⭕ 海の家で、かくれんぼ 6
鍵の掛かっている小さな扉を難なく壊したキィちゃんと一緒に、中に閉じ込められていたムィちゃん(?)を助け出した。
「 良かったね、キィちゃん。
ムィちゃんが見付かって… 」
「 違う…… 」
「 え?
違うの?
この子はムィちゃんじゃないのかい? 」
「 ……㍊㌢㌧㌍㌻…… 」
ムィちゃんじゃなかった女の子は弱々しくて消え去りそうな声で何かをキィちゃんに伝えているみたいだ。
懸命に耳を傾けて女の子の言葉を聞いているキィちゃんの顔色が変わっていく。
まるで鬼のような形相だ。
「 ……キィちゃん…? 」
「 ……お兄ちゃん…、この子をお願い…。
この子はムィちゃんの友達なの…。
……ミィちゃんを連れて此処から出て…… 」
「 キィちゃん…? 」
怒りで我を忘れそうなキィちゃんは必死に自分を押さえ込んでいるみたいだ。
僕はミィちゃんを抱き上げると海の家から急いで出る事にした。
廊下に出たら、廊下を走って、階段を下りて、店内を走り抜けて、壊された勝手口から海の家を出た。
海の家から離れる為に海の方に走った。
途中で海の家の方から聞いた事のない咆哮が聞こえて来た。
激しい迄の怒りと殺意に満ちた咆哮だったと思う。
僕の姿が見えなかったお蔭で、僕はミィちゃんを連れて無事に海の家から逃げ切れたけど、海の家に残ったキィちゃんは大丈夫なのかな?
それに……海の家にキィちゃんのお兄さんとお姉さんは来て居たのかな?
逃げるのに必死だったから覚えていない。
「 ミィちゃん……。
ミィちゃんはムィちゃんと一緒に連れて行かれたの? 」
「 ……㌔㌣㌘㌃…… 」
「 …………あはは…何を言ってるのか分からないや…。
キィちゃんみたいに言葉が分かったら良かったのになぁ… 」
「 ……㍊㍗㌦㌫…… 」
「 えっ? 」
ミィちゃんは震える手で僕に鱗を差し出してくれる。
「 鱗…くれるの? 」
僕はミィちゃんが必死に渡そうとしてくれている鱗を受け取った。
「 有り難う、ミィちゃん。
貰っても良いの? 」
「 ……見付けてくれて…有り難う……お兄ちゃん… 」
「 声が聞こえた!
ミィちゃんの言葉が分かるよ! 」
「 ……助けてくれた…お礼だよ… 」
「 ミィちゃんを助けたのはキィちゃんだよ。
僕には扉を壊せなかったからね… 」
「 お家に帰れる… 」
「 うん、そうだね。
キィちゃんとお兄さんとお姉さん達と一緒に帰れるよ 」
「 …………帰れないよ… 」
「 えっ? 」
「 キィ様は……海には帰れないよ… 」
「 えっ?
キィちゃんが帰れないって…どうして?? 」
「 …………人魚は…人間を喰べたら海には帰れないの… 」
「 えっ?? 」
「 憎悪で穢れた人喰い人魚は異形の存在になってしまうの…。
キィ様は…… 」
「 人食い人魚??
キィちゃんが人間を食べる?? 」
「 …………ムィ様はもう…生きていません… 」
「 えっ?? 」
「 手遅れでした…。
岩場でかくれんぼなんてしなければ…こんな事にはならなかったのに…… 」
ミィちゃんは、キィちゃんやムィちゃんと一緒に岩場でかくれんぼをしていた最中に、偶然にも人間に見付かってしまったそうです。
人間に捕まったのはミィちゃんはとムィちゃんだけじゃなくて、他にも何人か居たみたいです。
人間に捕まってしまったミィちゃん達は、海の家に運ばれたそうです。
その時に起点を利かせたムィちゃんが自身の鱗を砂浜へ落としてくれたそうです。
浜辺で見付けた鱗は、キィちゃんやお兄さん,お姉さん達へ残したメッセージだったんだ。
海の家に着くと、目の前で1人の人魚が刃物を持った人間に生きたまま捌かれていく様子を見させたられたそうです。
乗せられた台から大量の血が流れ出ている中、下半身の鱗は1つ残らず刃物で削ぎ取られてしまったそうです。
上半身の身体の肉も刃物で削ぎ取られて、台の上に並べられたそうです。
両目に刃物を入れられて両目を抉り抜かれた後、皮膚から剥ぎ取られた髪の毛も台の上に並べられたそうです。
顔の肉も削ぎ取られて、骨は鍋の中に入れられたそうです。
残った下半身も捌かれて臓物,子宮,卵巣を取り出されて、仲間は解体されてしまったそうです。
剥ぎ取られた髪の毛や削ぎ取られた鱗や眼球,肉,臓物や子宮,卵巣がどうなったのかはミィちゃん達には分からないそうです。
最初に殺されてしまった1人は、ミィちゃん達が抵抗しないように見せしめに殺されてしまったのかも知れない。
ミィちゃん達は狭い部屋に押し込められて、扉が開く度に捕まった子達が連れ出されて行ったきり、戻って来なかったそうです。
人数が減った頃、扉が開いた瞬間にムィちゃんが人間に抵抗をして、1回だけ部屋から逃げ出す事が出来たそうです。
だけど階段を駆け下りた所で捕まってしまい、ムィちゃんは部屋から逃げた罰として人間から酷い拷問を受けたそうです。
ムィちゃんはミィちゃん達の目の前で、人間の雄達から何十回も犯された倒された挙げ句に排泄物を無理矢理に口の中へ押し込まれながら死んでしまったそうです。
とうとう最後の1人になってしまったミィちゃんは、1度に殺される事はなく必要な時だけ刃物で削がれたりしていたそうです。
酷い話だよ…。
どうして人間は其処まで残酷になれるんだろう……。
言葉が通じないから余計に酷い事も平気で出来てしまうんだろうか……。
「 ミィちゃん達は…長い間、恐怖い思いを沢山したんだね…。
人間が酷い事を沢山して、ご── 」
「 駄目だよ、お兄ちゃん。
お兄ちゃんは何も悪くないの。
お兄ちゃんが謝るのは駄目なの 」
「 ミィちゃん… 」
「 お兄ちゃん…自分から怪異に謝ったりしたら駄目だよ 」
「 えっ…… 」
「 人間にも…良い人と悪い人が居るのは知ってるよ。
ミィ達が出会ったのは悪い人間だった…それだけ…… 」
「 ミィちゃん… 」
「 あの中にもね…良い人が居たんだよ…。
ミィをね…助けようとしてくれた人間も居たの…。
海に帰そうとしてくれたの… 」
「 そうだったんだ… 」
「 うん……でもね…ミィの目の前で殺されちゃったの…。
ミィに優しくしてくれたから……ミィを逃がそうとしてくれたから……。
人間の悪い人達は……、同族殺しをしても何とも思わないんだね…。
恐怖かったよ… 」
「 ミィちゃん… 」
「 そんな顔しないで…お兄ちゃん… 」
ミィちゃんと話していると海の家から何人か出て来たみたいだ。
◎ 訂正しました。
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