姉のこと
姉のこと
私のこれまでの人生に多大な影響を与えた人物と言えば祖父母、両親、弟、数少ない友達、夫と子供などが当たり前のように挙げられるが、中でも姉は群を抜いている。
良くも悪くもダントツだと思う。
2つ違いの姉はいつも私より色々な事に恵まれた人だった。
友達の数、祖父母や両親からの愛情、水泳やピアノの才能、エトセトラ。
特に陸上の才能は兄弟の中でも一番優れていて、元アスリートの両親の期待を一身に受け高校では陸上で有名な私立高校に進学したりしている。
そんな彼女より私が唯一勝てる事といったら行動力だと思っていた。
大学は北海道に単身渡り、卒業してからは小さい頃の夢だったイギリスに渡って数年住み続けた。日常の細々したことも私の方が行動力があると思っていたし、それを誇りにすらしていたのだが、それを大きく裏切る出来事があったのは今から13年前の事だった。
姉が、駆け落ちをした。
しかもお腹に子供がいた。
あんなに何でも話していた仲だったのに。小さい頃から仲が良くて、姉のことが大好きだったのに。
どうしてあんなブサイクで、ちんちくりんの男のために私たち家族を裏切れるのか、不思議でならなかった。
しかもその行動力は私には絶対無いのだ。
負けだ。私の負けだ。やっぱり姉は私を遥かに凌駕する存在だったんだ。
そう痛感した。
しかも数年後その結婚は破綻した。
子供を二人連れて普通に実家に舞い戻った姉はものすごく自由人で、自由すぎて周りに引かれても何ともない、鉄の心臓を持っているらしい。
真面目に働いている私たちを尻目に好き勝手(本人はそう思っていないらしいが)やってる姉を見ていると私はやっぱりこの人には勝てないな、と思う。
私は駆け落ちは出来ないし、離婚も出来ない。
離婚した後実家に戻ることも出来ないだろう。
たまに彼女の傍若無人な生き方を羨ましいと思う。
彼女のムカつくほどの自由な発想とバイタリティ。それが今回のEthan招致に大きく貢献していることは否めないだろう。