⭕ 海の家で、かくれんぼ 4
「 今さっき居た海の家が殺害現場だったのよ 」
「 えっ……嘘…ですよね??
あの海の家で…80年前に…惨殺事件が起きたんですか??
じゃあ…お金持ちにリホームされた海の家って…… 」
「 もぅ〜〜全部言わないと分からないの? 」
「 …………早く旅館へ戻りましょう!!
あの海の家に近付くの止めましょうよ〜〜 」
「 何を弱気な事を言ってんの、ユタク君。
鬼門と霊道が重なってる我が家で暮らしといて怖いなんて、今更でしょう? 」
「 だって…あの家では怪奇は起きないじゃないですか!
不気味ですけど… 」
「 鬼狐が居るもの。
大丈夫よ〜〜、海の家にだって鬼狐が着いて来てくれるんだから何も起きないわよ 」
「 それでも嫌です! 」
「 ユタク君ってば、我が儘ねぇ… 」
「 我が儘と違いますからね!(////)」
もぅ……、鬼狐が離れちゃったわけだし、あの海の家は大丈夫なのかな?
あれだけ陰陽師が居るんだから大丈夫そうな気はするけど……。
「 有明古さん、陰陽師の皆さんは大丈夫なんですか?
怪奇に襲われたりしないですか? 」
「 大丈夫なんじゃないかしら?
プロの陰陽師だし、去年も一昨年もその前だって何も起きてないのよ。
仮に怪奇が起きたって、プロの陰陽師なんだから対処ぐらい出来るわよ 」
「 そう…ですよね…。
現役の陰陽師達…なんですもんね… 」
ザ……ザザーン……。
ザザーン…ザ…ザーン……。
ザザザーーン……ザザーン……。
耳元で波の音がする。
…………何だろう??
何かが……聞こえる??
波の音が大きくて、ハッキリとは聞こえないけど……か細くて…消え去りそうな小さな声が確かに聞こえる……。
何だろう……歌……かな??
気が付いたら僕は海岸に居た。
海岸からは海が見えているけど、空は酷い曇天で……、今にも雨が降り出して来そうな感じ。
吹いている風も少し強いかもくれない。
どうして僕は海岸に居るんだろう??
僕は確か……有明古さんと鬼狐と一緒に旅館へ戻った筈だ。
温泉に入って、浴衣に着替えて、それから……布団に入って有明古さんと──(////)
そのまま寝落ちした筈なんだけど──。
だけど、此処は部屋の中じゃないし、旅館の敷地内でもない。
「 僕はどうして……?? 」
取り敢えず、僕は風が強まって来た海岸から離れる事にした。
海岸から離れようと思ったら階段がある事に気付いた。
「 階段か…。
下に降りてみようかな? 」
曇天で暗い筈なのに、何故だか階段を下りている間は妙に明るかった。
長い階段を下りて着いた場所は浜辺だ。
何処の浜辺だろう?
辺りを見回していると海とは逆方向に明かりが見えた。
正直、有り難い。
此処が何処なのか聞けるかも知れないからだ。
明かりの場所へ着くと、其処には海の家があった。
周りにも何軒か海の家があるみたいだけど、どの海の家も閉めきられていて真っ黒だ。
どうやら人が居るのは、この2階建ての海の家みたいだ。
貼り紙が貼られている。
張り紙には「 本日は休業 」と書かれている。
だけど、明かりは点いてるんだよね…。
誰かが居るんだろうな。
「 ──ねぇ、お兄ちゃん 」
「 えっ? 」
突然、聞いた事のない可愛い声が聞こえて来た。
誰だろう??
「 お兄ちゃん、こっち 」
可愛い声の主は小さな女の子だった。
だけど……何で1人で海なんかに居るんだろう??
「 えぇと……どうしたのかな? 」
「 あのね…妹が見付からないの… 」
「 妹? 」
「 うん……ムィちゃんだよ… 」
「 ムィちゃん??
えぇと…どうしてムィちゃんが見付からないのかな? 」
「 ……かくれんぼ…してたの… 」
「 かくれんぼ? 」
「 探しても見付からないの… 」
「 かくれんぼ…。
えぇと……2人でかくれんぼしてたのかな? 」
「 うぅん…兄姉弟妹でしてたの… 」
「 それで、ムィちゃんだけが見付からないんだね? 」
「 うん… 」
「 そんな顔しないで。
僕もムィちゃんを探すよ。
一緒にムィちゃんを見付けよう 」
「 お兄ちゃん!(////)」
かくれんぼをしていて見付からない妹を探している女の子の手伝いをする事になったわけだけど……、何処から探せばいいんだろう?
「 あ…君の事は何て呼べば良いのかな? 」
「 …キィだよ 」
「 キィちゃんだね。
キィちゃんは兄弟姉妹と何処でかくれんぼをしてたのかな? 」
「 岩場だよ 」
「 岩場かぁ…。
この暗い中、岩場でムィちゃんを探すのは難しいね。
岩場は足場が悪いからキィちゃんが怪我をしたら大変だよ 」
「 ムィちゃんは…岩場には居なかったよ… 」
「 そうなんだ…。
岩場に居ないとすると…………あれ? 」
僕は砂浜でキラリと光る何かを見付けた。
キィちゃんは気付いてないみたい。
僕は何かがキラリと光った場所へ行くと、何かを拾った。
「 う〜〜ん……これは…鱗…かな?? 」
「 ──お兄ちゃん、それ、見せて! 」
「 うん、いいよ。
こんな所に魚の鱗が落ちてるなんて珍しいな… 」
「 これ…ムィの鱗! 」
「 えっ?
ムィちゃんの鱗?? 」
「 お兄ちゃん、他にも落ちてない?
ムィちゃんの鱗は落ちてない?? 」
「 鱗を探せば良いのかい?
さっきは光ってくれたから見付けれたんだけど…… 」
う〜ん……どうしたら鱗を見付けられるんだろう?
抑、他にも鱗が落ちてるとは限らないと思うんだけど……。
あれ…また光った?
僕は光った場所へ向かって歩くと、砂浜の中に鱗を見付けた。
光の反射や屈折によるのか、角度を変えながら砂浜を見るとキラキラと光るモノが見える。
僕はキラキラと光るモノを拾いながら歩く。
「 やっぱり鱗だ…。
綺麗な鱗だな…。
キィちゃん、鱗を見付けたよ!
ほら、こんなに沢山…。
この鱗は全部ムィちゃんの鱗で間違いないのかな? 」
「 ──うん!
これはムィちゃんの鱗だよ…。
ムィちゃん…何処に隠れてるの…?? 」
「 かくれんぼをしていたんだよね?
隠れているなら鱗を落としたり、残したりはしないと思うな 」