表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

4/15

ep.1

ep.1

 「はぁ……はぁ……つ、疲れました」


転生して4年が経ったある朝、俺は額から汗を流しながら呻いている。

 俺は親父に言われた通りに腹筋、腕立て、スクワット、各15セットを終わらせた。いくら身体能力が高いと言われる無属性(マダ)の民だからって4歳児にこの筋トレはきついよ……。天才、天才、って言っておきながら筋肉の英才教育ですか? 家庭教師とかじゃないんですか!!


 あれか、無属性(マダ)の民たちは身体能力が高い代わりに脳筋なのか? あれ、って事は俺も脳筋に……


「あなた~。今日はそのぐらいにしてあげたら? アレンはそんなに体の丈夫な子じゃないんだし。それに今日は中央区に連れていってあげる約束をしたんでしょう?」


 俺が悲しい現実を自覚しかけたところでママンが脳筋親父を止めてくれた。やっぱり白の民のママンは脳筋なんかじゃないんだね! 白の民は傷を癒やす白魔法を操るだけあって、俺にもママンは癒やしの存在だ。


「ん? あぁそうだな。これから中央区に行くのにへとへとじゃ可哀想か」


 ニッコリ笑顔。


 いや、気づけよ。まったく、イケメンスマイルが眩しいぜ。


 クリスから受け取ったタオルで汗を拭きとり、お昼ごはんを食べる為に食卓に着いた。

 

 長方形のテーブルに足の着いたイス、正に洋風な食卓だ。今日のお昼はシンプルな小麦のパンに、これまたシンプルなポトフの様なもの。なぜかこの世界の食べ物は前世に酷似している、なぜだかわからないが味も見た目も全く一緒なものがあるのだ。


 もちろんこの世界にしかないものもある、例えば夕食の定番のホーンラビットのモモ肉とか。図鑑で見るとその名の通り角の生えたウサギだった、ド○クエかよ。


「あ、そういえばお父さん。王都の中央区にはどうやっていくんですか?」


 この世界の公共の乗り物っていったら馬車だろうか……? もしかしたら未知なる魔法的な乗り物だったりして! 魔法の絨毯的な!?


「乗合馬車が中央区まで出てるんだよ。それに乗って行くんだ」


え~、普通過ぎてつまらない。俺の予想以上にこの世界は普通だ。魔法のある世界と言っても、魔法が直接生活に影響する事はそこまで多くない。特に俺がいるこのルミナリー王国では。


「食い終わったら行くぞ。暗くなる前に帰らなきゃな」


「あ、はい!」


 このポトフ旨っ! 見かけによらず塩加減が絶妙で優しい味わいだ。


 ママン! グッジョブ!


 俺はクリスに心の中でサムズアップした。朝の筋トレをしてクリスが筋肉英才教育親父を止めて朝ご飯を食べる。これが今の俺の日課だ。そんなこんなでこの世界を4年ほど過ごしたわけだ。この世界の言葉も問題なく喋れるようになり、疑問に思ってた事は両親から色々と聞いた。

 話を聞いたり、本を読んだりして、自分の今の状況はなんとなく理解している。


 この、エリュシオンという世界には【ベルメリア帝国】【フラーメン共和国】【ネロ王国】【アレクシオン神聖皇国】【ルミナリー王国】という、主要な五大国家がある。




 中でも【ベルメリア帝国】は近年軍事力が拡大しており、他の国に対して帝国主義を掲げている危ない国だ。

 ちょこちょこ戦争を仕掛けては領土を奪ったり、有益な資源の利権を奪ったりなどの、侵略行為を行っている。


 また、たくさんの獣人族を奴隷にしているらしい。猫耳、犬耳を奴隷にするなんて!全くけしからん!


 五大国家の中で【アレクシオン神聖皇国】と【ルミナリー王国】は中立国家だ。

 ちなみに、俺が今住んでいる国【ルミナリー王国】の人たちは無属性(マダ)の民と呼ばれているらしい。無属性(マダ)の民は身体能力が高い特別な人種で、唯一魔法を使う事ができないという特徴があるらしい……。


魔法を使う事ができないという特徴があるらしい……。


そう、俺は魔法を使う事ができない……。


ああああああああぁぁぁぁ!!! ほんと!! どういう事だよ!? あの女神! ポテンシャルが高い身体だぁ?魔法使えないんですけど! 既に縛りプレイなんですけど!? もし次会う事があったら一言、二言文句を言ってやる!! おっぱい大きいですね! って大声で言ってやる!!


しかも、無属性(マダ)の民は魔法が使えない事から他四大国家から差別を受ける事もある…… 。いや、ほんとハードモードなんですけど?


 にしても特異点なぁ……。どう考えてもこの状況から何か大きな事なんて出来る気がしない。仕方ないから今は出来る限りの知識を詰め込み、地道に鍛錬を続けるぐらいしかないだろう。ただでさえ魔法が使えない身なのだ、戦うには自分の身体を使うしかない。幸いディノスはそれなりの戦士のようだし、冒険者として食ってける程度にはなれるはずだ。


 などと、今の自分の状況や将来について絶望している内に、王都中央区(ロワ・セントラル)行きの乗合馬車のところまで着いた。


 俺たち以外にもかなりの人が王都中央区(ロワ・セントラル)に行くみたいだ、結構たくさんの人が並んでいる。


「あれが乗合馬車だ、長方形の大きな車を二頭の馬が引っ張るんだ。一度に八人も乗れるんだよ。あとな、馬車の中では静かにしてなきゃ駄目だぞ? ま、お前にそんな心配はいらないか。俺の息子は随分と出来の良い息子を作ったもんだ」


