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境界の夜  作者: ハープ
3/6

常途一変 中

遠夜 定(とおや さだめ)。少し細身に見え、身長も170前後といった所か前髪の内側から見え隠れする黒耀の色をした瞳。第一印象は先入観を排して表現すると

「勇往、真面目」という印象だ。

どちらか片方の言葉では彼の印象に当てはめても欠けてしまう気がする。

昨夜はさして気にもしていなかった彼の様相を少女は観察していた。

先入観込みで第一印象を表現するならば暗躍者だろう。

正体不明な17歳の少年は光彩に異なる2つの印象を抱かせた。

光彩「これで次の手は固まったわね。あとはタイミング次第になるか最短で昼休み、安牌を取るなら放課後が妥当よね」答えが出ない思案が終わると同時に授業開始のチャイムが鳴った。

1時限目が終わり光彩は真理有のもとへ。

サプライズの転校生は大人気取り囲まれ中でたじろいでいた。

光彩「真理有チャンスがあるなら昼休みに仕掛けたい所なんだけど、周りの配慮を考えると放課後のほうが確実性が上がる。真理有の意見を聞かせて」

真理有「手段次第だと思うわ。あなたに渡したプレゼントは校内では使うべきではないわね。

だから放課後までは2人で協力して私が判別する。これが最適だと思うけど、()()は最終手段だと思っておいて」

光彩「了解、そのプランで行きましょ。ただ…今日一日あの状況だと隙がなさそうね」

2人の視線が件の転校生へ向けられる。

クラスメイトに圧倒されつつも、少しばかり笑みを零しながら楽しそうに会話をしていたその少年と、視線が合ってしまった。

光彩「ヤバっ!不用意な接触は避けたかったのに気が緩んでたか」と反省しながら隣の友人に視線を移したが無関係を気取り読書を始めていた。

光彩「この裏切り者」心の中で毒づく

定「ちょっとごめん」そう言うと定は席を立ち光彩と真理有の元へ向かってくる。

今更知らんぷりもできないだろう、腹を括ってその場で定を待つ。

2人の元へ来て

定「月城、昨夜は助かったお陰で今日は迷わず登校できたよ。今日から同じクラスでまた世話になる」

光彩「そう、良かったわね分からないことはクラスの人達に教えてもらいなさい」努めて冷静に返す。

定「ああ皆親切で助かるよ。あと月城昼休み時間あるか?」

これは好機かもしれない思いがけず彼の素性を暴けるかもしれない。ただここは慎重に

光彩「要件は?」

定「昨日のお礼の件で約束してただろ。それで昼休み時間あるかなと思って…えーっと隣の子は月城の友達か?」

光彩「ええ、真理有」

スッと本から定に視線を移した。

定「はじめまして遠夜 定(とおや さだめ)です。

よろしく」すると定は右手を差し出した。

この時、光彩と真理有は結論を出せると確信した。

真理有が遠夜 定に触れられれば真偽を確かめられると。

真理有「淵見 真理有(ふちみ まりあ)よ、よろしく」右手を交わす。

女生徒2人に緊張が走る。

ほんの一瞬だが確かに真理有は定に触れた。

定「淵見さんも昼休み良かったら…」

真理有「いえ、私は遠慮するわ」

光彩は真理有の表情を伺うが元々表情の変化が少ない真理有だ。

見ただけでは何も情報が無い。

定「それは残念だまた機会があったらその時にでも。それでどうだろう月城。昼休み…」

その瞬間チャイムが鳴った。

光彩「考えておくわ」

定「分かった。それじゃまた後で」

教師が席に着くよう促す。

気懸かりを残しつつ自分の席へ戻ろうとした最中、光彩へ真理有が呟くように「opaquus(不透明)」と告げた。

曖昧、不透明そう真理有は言った。

触れた時間が短かったのか、それとも高度な魔法によるものなのか前者なら救いもチャンスもまだある。

だが後者なら、魔法術者(Magus)の中でも現代ではトップクラスであろう真理有でさえも欺くとなれば迂闊に手出し出来る相手ではない。

何も確定したわけではないがそれと同時に魔法術者(Magus)の色が濃くなってしまった。

無自覚であろうと要観察対象どころの話ではなくなってしまう。

悩みのタネが新たに芽を出してしまった、そう思いながら思考を切り離し授業へと意識を向けた。

2時限目が終わり光彩は再び真理有のもとへ。

光彩「真理有さっきの続きだけど…」

真理有「抜かりはなかった。結果だけを言うならば力の反応も細工に関しても皆無だった。」

唖然とした光彩。

だが安心もしたさっきまでの苦悩は徒労に終わってくれた様だ。

光彩「じゃあ何で不透明、曖昧なんて表現したのよ」

真理有「()()引っかかったのよ」

光彩「真理有にしては掴みどころのない発言ね」

真理有「私自身もこの表現はどうかと思うけど、あえてこの曖昧さを言葉にするなら…」少し間をおいて考えた末「()()()()()()()かしら」と真理有は言った。

光彩「それって素質はあるけど発現してないってこと?」

