その名はエリュシオン
ここは地球にとても酷似してはいるが地球ではない何処かの世界。
名はエリュシオンと言う。
地球にはないマナと呼ばれる魔素がこの世界にはあり、それがこの世界のエネルギー、物理法則の全てである。
原子、分子という概念ではなく、マナという概念。
自然の理はマナによって説明されるのだ。
例えば水という物質についてはどうだろうか。
私たちの世界で水は水素原子と酸素原子が2:1で結合することによって水という分子になるといったように、原子、分子の動きで説明できる。
しかしこの世界ではさっきも言ったように“マナ”で説明できる。
私のような科学者にはにわかに信じられないことだが、この“マナ”という物質、原子でもなく分子でもない。
では、なにか? というと“万物の材料”といったところだ。
わたしも最初は納得がいかなかったが、いろいろ調べていくうちに納得せざるを得なかった。
はっきり言ってしまうと、この世界には“神”と言えるものが確かに存在する。
科学者の私としてはまったく信じられないことだった。
その創造主である“神”が、マナを自在に組み合わせ、とても複雑な格子状の構造、魔素構造をつくるのだ。
そして、その魔素構造の構造の違いによってマナは火、空気、水、等々の数えたらキリがないほどの性質を身に着ける。
はじめ、マナというのは純粋なエネルギーで、通常私たちのような生き物には作用しない。
しかし、“神”の操作で、初めて私たちに直接作用するものへと変わるのだ。
要するに、水の魔素構造を知っていて、その魔素構造どうりにマナを操作することができれば、水は作れる。
話は変わるが、この世界では私たちの世界の聖書の物語のように、人間は“神”によって、“神”に似せられて作られた。
なので、人間はこの世界の生物の中で唯一、マナというものを感じ、魔素構造を知りえる能力がある。
しかし、あくまで能力があるだけだ。人類は魔素構造というものに辿り着くまでにおよそ150年の時をかけ、研究する必要があった。
それから、今日に至るまでの100年間、人々はその魔素構造を解明するべく研究を重ねた。
ある国は火の魔素構造を、ある国は水の魔素構造を、ほかにも風、精、の魔素構造を見つける国々がでてくる。
それらの国は、見つけた自国の魔素構造を使い発展、また文化を形成していった。また、魔素構造の操作が生まれつきできない者たちもいたが、そうした人たちも集まり合って、独自の文化を形成していった
この世界ではそれらの計五つの大国が世を支配している。
奇妙にもこの世界に行き付いてしまった私は、この手記だけでも残すとしよう。
~著者:ロナルド・クレジミール~ 【同郷に向けるエリュシオンの考察と見解】から
魔素構造何回言うねん……