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第七十六話 VS多世界最強 その6

なんとか書けた。ひゃっふー!

僕の得意魔法であるゴーレムマジックを解禁してから、流れは一気に変わった。


「ふぅ」


第3Rは既に終わり、現在は第4R。その間に僕が負ったダメージはゼロ。


「……はぁ…ハッ……」


対してファルシオン選手は、ダメージこそ最小限であるが疲労困憊。

これまでのダメージでボロボロの僕と、先程までの攻防でスタミナが大きく減少しているファルシオン選手。形勢的には未だに若干僕が不利であるが、言い方を変えれば圧倒的優位だった彼女を手の届くところまで引き摺り下ろしたことになる。


「……ここまで、厄介か……!!」


この結果を齎したものこそがゴーレムマジック。多世界最強と呼ばれる選手ですら、有利な状況から一転して防戦一方にまで追い込まれる僕の魔法。


「……フッ!!」


何度目となるか分からないファルシオン選手の突撃。序盤の僕ならブラストアーツでなんとか回避するか、間合いに入られ苦し紛れの防御に回るかの2択だった。

しかし、今の僕の前には、盾となる数多の岩石兵がいる。


「いけ!!」


僕の言葉と共にゴーレムたちが動き出す。その動作は機敏ではあるが、ファルシオン選手と比べれば明らかに見劣りするもの。


「邪魔ッ!!!」


事実、ゴーレムたちはファルシオン選手に鎧袖一触とばかりに砕かれていく。一度の拳打で一体のゴーレムの頭を吹き飛ばし、回し蹴りは彼女に殺到していた三体のゴーレムの胴体を纏めて粉砕する。

……一瞬で数を減らしていくゴーレムたち。結果だけ見ればファルシオン選手の無双状態。だがコレで良い!!


「っ、本当にキリがない!!」


何故なら、僕の魔法領域はこの程度のゴーレムを一瞬で生み出すことができるから。僕の魔力量なら、この程度のゴーレムはほぼ無限に生み出すことができるから!

例え鎧袖一触であろうと、ゴーレムを倒すのには必ず一手を使う。その一手の間に僕はゴーレムを補充できる。故にファルシオン選手は僕に近付けない。


「っ、こんの!!」

「甘い!」

「くっ!?」


よしんば達人の歩法をもって並み居るゴーレムたちをすり抜けたとしても、僕に届くことはない。なにせ僕の機動力と回避能力は折り紙つき。ブラストアーツのみの時ですら、ギリギリとはいえKOされることなく粘れたのだ。地形操作を解禁し、ゴーレムという動く障害物が配置された現状において、余計なアクションが追加されたファルシオン選手の突撃は十分に回避することができる。

そして、回避によって発生する一瞬の空白。そこにゴーレムたちが殺到してくる。ゴーレムたちは破壊されることも厭わない一種の死兵。全身を使った身代わり、足止め、妨害などを躊躇うことなく実行する。その間に僕は安全圏に逃れているという訳だ。

これが何度も繰り返されるのだから、ファルシオン選手としては堪らないだろう。スタミナがゴリゴリと削れていくのも当然。生半可な気持ちでゴーレムの陣を突破することは不可能であるが故に、全ての攻防は全力で行っているのだから。


「畳み掛けろ!」

「っ! やっぱり休ませてくれないか!」


更に言えば、ゴーレムはファルシオン選手より遥かに弱いが、それでも十分な脅威を備えている。なにせそのボディは岩石。魔法によって色々と軽量化されているとはいえ、それでも総重量は100キロを軽く超える。岩石の堅牢さと重量が合わさった攻撃は、例え強化した肉体で防御してもそこそこに響くものだ。それが複数体から攻撃となれば、それだけで敗因となり得るだろう。

だからこそ、ファルシオン選手もゴーレムを無視することができない。片っ端から返り討ちにするか、回避しながら囲まれないよう立ち回るしかない訳だ。となれば当然、失った体力を回復することはできない。


「くっ、この!!」


ファルシオン選手は何度も迫りくるゴーレムたちを拳で砕き、蹴撃でなぎ倒し、歩法をもって翻弄した。その度に僕は新たなゴーレムを創造し、ファルシオン選手へと嗾けた。


破壊。創造。破壊。創造。破壊。創造。破壊。創造。───


終わることのない凶悪なサイクルは、ダメージこそあまり与えられないが、確実にファルシオン選手を追い詰めていく。

如何に至高の領域に立つ達人であっても、生物である限りはスタミナという鎖からは逃れられない。そしてスタミナが減った状態で尚動き続ければ、あらゆるパフォーマンスが低下していく。それは技の精細さであったり、判断能力であったり。

そして遂に、その時が来た。


「しまっ……!?」


ファルシオン選手が目の前のゴーレムを砕いた瞬間、その影から新たなゴーレムが現れ、彼女の腰へと組み付いた。

重量のある硬質なウェイト。無視するにはあまりにも邪魔過ぎる。振りほどくことはファルシオン選手にすれば容易くはあるだろうが、それは半包囲状態においては致命的な隙となる!