真理有は俯きながら歯切れ悪く言った「そうね…そんなところかしら」

光彩「そっか。じゃあこれ以上調べる必要はなさそう…」ね、と言い終わる前に珍しく真理有が言葉を被せてきた。

真理有「待って。危険性がないことは確認できたもう一つ根拠が欲しいわ。私が万が一にもミスをしていたときの保険材料が」

驚きつつも真理有の心情を汲み取って

光彩は「オッケーじゃあ放課後に最終手段を使って私が確かめる。あいつからの誘いは放課後にしてもらえばスムーズに行くと思うわ」

真理有「ええ、お願いするわ。私も有事に備えて近くで見張っておくから」

頼りにしてると言い光彩は自分の席へと戻った。

時刻は12時30分午前中の授業が終わり昼休みの時間。

光彩のもとへ1人の女子生徒がやってきて「今日は天気も良いし屋上にしない?」

そう話すのは「小坂 (こさか)まほ」光彩とは中学からの付き合いだ。

高校生女子の平均身長ぐらいでダークブラウンのショートボブ、癖っ毛を気にしている。

自分の意見はハッキリ言う加えて負けず嫌いだが負けは負けとキッパリ認める性格。

彼女も生徒会に所属している。

光彩「良いわね。あ、その前にちょっとだけ待ってて」

そう伝えた後、光彩は定の座る席へと向かって行く。

光彩「遠夜君、さっきの話だけど放課後でも大丈夫かしら?」

定「ああ、問題ないよ。」

光彩「ありがとう、じゃあ放課後で。」

会話を端的に終わらせまほの元へ戻ると光彩は「お待たせ〜行きましょっか」と教室をあとにしようとした。

直後に定の周りに人が集まってきた。大人数でちょっとした親睦会をする様だ。

その集団の一人の男子が大声で「月城会長と小坂副会長も一緒にどうです?」

光彩「先約があるから遠慮しておくわ」というと光彩とまほは屋上へ向かった。

つれないなーと先の男子生徒が言う。

原田 啓介(はらだ けいすけ)」彼はクラスのムードメーカー的存在でクラスの総意はバカではあるが悪いやつではないというのが総意だ。髪を長く伸ばしており一見チャラい。

高身長で運動神経は抜群に良く、スポーツ行事となれば頼りになる。

誰とでもすぐに打ち解けられるのは彼の才能だろう。

真理有も席を立ちどこかへ向かう。

休み時間は基本一人が好きで誘いを断っている。

場面は屋上へ。

早速2人が昼食をとっていた。

まほ「なんか気に食わないことがあったような顔してるわね」

光彩「悪かったわね生まれつきよ」と皮肉で返す。

まほ「付き合いが長いから分かるけど今のあんた普段より酷いわよ」

光彩「はぁ~、分かる〜?最近災難続きでさ、私の運命を呪ってやりたいわ〜」とため息混じりに話す。

まほ「まあ、昔から面倒事は付き物だったものね光彩は」

光彩「前世の私は相当やらかしてたんだろうなあ」

まほ「へぇー意外ね前世とか信じるタイプだったんだ」

光彩「ここまで来たらそういうスピリチュアルなものにこじつけたくもなるわよ」

まほ「それもそうねー。あ、そうそうあの転校生の事で一宮先生が、せっかく生徒会のメンバーが3人もいるクラスなんだから困ってたりしてても、してなくてもフォローしてあげてねって」

光彩「そういえば向井殿(むかいど)のやつ昼休みの時姿を見てないわね」

まほ「どうせ生徒会室に居るんじゃない?あいつお昼休みはいつもあそこで過ごしてるから」

光彩「まだ休み時間も残ってるし話しに行くか」

昼食を終え2人は向井殿(むかいど)が居るであろう生徒会室へと向かった。

コンッコンッと軽いノックの後返事をする間も無く生徒会室の扉が開けられた。

光彩「向井殿居る〜?」

向井殿「居るって当を付けてたんならせめて返事をする時間くらい与えてくれないか月城」

光彩「応答を待つより目視したほうが手っ取り早いでしょ」

呆れた表情をした彼は「向井殿 一(むかいど はじめ)」彼も生徒会の副会長で光彩とはこの学校で1年から同じクラスだった。

背丈は定よりやや高めでパッと見、金髪でただの不良に見える悪印象ではあるがその実ハイスペックなのだ。

成績はトップから真理有、まほに次いで(はじめ)の3強。

ただの優等生と思われるのが彼的には気に食わないらしく、見た目だけでもと抗った結果が現在である。

一「それで2人揃ってどうしたんだ?」

まほ「一宮先生から困ってたりしたら転校生のフォロー3人で頼むって伝えに」

一「遠夜のことか、それなら俺らが出る幕はないかもな。クラスの奴ら面倒見が良いし俺も少し話しに加わったが、打ち解けてる雰囲気だったし心配ないだろ」

まほ「確かに、あの調子なら何も問題はなさそうよね」

光彩はその言葉には同意し損ねた。

放課後の事が頭の片隅に表れたその時予鈴が光彩の思考を遮った。

一「とっ、お時間だ。戻ろうぜ」光彩が「そうね」と返すと3人は生徒会室をあとにした。

席へ戻ると程なくして授業が始まった

そして時間は進み続け、終業の鐘が鳴り響いた。









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