⭕ 海の家で、かくれんぼ 3
「 ふふふ、それはお楽しみ♥ 」
「 はぁ……。
何で怪奇の起きる場所で態々百物語なんて…… 」
「 肝試しの方が良かった? 」
「 そっちの方が嫌です…… 」
場所は変わって、此処は海の家の2階です。
襖を取り外して、敷き布団を敷いて何時でも寝られる状態にされた部屋の中に陰陽師達と有明古さん,鬼狐,僕が居ます。
僕は百物語に参加したくないのに強制参加させられています。
胡座を掻いた僕の足の上には鬼狐が座っていて、僕は鬼狐の椅子状態です。
百物語とは言っても、別に怖い話をすると言うよりも陰陽師達が現場で体験した「 あるある体験談特集 」みたいな感じの内容です。
現場で体験した失敗談や不思議な体験談,奇妙な体験談や笑える体験談,涙なしでは語れない悲しい体験談とか色々な陰陽師達の話が聞けるので、意外と楽しいです。
本当にプロの陰陽師ばかりなんだなぁ……。
一般人が知りようのない陰陽師達の苦労話を百物語風にして話すのは如何なものかとは思うけど……。
雰囲気作り過ぎって言うか、話し方が上手過ぎでしょ…。
「 ──よし、じゃあ、次は俺の番だな 」
「 待ってました、テッちゃん! 」
「 盛り上げてくれよ〜〜 」
「 止めてくださいよ…。
俺…話すの苦手なんすから… 」
浜辺で僕に花火を渡してくれた金髪ロン毛の人だ。
テッちゃんって呼ばれてるんだ?
この人は、どんな陰陽師あるあるを聞かせてくれるんだろう?
「 あ〜〜えぇと……じゃあ、話します。
これは先週亡くなった先輩から聞いた話になります 」
「 ヒラツか…。
惜しい奴を亡くしたな… 」
「 面倒見の良い奴だったよ… 」
「 オレ…未だ信じられませんよ… 」
「 あの…始めていいっすか? 」
夏と言えば海水浴ですよね?
海水浴と言えば海の家です。
今から話すのは海の家で起きた怪奇の話です。
怪奇の起きた海の家は、今はもう取り壊されてしまってありません。
何県の何処の海で起きた事なのか詳しい情報もありません。
人伝えの話なので信憑性も怪しいです。
怪奇の起きる舞台となった海の家は、夏になるととても繁盛していました。
周りにも何店か海の家があったそうなんですけど、其処の海の家は特に人気でした。
その海の家は当時では珍しい2階建ての海の家でした。
丁度、この海の家みたいに1階が店内で2階が従業員の住居スペースになっていたそうです。
その日は朝から人が多くて、何処の海の家も猫の手を借りたいぐらいにてんてこ舞いだったそうです。
どうしてかと言うと、その日に限って人気の海の家が閉まっていたからです。
休業日という貼り紙が貼られているので、周りの海の家は「 珍しいな 」と思いながらも特に気にしていませんでした。
人気の海の家が休業している間に稼げるだけ稼いでおきたいと思うのは商売人なら誰でも思う事だからです。
数日経った頃、異臭が漂い始めました。
異臭は休業日と貼り紙が貼られている海の家からする事が分かりました。
近隣の海の家の人達が集まって、休業日と貼り紙の貼ってある海の家を開けてみました。
異臭の原因は暑さで腐敗を始めていた沢山の死体だったのです。
近隣の海の家の人達の通報によって、警察が呼ばれて直ぐに捜査が始まりました。
海の家の中で発見された死体の数は27体もありました。
海の家で働いていた従業員は6名です。
明らかに多かったのですが、6名の身元は判明しました。
海の家の1階と2階の壁,天井には大量の血が飛び散っていて、床は血の溜まりでビショビョだったそうです。
それに部屋中には臓物が散乱していて、どの死体も何十回も滅多刺しにされていたそうです。
相当な怨みを買っていたのでしょうか…。
結局、海の家27名惨殺事件の犯人は未だに見付かっておらず、逮捕もされていません。
海の家の27名惨殺事件は未解決事件として迷宮入りしたままだそうです。
貼り紙が貼られる前夜に何が海の家の中で起きたのでしょうか?
一体誰が、海の家に休業日の貼り紙を貼ったのでしょうか?
一体誰が、何の目的で海の家の中で27名も人達を殺害したのでしょうか……。
誰が、何の目的で従業員以外の21名を海の家へ集めたのでしょうか?
犯人は一体何処に居て、何をしているのでしょうか?
抑、犯人は人間なのでしょうか?
それは誰にも分かりません。
21名の身元不明者の身元も未だに判明していません。
この摩可奇妙な事件を解決させれる者は現れるのでしょうか??
「 ──以上で俺の話は終わります 」
「 何だ、80年前の事件が元ネタか 」
「 お前、ヤバいの持って来たな〜 」
「 ナハハハ(////)
海の家繋がりなんで丁度良いと思ってチョイスしたんすよ! 」
「 へぇ、流石ねぇ…。
人数も丁度27人居るものね♥ 」
「 有明古さん、30人ですよ 」
「 あら、そう?
折角、盛り上げようと思ったのに… 」
「 盛り上げないでください! 」
「 ユタク君、そろそろアタシ達はおいとましましょう 」
「 おいとま? 」
「 そうよ。
アタシ達は旅館に戻るの。
なぁにぃ〜〜〜ユタク君は陰陽師の皆さんと百物語を堪能したいの? 」
「 えっ…… 」
「 折角の新婚旅行なのに、アタシとじゃなくて陰陽師のお兄さん達と熱い夜を過ごしたいなんて意外だわ〜〜 」
「 戻ります!
僕も旅館に戻ります!! 」
「 そう?
賢明な判断よ、ユタク君 」
「 は…はぁ……そうなんですか… 」
「 悪ノリ大好きな陰陽師のお兄さん達に悪戯されるの嫌でしょ? 」
「 当たり前じゃないですか! 」
そんなわけで僕は有明古さんは、鬼狐と一緒に海の家を出て旅館へ戻る事になった。
百物語を楽しんでいる最中だけど、陰陽師の人達も気前良く送り出してくれる。
2階の部屋を出て、廊下を歩いて階段を下りて、1階の店内で既に出来上がっている陰陽師の人達にも挨拶をして海の家を出た。
「 最後に聞いた話って80年前の実話…なんですか? 」
「 どうかしらね?
でも、事件の起きた場所は此処で間違いないわよ。
此処では怪奇が起きるからね 」
「 怪奇…… 」
「 あの海の家はね、取り壊されたわけじゃないの。
物好きの金持ちにね、リホームされたのよ 」
「 えっ…?
リホーム…ですか?? 」