 親父が笑いながら随分と下ネタなことを言っている。

 まったく、4歳児だからって意味が分かんないとでも思ったのか、俺の精神年齢は17歳という下ネタトークが一番盛り上がる年頃だぞ。

 下ネタ親父には反撃だ。


「……お父さんが本当にお父さんとは限らないかもしれませんよ?」


「!? アレン、お前……。いや、なんでもない……」


 4歳児が下ネタに反応したことに親父は驚愕していた。それよりも俺が結構早熟な子供である事を思い出して少しだけ不安に思いはじめてしまったようだ。ざまぁみろ。

まぁ大丈夫だよ、クリスの様子を見ればディノスが父親なのは間違いないさ。ウザいくらいラブラブなんだから。

 そんなくだらないやり取りを親父としてる内に、俺たちの順番が来る。

 中央区行きの乗合馬車は利用者が多い分、結構な便が出てるみたいだ。


 乗合馬車に乗り込むと、長椅子が電車の椅子のように設置してある。左右の長椅子は4人ずつの席みたいだ。

 俺が親父の隣に座ると、馬車はゆっくりと走りだした。

 俺は靴を脱ぎ、電車の中でよく幼稚園児がやってるような、椅子に膝立ちをして窓を眺めた。

 実際に見ると、王都の公道がいかに整備されているのかが分かる。幅40m程の石畳は凸凹とした起伏が余りなく歩きやすい。

 その大きな公道の真ん中には二対のレールのような溝がある、おそらく乗合馬車の車輪に合わせているものだろう。

 すこし、身を乗り出して馬車の向かっている方角に顔を向けると、大きなシルエットが見えた。

 あれはなんなんだろう、城のようにもみえるが建造物にしてはやけにでかい。

 そのシルエットが大きくなるごとに公道にいる人影も多くなっていく。

 しばらくして、王都の壁門をくぐり王都の中へ入ると、街の公道沿いには多くの店が並んで賑わっていた。

 飲食店、喫茶店、服の仕立て屋、人形屋、楽器屋、本屋……、など色々なお店が軒を連ねている。

 しかも、どの建物も建築様式はゴシックかロマネスクといった中世ヨーロッパのものと酷似していて、まるでヨーロッパ観光に来たみたいだ。

 文化レベルも中世ヨーロッパのそれと変わらないのだろうか?

 実にいい、実にファンタジーな感じでグッドである。

 そして、俄然興味が沸いたのは武器屋と防具屋だ。いつか連れていってほしいな。


「アレン、どうだ初めての中央区は? お前にはいろいろ見せたいものがあるんだ。まずは、この国の象徴でもある王城からだな」


なぜディノスがドヤ顔をするのかは謎だが、確かに中央区は見た事のない物で溢れていた。


「王城ですか?それは楽しみです!まだ絵本でしかみたことないので」


 しかも王城とか最高じゃないか。男の子にとって城っていうのはロマンだ。甲冑に身を包んだ兵士とか、煌びやかに着飾っている近衛兵とかが見れるのかな?



 “キャッスル・ロワ・ルミナリア前~キャッスル・ロワ・ルミナリア前でございます。お降りの際は荷物籠のお荷物をお忘れなきようお願いいたします”



 なんか聞いたことのあるようなアナウンスだが気にしないでおこう。降りると標識のようなものが立ててあり、そこにキャッスル・ロワ・ルミナリア前と書かれている。既視感、いや、まんまバスだな。

 その後すぐに馬車は去っていったが、馬車が去って開けた俺の視界には白い巨城がそびえ立っていた。


「わぁ……、すごいですね…………」


 これは俺の素直な感想だ。正直に驚いた。乗合馬車に乗っていた際に、遠くに見えていたシルエットが城なのかもしれないとは思っていたが、間近に見るとものすごい迫力だ。

 白いレンガで出来たその白い城は、真ん中の大きな尖塔を中心に行くつかの尖塔が連なっている。

 一番高い真ん中の尖塔は100mはある、いや、それ以上の大きさだろう。

 様々な装飾が施された城はとても綺麗で、ゴシック建築を思わせる、まるで某魔法使いの映画に出てくる魔法学校さながらだ。

 こんなにものを人力で作りあげるなんてできるのだろうか。


「どうだ? すごいだろう。この城はな、俺たち無属性(マダ)の民の力の象徴なんだ。無属性(マダ)の民っていうのは魔法はつかえないけど力が強いだろう? 初代の王様はな、俺たち無属性(マダ)の民の力を他国にしらしめるためにこの巨城建設という国家プロジェクトを始めたんだ。城築っていうのは魔法使い、無属性(マダ)の民などに関わらず多くの作業を人力で行うもの。ルミナリーの土地にある山を切り崩して、国民総出でこの城を作ったんだ。ちなみに父さんは22年前の改修工事にも手伝ったんだぞ」


 親父が得意げに言う。だが、それほどこの城は無属性(マダ)の民たちにとっての誇りなのだろう。

 それにしても人力でここまでのものを作り上げるのか。無属性(マダ)の民の一人である俺も少し誇らしい気持ちになった。魔法使えないし被差別人種だけど意外とすごいかもしれない。


「よし! 城の中に入るか。中にも見せたいものがあるんだ」


 まじですか! 城の中まで入れるんですか! テンション上がるなぁ。一体中はどうなってるんだろうか。


 俺はスキップしそうな足取りで親父の後をちょこちょことついて行った。

誤字、脱字、ここ変じゃない?ってとこがありましたらコメントくださると嬉しいです!

感想もよろしければ……! めちゃめちゃ励みになります!!


明日も同じ時間ぐらいに投稿します!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 非属性はいろいろな意味で特別だと思います。 •それは私たちの体、感覚を強化し、「気」のように私たちの自己治癒を強化するのに役立ちます。 •使用したい魔法に応じてどの要素でもかまいませんので…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