ」

光彩「じゃあピザで決まり」

ピザが届くまでの間2人はコーヒー片手にくつろぎながら例の2人組の話題に

光彩「あの赤眼まだ底を見せてなかった。かなりの実力者なはずよ」

真理有「こっちも同じだった。力をセーブする事に気を使ってたわ」

光彩「狙いは()()よね〜」

真理有「この街に来る魔法術者(Magus)の目的なんて一つしかないでしょ」

光彩「月城家の遺産、古代の魔法印」

真理有「あなたはあの魔法に真の継承者として認められるのかしらね」

光彩「さあ、まだ試してもいないわ。それより対策を練らないと」

真理有「潜伏先を探すところからね、相手も相当消耗したはずよ。すぐには仕掛けてこないはず」

話を終わらせるようにインターホンが鳴った。

注文の品が届くと早速2人は食事を始めた。

時間は進み20時を回り、定が目を覚ました。

定「うぅっ、気分が悪い。ここはどこだ?」

おぼつかない足取りで扉の前まで行き廊下に出た。

定「すみませーん誰か居ますか?」

その声を聞きつけて階下から足音がした。

光彩「お目覚めね。気分はどう?」

定「最高だよ、生きてることだけは」

光彩「元気そうね、ジョークが言えるくらいには。リビングに行きましょう」

場面はリビングへ、そこには真理有がソファに座っていた。

光彩「そこ適当に座ってて、水飲む?」

定「ああ、お願いする」

真理有と向かい合うようにして座る。

光彩「はい、水」

定「ありがとう」

光彩「病み上がり早々悪いんだけど、聞きたいことがいくつかあるんだけど良いかしら」

定「それは俺の方だ、俺に聞いても話せることなんて何もないぞ」

光彩「それでも良いわ。こっちもあなたが疑問に思ってることは説明するから」

定「分かった。で、俺に聞きたいことって言うのは?」

光彩「遠夜君は魔法について何を知ってる?」

定「何も知らない。今日、月城が使ってたのがそうなのか?」

光彩「そうよ」

定「ならそれしか俺は知らない」

光彩「じゃああなたの両親も魔法については知らないってことね」

定「どうかな、俺の両親は物心つく前に亡くなったらしいし」

光彩「じゃあ実家とか親戚の家で育ったの?」

定「それも分からないんだ」

光彩「分からないって誰かが分からないってこと?」

定「そうじゃなくて…俺1年ぐらい前事故に遭って病院で目覚める前の記憶が全く無いんだ」

光彩・真理有「っ!?」

光彩「マジで?」

定「マジだ」

遠夜 定に関する過去の情報は喪失していた。



















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