⭕ 海の家で、かくれんぼ 1
季節は夏!
夏、夏、夏、真夏の夏!!
鬱陶しい程にうんざりする蝉の大合唱を唯一聴ける夏の季節。
そんな真夏と言えば、海です!!
燦々と降り注ぐ真夏の太陽の陽射しと、何処までも続きそうな青い空と、青々とエメラルドグリーン色に輝く海!
そして、白い砂浜と来れば、恒例のスイカ割り!
風鈴の音を聴きながら、付いてるのか付いてないのか分からないような生温い扇風機の風に当たりながら、冷たいかき氷をスプーンでシャクシャクとつつきながら食べる夏!
そう、此処は海の家!!
真っ昼間から海鮮バーベキューを楽しんで贅沢三昧している若者達が居る。
海開きが始まって、真夏には大勢の人達がワイワイと賑わい足の踏み場もないぐらいに人、人、人、人、人で埋め尽くされている浜辺。
そう──、本来ならばランドやパークすらも真っ青になるぐらいに埋め尽くされそうな程の人でごった返している海の砂浜。
然し、今はどうした事か人で埋め尽くされては居ない。
すっからかんのスッキスキである。
若者達──と言えば語弊になりそうだが、決して若くはないものの、イッケイケのファンキーな雰囲気を醸し出して居る数人の人達が広い海と広い砂浜を貸しきりにしてフィーバーしていた。
パーリー状態と言っても過言ではないだろう。
一体何のパーリーなのやら……。
「 ほらほら、折角の海鮮バーベキューなんだから食べて食べて! 」
「 盛り付け過ぎだよ… 」
「 食べ盛り育ち盛りが何言ってんの!
ホタテとアワビはちゃんと食べた?
伊勢海老とイカとタコも食べたの? 」
「 さっき食べ終えたばかりだよ…。
──って言うか、何時までも子供扱いしないでほしいな。
もう成人してるんだし… 」
「 何言ってんの。
20歳過ぎる迄は未成年です! 」
「 20歳って……。
それ24年も前の事なんですけど… 」
「 些細な事は気にしないの!
お姉さんからしたらユタク君は未々お子ちゃまなのよ〜〜 」
「 それは…そうだろうけど……。
折角の新婚旅行なのに……むぅ… 」
「 ──一寸、鬼狐!
アンタねぇ、高かい肉ばっかり食べてんじゃないの!
野菜も食べなさいよ! 」
「 ㍑㌧㌍㌔㌶㍊…… 」
「 アタシの分が無くなっちゃうでしょ!! 」
「 ──って言うか……、何で海の家で海鮮バーベキューをしてるんですか? 」
「 夏だからよ 」
「 いや…夏なのは分かりますけど……。
あのファンキーで如何にもヤバそうな人達は一体誰なんですか?
物凄く海を満喫してるみたいですけど……。
それに此処…何で僕達以外の人が居ないんですか? 」
「 此処ねぇ、怪奇が起きる海なのよ 」
「 は…い??
怪奇が起きる海……ですか? 」
「 そうよ。
今年の貸し切り担当が回って来たのよ。
『 皆で泊まりがてら楽しもう 』って事になってね、バカンスしてるのよ 」
「 バカンスって……。
怪奇の起きる海でバカンスって何ですか!! 」
「 大丈夫よ〜〜。
皆プロの陰陽師だから♥ 」
「 は…い??
陰陽師??
彼処で我を忘れた子供みたいにはしゃいでる人達がプロの陰陽師なんですか? 」
「 此処は怪奇の起きる海なのよ。
一般人なんて呼べないわよ 」
「 僕も立派な一般人なんですけど… 」
「 ユタク君はアタシの旦那様になったんだから、一般人じゃないわよ 」
「 ……………… 」
「 もう、そんな顔しないの!
アタシに婚姻届けを突き付けて結婚を迫って助手になったユタク君は何処に行っちゃったのかしら? 」
「 あ…あれは……(////)
有明古さんが知らない人と楽しそうに話したりしてたから…… 」
「 いやねぇ、ユタク君ったら妬いてくれちゃったんだ? 」
「 ……べ、別にそんなわけじゃ……。
あの人は…僕の知らない有明古さんを知ってるんだ…って思ったら……居ても立っても居られなくて……(////)」
「 確かに彼奴とは腐れ縁だけど、ユタク君が思ってるような関係じゃないわよ 」
「 でも……有明古さんは、僕の知らない人みたいに楽しそうだった… 」
「 ユタク君… 」
「 だから、僕は── 」
「 ユタク君…… 」
「 ㌣㌍㍑㌘㌃…… 」
「 有明古さん、僕は── 」
「 松崗牛が焼けたみたいよ。
ほらほら、確り食べなさい 」
「 ……………………いただきます… 」
此処は怪奇が起こる海。
どんな怪奇が起こるのか未だ分からない。
この海の家は宿泊も出来るようになっている。
1階は飲食を提供する店だけど、2階は住居スペースになっていて、夏休みの間は従業員が寝泊まり出来るように作られている。
有明古さんの事だから、「 夏の間は此処に宿泊しよましょう 」なんて言い出し兼ねない。
折角の新婚旅行なのに……怪奇の起こる海の前にある海の家で寝泊まりする事になるなんて……最悪だよ…。
だけど……有明古さんを伴侶に選んだのは誰でもない僕自身だから…。
後悔はしていない。
お姉さんが──、有明古さんが知らない男の有明古さんになるなんて、僕には耐えられなかったんだから……。
僕は有明古さんを独占したかった。
独占……出来てるのかなぁ……。
有明古さんと契りを交わした事で僕にも鬼狐の姿が見えるようになっていた。
鬼狐は親指ぐらいのツノを額に2本生やしている。
狐みたいな耳が生えていて、尻尾を10本も生やしている。
名前の通り鬼と狐のハーフみたいな姿をしている。
口からは八重歯なのか犬歯なのか牙なのか分からないけど、チラリと出ている。
今は焼かれたお肉を嬉しそうに食べているけど、本当は人肉と心臓と臓物が好物らしい。
…………あんな可愛い容姿をしといて、人間が大好物だなんて信じられない。
それに有明古さんが怪異と交渉する時には必ず鬼狐が傍に居る。
鬼狐が居ないと人間は怪異とまともな交渉が出来ないらしい。
陰陽師の場合は使役している式神の中で1番強い式神を傍らに置いて怪異と交渉するらしい。
この海で怪奇を起こす怪異は鬼狐に退治してもらえないのかな??
◎ 訂正しました。
怪奇 ─→ 怪異