「ぐっ!?」


次の瞬間には、新たなゴーレムがファルシオン選手へと組み付く。そして更に動きが制限されたところに、数多の岩の拳が降り注ぐ。


「カフッ!?」


その内の一つが、ファルシオン選手の防御を抜けて胴体に突き刺さった。そこから一気に状況は転がり始める。数の暴力という最もシンプルにして凶悪な『力』が、ファルシオン選手に牙を向く。


「……制限ありの試合じゃ多世界最強でもこうなるか」


『相性』という戦闘において最も無慈悲なファクター。それが見事に炸裂したのが、目の前の光景だ。

余程の実力差が無い限り、【広域制圧型】に【個人戦闘型】は勝てない。それは物量という名の数の暴力によって、個人の戦力など封殺されてしまうからだ。

【広域制圧型】に勝つには【広域殲滅型】を、魔導戦技の選手で挙げるならラピスさんのような範囲攻撃持ちを持ってくるのが1番簡単だ。特に試合などの制限がある場合、ゴーレムは単純な戦力としては弱くなるから。

僕のゴーレムだって、自律行動や機動性やらの部分を使用魔力の制限の中でなんとかやり繰りしている為、一体一体の『質』は極めて低い。ラピスさんの扇の一振で、結構な数が駄目になるぐらいには脆い。ぶっちゃけ、一体の『戦闘力』なら同じゴーレムマジシャンであるピグマさんの方が上だ。……まあ、アレは本人が搭乗することで自律行動に割くリソースを大幅カットしてる特化型。言葉は悪いがキワモノの類だけど。

それは兎も角。【個人戦闘型】が【広域制圧型】に勝利するとなれば、シンプルにして最も効果的な指揮官、または術者を潰すことである。今回の場合は僕で、実際にそれをやられたら僕の負けで試合終了だ。

ただそれは難しい。特に試合においては。これがなんでもありの実戦ならば、【個人戦闘型】の実力次第でどうとでもなる。用意された物量をなんなく突破できる実力さえあれば、その時点でほぼ勝ち確だ。だが今は制限ありの試合。僕と同じく使用魔力に制限があるファルシオン選手では、この物量を容易く突破することはできない。本来の実力的には可能なのかもしれないが、試合で発揮できる実力では不可能なのだ。

結局、『数の暴力』と『突出した個人』がぶつかりあった場合、物量を処理できるかどうかが全ての鍵となる。如何に個人の実力が高かろうが、圧殺せんと迫り来る物量を処理できなければ個人は負ける。逆に数の方は、個人を圧殺できる程の物量を用意、また維持し続けることができれば勝てるが、それができなければ負けるのだ。

今回の場合ならば、ファルシオン選手の処理能力よりも、僕のゴーレムの生産速度が勝っていたからこそ優位に立てている訳だ。これが例えば、僕のゴーレムの生産速度が一瞬ではなく10秒、いや5秒に1体とかならば、恐らく簡単に陣を突破されて敗北していただろう。有り余る魔力と膨大な魔法領域があればこその結果。ぶっちゃけ才能によるゴリ押しだ。……まあ、ファルシオン選手が徒手空拳ではなく、槍や丈などのある程度のリーチがある獲物の遣い手ならば、今の状況でも立ち回り次第ではまた違った結果になったのかもしれないが。そんな『もしも』が浮かび上がるぐらいには、ファルシオン選手も化け物じみてるのだけど。


「ダウン!!」


しかし、現実は無常で、相性というものは何処までも残酷である。

その日、初めてアテナ・ファルシオンは魔導戦技で膝を着いた。




──『大会中1度もダウンを取られない』という戦女神の伝説が終わった瞬間である。

物量による圧殺という、およそスポーツらしからぬ戦法を取るナナ君。尚、作中でも言ってるように物量を維持できてるからこその優位。普通はこんなことできません。なのでそういうのを分かる人は唖然呆然絶句中。


何でそんなことできるかと言うと、ナナ君はショタでも機動隊に所属しているレベルの才能の持ち主だから。試合じゃ良いとこ無しだけど、実際は強キャラなのです。


次回はちょっと視点変わって観客(魔導戦技部メンバー)視点の予定です。

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