⭕ 海の家で、かくれんぼ 7
小さいのはキィちゃんで、背の高いのはお兄ちゃん,お姉さん達かも知れない。
「 ──お兄ちゃん… 」
「 キィちゃん!
どうしたの、血塗れだよ!
キィちゃんもミィちゃん達みたいに酷い事されたの?! 」
「 ううん…されてないよ。
アタシが酷い事をしてあげたの…クフフフ… 」
「 キィちゃん…? 」
「 お兄ちゃん…キィに付き合ってくれて有り難う… 」
「 えっ? 」
「 キィはね……ずっと…待ってたの…。
キィの歌に気付いてくれる誰かをね…ずっと待ってたの… 」
「 キィちゃん…? 」
「 有り難う、お兄ちゃん。
キィの歌に気付いてくれて。
有り難う、お兄ちゃん。
ミィを見付けてくれて。
これで…かくれんぼを終わらせられる…。
やっと……終わらせられる…。
…………現実ではミィを見付けられなかった…助けられなかった……。
ずっと…かくれんぼを終わらせられなかった…。
キィが…キィが……ミィを見付けた時には…ミィは干からびて死んでたから…… 」
「 キィちゃん… 」
「 だから──、有り難うね! 」
「 キィ様……会えて嬉しかったです…。
…………御免なさい…ハゥが始めたかくれんぼを止められなくて……。
あんな事になるなんて…… 」
「 もう、終わったんだから……泣かないで… 」
「 お兄ちゃんもお姉ちゃんも…キィと一緒に敵討ちしてくれたんだよ。
海には帰れなくなっちゃったけど……人間に殺された家族と仲間の敵討ちは出来たから… 」
「 …………あっ、もしかして、未解決事件のまま迷宮入りしている海の家の惨殺事件の犯人って── 」
「 クフフフ……アハハハハ……そうだよぉ…お兄ちゃん!
キィがお兄ちゃんとお姉ちゃん達と一緒に殺したんだよぉ!!
この海の怪奇はねぇ、キィとお兄ちゃん,お姉ちゃんで起こしてるんだよぉ!! 」
「 キィちゃん……。
そっか……怪奇の原因はキィちゃん達──いや、違うね。
キィちゃん達は被害者だよね。
悪いのは欲深くて悪意に満ちた人間なんだ。
人間が…ミィちゃん達を連れ去らなければ、海で怪奇は起きなかったんだ。
怪奇の原因は人間が作ったんだ…。
キィちゃん達は悪くないよ。
キィちゃん達は、何も悪くない… 」
「 ……お兄ちゃん……(////)
お兄ちゃんはキィ達を怒らないの?
キィ達を恨んだり、憎んだりしないの!? 」
「 ……うん、しない。
僕にはキィちゃん達に怒ったり,恨んだり,憎んだり出来ないよ。
キィちゃん達のした事を責めたりも出来ない。
ミィちゃんから聞いたんだ。
岩場で捕まった後に、海の家でミィちゃん達がどんな目に遭わされたのか…。
だからね、僕はキィちゃんとお兄さん,お姉さん達が大切な家族や仲間の為に敵討ちしないと気が済まない気持ちが全く分からないわけじゃないんだ…。
……僕にも大切な人が居るから……大切な人がミィちゃん達みたいに酷い目に遭わされたら、僕だって同じぐらい許せないよ…。
例え僕の人生を棒に振る事になったとしても、きっと何十年…時間が掛かったって全員に制裁を与えるよ。
きっと簡単になんて殺さない。
後悔して謝ったって、きっと許さない……。
それだけ大切な人だから…(////)
僕は人間だから…直ぐに復讐したり敵討ちをしたりは出来ないんだ…。
だからね、ミィちゃん達の敵討ちを直ぐに出来たキィちゃん達を僕は羨ましく思うんだよ。
…………こんな事…本当は怪異に言っちゃいけないんだろうけど…… 」
「 …………お兄ちゃんの大切な人って……、あの化け物なの? 」
「 えっ…化け物?? 」
「 人間の皮を被った異形だよ…。
お兄ちゃん……お兄ちゃんだけは見逃してあげる 」
「 えっ? 」
「 あの人間の皮を被った異形に消されるのは嫌だし……、何よりも…キィが見付けれなかったミィを見付けてくれたから、見逃してあげる 」
「 キィちゃん… 」
「 だけど……それ以外は駄目だよ…。
お兄ちゃんにこれをあげる!
キィの鱗とムィの鱗だよ。
ミィの鱗と合わせたら──ほら、綺麗な鱗になった。
海で怪異に会ったら、この鱗を見せてあげて。
お兄ちゃんだけは海で起きる怪奇から助けてあげる 」
「 キィちゃん… 」
「 終わらせられなかったかくれんぼを終わらせれた御礼だよ 」
「 有り難う…… 」
「 ──じゃあ、お別れだね!
あの階段を上がって、海岸に着いたら帰れるよ 」
僕は抱っこしていたミィちゃんをキィちゃんのお兄さんに手渡した。
「 お兄ちゃん…キィ様を許してね… 」
ミィちゃんは悲しそうな顔をしている。
キィちゃん達を待っている間、ミィちゃんの両目は人間達に抉り取られてしまって無い事を教えてもらった…。
「 ミィちゃん… 」
僕はミィちゃんの弱々しい手をキュッと握った。
本当のミィちゃんは、もう死んでるんだ。
80年も前に…心無い人間達に殺されて……干からびた状態でキィちゃんに見付けられたんだ……。
じゃあ、此処に…僕の目の前に居て、僕が握っている手の主は一体誰なんだろう…。
人間の身勝手な欲望の為に殺されたミィちゃんの無念が……。
…………僕はミィちゃんの手を離すと、キィちゃんとミィちゃんに手を振ってから、階段へ向かって走った。
岩場の近くにある階段を上がって、海岸へ着くと強い風が吹いた。
風と一緒に子供の笑い声が聞こえた気がした。
……………………あつい…。
蝉の鳴き声が聞こえる……。
「 ………………うぅ……ん…… 」
「 あっ、起きたのね 」
「 …………有明古さん?? 」
「 御早う、ユタク君。
グッスリだったわねぇ。
ふふふっ……涎が垂れてるわよ〜〜。
どんな夢を見てたの〜〜?
御馳走を大食いしてる夢かしら? 」
「 ち──違いますよぉ!!
何言うんですか!
僕は有明古さんと違って食いしん坊じゃないですからね!(////)」
僕は右手の浴衣の袖で慌てて涎を拭った。
「 人の皮を被った異形だよ 」って──、夢の中で誰かに言われた気がした。
だけど誰なのかは思い出せない…。
何か夢を見ていたのは確かなんだけどな……。
「 ユタクくん、朝食前に朝風呂に入らない? 」
「 朝風呂ですか? 」
「 だって…昨夜は────ね? 」
「 っ──(////)
そっそうですねっ(////)
暑かったですもんね(////)
汗…掻いてますもんねっ(////)」
僕は慌てて布団から出て立ち上がった。
「 ふふふ♥
若い子って元気よね? 」
◎ 訂正しました。
怪奇 ─→ 怪異