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リンの言葉

126-130

作者: リン

126最後の晩餐


明日は明日の風が吹く

今日は今日で風が凪ぐ

昨日は昨日で散歩日和

犬が吠え

猫が餌をねだり

ひとが人として

生きていないで

生活を捌き

活魚が死んでいる

皿が割れる音がして

テーブルに皿は揃い

コップの数が足りてない

誰かがいて誰かがいない

イエスなキリストの

最後の晩餐だ

伊勢海老のお造りを

どうぞ

板前が奮った手料理だ

食え食え




127トリミング


微振動する尻尾の毛の

そのまた先で直立する毛の

そのまた先でねじれる毛の

そのまた先でふざける二又の毛の

そのまた先で真面目にトリミングされる毛の

主の犬は飼い主の方をきょとんと見つめる

飼い主はファッション誌に夢中で

トリミングする店員は忙しく

犬は犬であることを強いられて

毛並みがきれいになる

そうして犬は何かを失っている

顔をしている




128いっこく堂


いっこく堂が

ふつうにしゃべって

何か面白いことを言って

アナウンサーの声が

口からズレて

遅れてやってきて

つまらないことを言って

どちらが良いか悪いかは

サイコロを振って決めれば良くて

その前にルビコン川を渡っているカエサルの足

いっこく堂が遅れてやってくる

それは歴史的事実で詩的パイの実




129ダイエット


空が空から降ってきて

少女が少女から大人になって

少年が大人から狡くなって

太陽が月になって

夜が昼になって

時計の針が図太くなって

時計の数字がやせ細り

ダイエットの広告に真実を求めるように

真実は事実に愛を求めている

嘘は美しくあろうともがいている




130コーヒー


コーヒー豆を粉砕して

粉状にしてしまった

もうこれではカタチを思い返すことすらできない

コーヒーを飲む


コーヒー豆の香り

粉状にしてばら撒いてしまった

もうこれでは匂いを続けることすらできない

コーヒーを飲む


クールでホットな一日ボタン

自販機で連打する

出てくるのは牛乳

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